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キア本人による他アプリからの転載です。
他の方による転載はお辞めください。
問題がありましたら削除いたします。
テラノベから二次創作ハマったので、実家に帰ってきた気分です。
テラノベだけの物語も作成できればな、と考えてますჱ̒՞ ̳ᴗ ̫ ᴗ ̳՞꒱
______________
高3の7月。何となく受験生と遊びたいざかりの気持ちがせめぎ合う季節。
俺たちは最後の文化祭を目前に控え、出し物の話し合いをしていた。
中々決まらない話し合いに飽きた所で、横の席の男が話しかけてきた。
「小柳くんは、絶対に女装似合うと思うんですよね。」
薄紫色の長髪をハーフアップお団子にまとめ、ふとこちらの様子を伺ってきた男。
星導ショウ、俺の幼馴染であり、長年の片を拗れに拗らせまくった男。
遠回しではなく、直球で俺に女装を勧めてくるのがなんとも彼らしい。
似合わねえよと言い返したくなる気持ちを抑えたのは褒めて欲しいと思う。
「はぁ?俺は女装しねぇぞ。」
「てか、何やるかも決まってねぇのに。」
「えー、メイドカフェとか!」
るべち天才か?じゃねぇよ。誰がその案に頷くと思ってるんだ。
思わず溜息を零し、彼とは反対方向にある窓の外を眺める。
今は2年が体育をしているらしく、去年の俺らはあんなふうに何も考えずに騒げたなと懐かしく感じた。
パッと見、適当に高校生活を送ってそうな俺だが、意外と行事系には積極的に参加するタイプなので、高校生活最後の文化祭を女装で終わらせるなど、絶対にしたく無い。
ましてや星導の希望で。
幾ら好きなやつの頼みでも、流石に羞恥が勝つだろう。
そう思いつつも、いきなり俺が星導の好みの姿になったらどんな反応をするんだろうと意地悪い気持ちが浮かんできた。
だが、虚しくなるだけだろうと結論を出し、その気持ちは見て見ぬふりをした。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ちぇ、ただのカフェになっちゃった。」
「こっちはそれがありがたいんだよな。」
結局メイドカフェの案は通らず、ただのカフェになった。
カフェと言っても、うちのクラスメイトには愉快な仲間が多すぎて、独自の世界観で接客をすることが目に見えている。
「小柳くんの女装見たかったのにな。」
夕陽が空に綺麗に映える頃。
家が近い俺と星導はふたりで自転車に乗り帰路に着いていた。
「俺の女装見てなにがおもろいん。」
信号待ちをしている間、ふと思った疑問を投げかけてみる。
今まで女装を誰かに強要しているのを見た事は無いため、いきなりそんな事を言い始めたことに違和感を感じたからだ。
別に女装に拘る訳では無いんですけど、と前置きをして星導は話し始める。
「小柳くんありえない程美形じゃないですか。」
「そのままでももちろん美人には変わりないんですけど、女装したらもっと綺麗になるかなって。」
「美人の限界を見たい…的な。」
なるほど、そんな変態的な理由だったとは。
丁度青になった信号を渡り、星導に返す言葉を探していると、星導はまた言葉を繰り出して来た。
「…まぁ、ただの”幼馴染”の戯言に過ぎないので、あんまり真に受けないでください。」
彼がふと放った”幼馴染”という言葉が胸に引っかかった。
確かに俺たちは幼馴染である。それは間違っていない。
昔からずっと、こやなぎくん、こやなぎくんと俺の後ろを着いてきたこいつ。
歳を重ねる毎に俺よりも背が高くなり、俺が子供扱いされることが多くなった。
彼を意識してしまっていることに気付いた以上、幼馴染から少しでも関係性を変えたいと思うことは俺にとって必然であり、たまにはこいつをからかってやるかと思うには充分すぎる単語だった。
