テラーノベル
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学生は夏休みになってる日だ。
セミもまだ本気を出していない。
玄関の前で、日葵がしゃがみこんでいる。
「おはよー」
「…何してるの?」
「あっ、おはよう!アサガオ観察してるの」
小学生みたいなことを、笑顔で言っている。
日葵は花の種をいっぱい買っている。
蔓に絡まる青い花は、朝の光に透けていた。
「ねぇ、知ってる?アサガオってね、朝にしか咲かないんだって」
「え、そうなんだ。初めて知ったわ」
「ね。昼にはしぼんじゃうんだって。なんか、もったいないよね。」
そう言って、日葵は指先でそっと花びらに触れる。
「でもさ、そのぶん朝が特別になるよね」
「特別…か」
俺は、上手く答えられなかった。
特別なんて、考えたことも無かったから。
「今日も咲いてくてれてありがとう、って思うんだ」
笑う横顔が、やけに柔らかい。
「毎日ちゃんと朝に咲くんだよ。えらいね」
「花にえらいとかあるの?笑」
「あるよー!”咲く”ってすごいことなんだから! 人間だったら”生きる”と同じこと」
あのときの俺は、
その言葉をただの感傷だと思っていた。
朝にしか咲かない花なんて、
すぐに忘れてしまうものだと。
でも違った。
忘れられないものは、
たいてい、短く咲く。
アサガオの花言葉──「儚い恋」「短い恋」
コメント
2件
チェンバロのように紡がれる美しい情景描写と台詞がとっても大好きです……!🥰