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小柳ロウの家に泊まりに来ていたあなた。
だけど、ささいなことで口論になってしまい、気まずいまま深夜を迎えていた。
ロウはリビングのソファに座ってスマホをいじりながら、あなたと距離を置いたまま。
あなたもベッドに潜り込んで背中を向け、言葉を交わせないまま時間だけが過ぎていった。
部屋の空気は静かで、でもその静けさが胸に刺さる。
――謝りたいのに、タイミングが分からない。
そう思いながら眠りについた深夜。
ふと、腹部に鈍い痛み。
重だるさ。
そして、シーツに触れた時の、冷たい嫌な感触。
「…………えっ……」
薄明るい部屋でそっと布団をめくると、うっすらとシーツが赤く染まっていた。
生理が来てしまった。
昨日なかったのに、突然。
しかも、ロウの家で。
喧嘩中の、このタイミングで。
最悪すぎる。
「……どうしよう」
ロウに言える雰囲気じゃない。
近くのコンビニに行くにも、体調はどんどん悪くなっていくし、下腹がズキズキする。
けど、シーツは汚したままにできない。
なんとかしなきゃ。
あなたは立ち上がろうとするけど、ふらついて膝をつく。
リビングからロウの声が聞こえた。
「…起きたなら、別に声くらいかければいいのに」
まだ少し不機嫌らしい。
あなたは震える声で「うん…」と返すのが精一杯。
するとロウがスタスタと寝室に入ってきて、あなたの様子を見ず、 淡々と朝ごはんを食べる準備を始めていく。
「ほら、昨日の続き話すなら朝のうちに言っといた方がいいし。…機嫌悪いまま出かけんの嫌だしさ」
あなたが明らかに青い顔で立っているのに、ロウは喧嘩のことばかりで気づかない。
無理に笑うあなたを、ロウは“まだ怒ってるだけ”だと思ってしまう。
「またそれ?拗ねてんの?」
ロウは軽い口調で言うが、その声が刺さる 。
あなたは息を整えるだけでも辛い。
あなたがなんとか動こうとしたその時、ロウがベッド側に回り込んで言う。
「おい、まだ寝ぼけてんじゃ……」
言葉がぴたりと止まる。
ロウの視線が、赤く滲んだシーツに釘付けになる。
「……は?」
一瞬で顔色が変わった。
「おま、これ……」
あなたは耐えきれず、小さく震えながら言う。
「ごめん……ほんとに、ごめん……ッ
喧嘩してるのに、こんな……迷惑かけたくなくて……でも、言えなくて……」
その瞬間。
ロウの表情が、まるで氷が溶けるみたいに緩んだ。
怒りとか苛立ちなんて跡形もなくなる。
代わりにあるのは、焦りと心配と、後悔。
「……なんで言わなかったんだよ」
ロウは小さく息を呑んで、あなたの腕をそっと掴む。
「体調悪いの、見りゃ分かるだろ。
なのに……バカ。なんで無理すんだよ……」
声が震えていた。
ロウはあなたを抱き寄せ、
「ごめん。気づかなかった俺が悪い。
お前がこんなふうになってんのに、喧嘩のこと引きずって……ほんとに悪かった」
あなたの額に手を当てる。
「顔真っ白じゃん。立つのも辛かっただろ」
あなたが泣きそうになると、ロウはさらに抱きしめる力を強めた。
「言えねぇとか思わせた俺が悪い。
だから今は、俺に全部頼れよ」
ロウはあなたを抱きかかえるようにしてベッドへ座らせ、シーツの処理を手際よく始める。
「いいって、気にすんな。洗えば済む話だから。
お前が痛いの治る方が何倍も大事だろ」
キッチンに走って、温かい飲み物やカイロまで持ってきてくれる。
「ほら、これ飲め。
…な?怒ってねぇよ。怒れるわけねぇだろ、こんなん見たら」
あなたが泣きながら「ごめん…」と言えば、
「謝んの禁止。俺がずっとついてるから」
優しい手で頭を撫でる。
ロウは隣に座り、あなたの背中をさすりながら小さく言った。
「…喧嘩中でも、どんな状況でも、
俺の彼女が辛いの気づけない男にはなりたくねぇんだよ」
抱き寄せたあなたの額に、そっと口づける。
「だからもう一人で抱えんな。
言いにくいことも、全部俺に言えよ」
深夜の喧嘩の冷たさなんて、もうどこにもなかった。
あなたはロウの胸に寄りかかって、
痛みが落ち着くまで、ずっと優しく抱きしめてもらえた。