あっそ、と軽く返した言葉の裏で、俺が密かに彼の願いを馬鹿正直に叶えようとしている事に、彼はまだ気づかなかった。
帰宅した俺は、善は急げということでそういうことに詳しそうな友達に連絡をする。
「もしもしロウきゅん??珍しいね、そっちから掛けてくるなんて。」
赤城ウェン。クラスのギャル(当社比)。この計画を思いついた時、彼に頼る以外の選択肢はなかったまである。
「あー…、すまん。」
「あんま理由とかは聞かんで欲しいんだけど、女装したいんよね。」
「じ、女装!?あのロウきゅんが!?」
電話越しの彼の声は割れんばかりの声量でこちらに説明を求めてくる。
いや、説明といっても、だ。
なにを説明するんだ。好きなやつの一言に翻弄されて女装…なんて恥ずかしくて到底言えるわけがない。
「…なんか、文化祭の…あれ。」
語彙力。語彙力どうした、俺。
いつもは比較的はっきりした喋りをする俺を不審に思ったウェンは、すぐに俺の図星をついてきた。
「あー、どうせるべしょーに言われたんでしょ。見たいとか。」
「それでやらないとか言ったけど、女装してるべしょーの反応見たいとかそんなとこ??」
「あわよくば告白、とか。」
「すげーなお前、なんでわかったん。」
「て、告白て。」
「まあまあ 笑」
「で、協力してくれますか。」
「もち!!」
よし、これで味方は付けた。前々からこいつの化粧の腕とかセンスには1目置いていたので、技術的な心配は無さそうだ。少しばかり楽しみに思う自分がいるのも事実だった。
それからというもの、夏休み期間に入った俺たちは、昼間は学校で文化祭の準備、それが終わったら女装の練習に明け暮れた。
女装の練習の頻度は多くないものの、ウェンがやたらと張り切ったのと、ウェンのマネージャーとしてマナが付いた為、長時間女装することが増えた。
俺は思ったよりも元が整っているらしく、2人に「…くっそこいつ顔が良いな」「綺麗すぎて嫉妬」と言われまくり、親に感謝したのは言うまでもない。
初めは違和感のあった自分の化粧姿にも段々慣れていき、今日は最後の調整、という日。
俺は放課後の練習に気を取られ、昼間の準備は上の空だった。
「ちょっと小柳くん、今時間空いてますか?」
「え、空いてるけど。」
「ガムテープ無くなってきたので、一緒に買い出し行きません?」
「ん、了解」
思えばこうしてふたりで喋るのは久しぶりな気がする。幾ら幼馴染とはいえ、登校する時間は違うし、最近は放課後の予定により一緒に帰っていなかったから。
ともかく、俺は星導と2人の時間が取れるということで浮かれていた。
お目当てのショッピングモールに着くと、星導はいきなり俺の手を引き、最近流行っているカフェに連れて行った。
「ちょ、お前買い出しじゃなかったんかよ。」
「良いでしょちょっとくらい。聞きたいことあるんです、小柳くんに。」
それを言われてしまえば言い返すこともできず、大人しく星導の後ろに着いて行く。
昔よりも大きくなった手のひらに触れ、思わず顔が赤くなっていくのを感じた。
比較的根暗な俺の手を昔から引っ張ってくれた星導の成長を感じてむずがゆくなる。
席に案内されると、小柳くんはいつものだよね、とコーヒーを頼まれる。覚えてくれていたんだと嬉しくなった。
俺の代わりに注文を終えた星導は、さてと、と足を組み直した。
「本題なんですけど、なんで最近小柳くんは一緒に帰ってくれないんですか。」
「いやそんな事?」
「全然そんな事じゃないです。前までは何も言わなくても昇降口で待ってくれてたのに。」
「夏休み入ってから、すぐに帰っちゃうし、家にピンポンしても出ないし。」
「俺の事、…嫌いになりました?」
いやいや、いくらなんでも話が早すぎるだろ。
すぐに帰るのも、家に居ないのもウェンかマナの家に行かなきゃいけないからで、それ以上でも以下でもないのに。
こいつはそんな事で拗ねて、寂しがってるのか。
ましてや、嫌いになるわけなんてないのに。
「馬鹿やね。」
「は !? ば、馬鹿ってなんだよ !」
「大した理由じゃねぇよ。」
「ほんとに?」
「そ。」
「嫌いになるとか…笑 」
「ありえんけどね。」
ちょうど注文していたものが届き、少し落ち着いて話を進める。
「良かった、嫌われてなくて。」
未だに信じられないと言った声音で星導が話す。
「嫌わんよ。てか俺と一緒に帰ろうとしてたんだ。」
「そりゃ、だって俺、」
「俺…」
「小柳くんと喋るの好きだし。」
なるほど、喋るのが好きなんやね。
俺の事じゃなかったかーと女々しくなる。
この調子だと、俺に女装を頼んだ事も忘れてそうだし。
期待してた反応は得られないんじゃないかと思ったが、恥を捨ててまで好きなやつの願いを叶えたいという一心でこの計画は遂行しなければいけない。
そう心に決めた。
未だかつて、幼馴染という立場にこれほど物足りなさを感じた事があるだろうか。
小学校に入学する少し前にここに越してきた小柳くんは、あまり話さない子だった。
そんな小柳くんと話してみたくて、声が聞きたくて、毎日小柳くんちにピンポンして遊ぼうと誘った。
きょうは 、 いや 。という返事がほとんどだったが、あまりにも毎日来るもんだから、次第に一緒に外に出てくれるようになった。
ある日はふたりでブランコに乗り、ある日は俺ん家でテレビを観て。その習慣は大きくなっても変わらず、今に至る。
ただ、その遊びが変化していくだけで。
俺ん家と言っても、小学生の高学年や、中学生になればふたりで同じゲームをするようになった。
相変わらず学校では必要以上は話さない小柳くんが、放課後や休みの日に自分と多く会話をしてくれる事が嬉しかった。
俺だけが本当の小柳くんを知っている気がした。
でも、大きくなるに連れて、可愛らしい顔立ちだった小柳くんがかっこよくて、綺麗な顔立ちになった。
勿論俺は幾度となく小柳くんが告白されているのを見た。
だけど、小柳くんはその甘い告白に1度だって頷かなかった。
てっきりそういう色恋に興味がないと思ってた。というか、あって欲しくなかった。何年間も毎週のようにふたりで遊んでいた時間を、ぽっと出の女に奪われたくなかったからだ。
それが小柳くんに対してただの友愛でなく、恋愛だと気付くのにそう時間はかからなかった。
勿論その気持ちは本人に伝える気は無いし、あわよくば…なんて気持ちも無い。ただ、小柳くんの1番で在りたかった。抑える気持ちと反比例して、今すぐに彼を自分だけのものにしたかった。
きっと将来の恋人に見せるであろう表情も、仕草も全部、全部、全部俺が最初に見たいと思うようになった。
でもそれは俺には叶わないことだから、せめて彼が今までしてこなかった事、見せてこなかった姿を見てみたかった。
そうしてふと頭に浮かんだのが、小柳くんに女装をしてもらうという事だった。
彼は俺がこの世で出会って1番綺麗な人で1番好きな顔の造形をしているから。
だから、ふと夏休み前の話し合いの時に、本人に直接伝えてしまったとき、酷く焦った。
まあはっきりと断られてしまったけど。
それから夏休み、曖昧な空気感で、ましてや予定があるからと一緒に帰ることもなくなり、さすがにるべち寂しくなりましたよね。
周りの友達からは、小柳彼女できたんじゃね?とか言われるし。いつもだったら、そんな訳ないのになーと割り切れていた俺でも、この曖昧な関係のせいで妙にそれを信じちゃって。
小柳くんにとっての、唯一の幼馴染という立場で物足りなくなった時、既に俺は小柳くんの手を掴み、ふたりで買い出しにきた。久しぶりに手を繋いだけど、小柳くんは抵抗しなかった。
勘違いしちゃうでしょ、俺。
そして今に至る。
コーヒーを飲み終え、会計を済ませた後も、星導はずっと手を繋いできた。
学校に着く寸前まで、ずっと。
さすがに学校付近になったら恥ずかしくなって、俺が手を離してしまった。
手を離した後も、ウェンとマナに会っても、ずっと手に星導の余韻を感じ、幸せのため息を零す。
「あれー、ロウきゅん、何かいい事あった?」
「ま、あったっちゃあった。」
「なにがあったん????星導????」
おい俺が幸せ🟰星導関連っていう等式立てんの辞めろよ。
間違っては無いけどさ。
「…星導が、手を繋いでくれた。」
「あのるべしょーが!?!?!?!?」
「いや、久しぶりすぎて俺も動揺してるんだけど。」
「繋いだって言っても、手引っ張られた、みたいな。」
「やけどめちゃめちゃ嬉しいやつやん、それ!」
嬉しいか嬉しくないかで聞かれたら100%嬉しいと言う。
ただ、あの時の星導の少し怒った瞳の中に渦巻いている気持ちはきっと分からないだろう。
「そんなるべを喜ばす為に頑張ってるロウが可愛くて仕方ないわ〜」
「可愛い言うな。」
「実際ロウきゅん可愛いからね?」
「僕たちがもっともーーーーっと可愛くしてあげるから!」
俺はふっと笑って、その後のことを全て2人に任せることにした。
──────────────────────
時間と言うものは案外早く経ってしまうもので。
あっという間に文化祭当日になった。
俺の見立てとしては、適当にシフトに入ったり他クラスの見学に行った後、放課後に星導を呼び出しておちょくる……と。
我ながら名案だと思う。
少し浮かれた気持ちのまま制服に着替える。
自室からリビングに降りると、母親がちょうど朝ごはんを用意している所だった。
軽く母親に挨拶をすると、今日文化祭何時から?と聞かれたので、9時から、と答える。
「今日はショウくんと行くの?」
「なに急に。そうだけど。」
「いや最近ショウくんの話聞かんかったから。」
「喧嘩でもしたんかと思ったよ。」
心配して損したわ〜と母親に言われる。
俺は朝ごはんのウインナーをつつきながら、んな訳ねぇし……と呟いた。
諸々の用意を終わらせるとタイミングを待っていたかのように来客を知らせるチャイムが鳴った。真っ先に飛びついたのは母親で、外行の声で対応していた。
「あ、こやな……」
「ロウくんママ!!」
「ショウくん久しぶり〜 !」
「ちょっと母さん…、早く学校行かなきゃ。」
「ええ〜大丈夫だよ小柳くん。まだ時間あるよ。」
「そういう問題じゃねぇよ。」
少しでも星導との時間を増やしたくて言ってしまった言葉を思い出して、ああ俺拗ねてんだなって笑いたくなる。
今日の星導はいつもとおなじハーフアップお団子で、俺の大好きな髪型だった。
いつだったか忘れたが、髪型に悩んでいた彼に、
「……お前お団子とかしたら似合うんじゃねぇの。」
と言った記憶がある。
それから彼の定番スタイルになったのだから、少しは優越感を感じて良いのではないだろうか。
「そういや小柳くん、まだ時間ありますよね?」
「いや、まぁ、うん。」
何を考えてる分からなくて、歯切れの悪い返事になってしまった。
「これ、髪型お揃いにしませんか?」
「お……っ、そろいは……」
「そもそも俺髪の毛長くねぇし。」
「まぁまぁるべちに任せて 〜 ♩」
「ロウくんママ、小柳くんと洗面台借りていいですか?」
母親が、「勿論ー!」と言うや否や、おじゃまします!と星導が家に入ってくる。
横を通り過ぎた星導の匂いがいつもより強くて、何故か恥ずかしくなって片手で頬を覆った。
「よし、小柳くんやるよ!!」
「……お前テンション高くね?」
「んふ、小柳くんとお揃いに出来ることが嬉しくて。」
「断られるかと思いました。」
「断りはしねぇだろ。」
「ちょっと照れてる?可愛い。」
えーっと。ちょっと待って。照れてはいた。お揃いとか恋人がすることだろって。可愛いってなに????こいつ普通に友達に可愛いって言うの????
俺が頭の中でパニックになっているときも、星導は手を止めずに俺の髪を結んでいく。
どうやってお団子すんのかなと思えば、バームで器用に左側だけまとめて結んでいた。
これで終わりかと思っていれば、星導の持ってきたヘアアイロンによって、俺の髪に緩くパーマをかけた。
「星導ってパーマとかかける人だっけ?」
「え?かけないよ。」
「小柳くんだから似合うかなって思っただけ。」
今日の星導の様子がいつもと違くて戸惑うと共に、俺はそれに喜びを覚えることしか出来なかった。
「……ん、できたよ。」
「うわ、星導上手すぎ。」
感謝を伝えたくて少し興奮しながら後ろを向くと、たまたまそこには星導の手があった。
思わず唇が彼の手に当たってしまった。あ、と言ったがもう遅い。彼は俺の顎を緩く掴み、親指で唇を撫でてくる。
それが凄く官能的で、星導がやけに綺麗に映る。
「小柳くんさぁ、」
「……俺以外にそんな事しちゃ駄目だからね。」
少し笑って俺の頭を撫でる。
呆気に取られて動けない俺を他所に、星導は学校に行く準備をしている。
「どしたの小柳くん、学校行こ??」
「…あ、そうだな……。」
モヤモヤした気持ちの儘、でも胸の高鳴りは隠せそうに無かった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「いや、無理、今日俺表立てん。」
「どしたのロウきゅん。」
るべしょーとおなじ髪型をしたロウくんが教室に入ってくる。……2人とも同じ匂いさせて、。
ほんとにるべしょーは独占欲を隠す練習した方がいいと思うんだよね。
呆れる僕の様子とは反対に、ロウくんは頬が赤かった。
「星導にキスされるかと思った。」
「え、は??」
「髪弄られてるとき、間違って、そういう……」
歯切れの悪い彼の言葉を噛み砕き理解すると、小柳もこんな奴に好かれちゃって大変だなーと思う。ほら、今だってこっちの様子をるべしょーが伺ってる。
お互い気づかないもんだね〜。
ま、それがこの2人らしくていいけれど。
「さ、開店準備するよ。綺麗な髪型だね、ロウくん。」
「ん、まぁ……」
でもその重い思いを苦とせずに、むしろ当たり前で嬉しいものだとロウくんも捉えるからるべしょーは止まんないんだよなぁ。
僕はきっと今日何か変わるであろうふたりに期待しながら用意を始めた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
9時になり、開店。
事前にクラスでインスタを開設し、準備の様子を載せていたところ、イケメンが多いと軽い噂になり、俺のクラスはずっと沢山の人、人、人。
いやまじなんでこんな来んの。
客の中には中学の友達だけに留まらず、他校の女子だかなんだか……。
あ、ほらまた星導が連絡先聞かれた。
明らかに目当ての男見つけたって顔してるよあの子。
絶対に表には立ちたくないと裏方で出来る仕事を選んだ俺だが、さすがに星導が困ってそうだから助けようと表に出た。
「いや、だから連絡先は駄目です!」
「お兄さんかっこいいんで、連絡先だけでも……」
「星導」
「小柳くん…!」
明らかにうれしそうな顔しちゃって。
「すいません、この店、連絡先とかそういうのやってないんで。他当たってください。」
俺がそいつらを一蹴し、星導を裏に連れていく。
「ありがとう小柳くん、助かった。」
「お前はもっと危機感を持てよ……。」
「あはは、次からは気をつける。」
「というか……」
「同じ匂いがするね。俺と小柳くん。」
「は、」
「お前が同じ匂いにしたんだろ……」
「まあそうね、嫌だった?」
「嫌ではないね。」
「だと思った。てか知ってる、笑」
「助けてくれてありがとう、店番行ってくるね。」
なんと言うか、凄く甘やかされてる気がする。
いいのこんなに好きな奴から甘やかされて。
ああ、これが文化祭マジックか、と働かない頭で考える。
本当にその後は覚えて居ない。
休み時間になっても、動きを止めた瞬間に全てが崩れる気がしていたから。
そんな俺にした元凶の男は、連絡先を聞かれても躱すようになった。それができるんだったら最初からやってろと思ったのだが。
時間は終わりが来るもので、片付けも一段落着いた頃、俺は本来の目的を達成する為にウェンとマナが待っている空き教室に向かおうとした。
でもその為には星導を呼び出さなくては。
彼の電話に繋ぎ、数回のコール音を聞く。
「もしもし、こやなぎくん?」
「星導、30分後教室に居て。」
「は、30ぷ……」
彼の返事を最後まで聞かずに通話を辞め、スマホをポケットに突っ込み足を動かす。
あわよくば、告白できれば。ずっと伝えられなかった気持ちなんだ。
1回だけ、1回だけこの文化祭マジックでも良いから言ってみたい。
そんな希望と期待を胸に俺は新しい姿に変わる予定だった。
__________
「いらっしゃーい、上手く呼び出せた?」
「ん、それはもう。」
るべしょーを呼び出せた嬉しさと緊張で複雑な顔をしているロウくんを見てマナと笑う。
今からするのはるべしょーの本当に見たかった姿。
……ロウくんはまだ気づいてないけどね。
そう思い、マナと顔を合わせる。
「は、」
「えなんでこのままなんだよ。、」
あーほら焦ってるやん、と横でマナが言う。
仕方ないだろう。るべしょーはロウくんの美の限界を見たいと言うのが真の目的、ロウくんは自分に1番自信のある姿で思いを伝えたかった。
ロウくんはそのままの自分に自信が無いからるべしょーの言われた通りに女装しようとしたけど、本当にロウくんが綺麗に見えるのは、元のロウくんに少しだけ加えたそのままのロウくん。
裏でマナと秘密裏に考えてた事だったので、ロウくんは凄く焦ってたけど、るべしょーが見たいのはきっとロウくんのこの姿だからねー。
「ロウくんが1番綺麗な姿って、そのままのロウくんだよ。」
「せやで〜。だから変に着飾らずに頑張れ !!」
動揺してたロウくんも開き直ったように僕たちに向き合い、ありがとう、と言って教室を出ていった。
「僕達、凄いいい仕事したよね。」
「間違いない、笑」
「2人には幸せになって欲しいからなぁ」
僕はその言葉に深く頷いた。
__________
教室には既に星導が居た。
意を決して俺が星導に話しかけると、瞳に隠れた綺麗な宇宙が俺を捉えた。
「こ、っやなぎくん、綺麗、めっちゃ美人さん。」
「誰かにやって貰ったの?」
「……そう、ウェンとマナに。」
「綺麗、本当に綺麗だよ。」
ああ、そんな風に俺に微笑むから。
星導が俺の頬を撫でたり、じっと見詰めてくるから。
「でも、どうしていきなり俺を呼んだの?」
見透かされてるようで見透かされて居ない。
大切な事は自分で伝えなければいけないのだから。
「ん?」
「星導のことが、好きだから。」
「前にお前が、俺の……美人の限界を見たいって。」
「だから、俺の中じゃ1番綺麗な姿で来たんやけど。」
言い終わる前に俺は本当に星導に捕らえられた。
え、とか、あ、とか、う、しか言えない俺を星導はしっかりを抱き締める。
「うん、言った。」
「俺も好きだよ、小柳くん。」
「世界一好き。」
「俺の為に頑張ってくれたんだ。可愛い。」
「ありがとう。」
何故か涙が溢れてきて、星導の姿がぼやける。でもそんな俺も星導は可愛いと言って抱きしめてくれる。
ずっと思い描いて居た光景。
言葉なんて浮かばなくて。
「ねえ小柳くん。」
「俺と付き合ってください。」
「、はい 、 。」
星導が笑った。そして俺の頬に軽く口付けをする。
優しくて、暖かかった。
※pixivからの転載
後日談等はそちらへ