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⚠BL
なに、解決したみたいになってんだよ
幸の想いも。
さっき俺がしたことも、全部無駄。
結局、家族の愛に勝るものなんてないんだ。
幸を最初に愛したのは俺で、
幸に命を尽くせるのも、俺で、
幸のためなら、自分を変えられるのも俺で、
なのに。なのになのに。
『パッと出の奴がしゃしゃり出てんじゃねーよ。』
母親とか、血が繋がってるとか
んなのどーでもいいんだよな。
実際、あいつは幸を選ばなかったんだし。
あんなグラグラの関係に巻き込まえて。
可哀想。
『少しずつ、こっちに戻ってきてみないか?』
『え、っと』
『ゆっくり決めて。幸がどうしたいかを俺たちは聞きたいから。』
『俺は、母さんと、父さんと一緒に住みたいよ、でも、また母さんが辛くなっちゃうんじゃ。』
『ただ別々に暮らしてるだけじゃ何も始まらない。お母さんは幸のこと好きだから。』
あぁ。これがあの家の、家族の形なんだ。
扉越しに聞こえてくる、俺が聞いた事ない幼い幸の声。幸に、俺はどんな風に写ってたの。ただの、幼なじみなの。
嫌いだ。
大っ嫌いだ。
中2夏
瀬尾家を離れ、3人で暮らし始めて2年が経つ。俺も中学生になり、より人間関係が複雑になり始めたが、まぁ上手くやれてるほうだろう。小学生の時なんだか言ってきた奴らも、今はクラスも離れ、特に何も無い。
『ただいま』
『あ〜おかえり!』
最初はギクシャクしてた母も、今じゃ笑顔も増え、毎日楽しそうだ。
『今日、真くん遅いみたいだから、先お風呂入ってご飯食べちゃお』
『わかった。』
『着替えてくる』
『下がってくる時、そのままお風呂沸かしてきてー』
はーいと軽く返事をして、部屋に向かった。
部屋着に着替えて、カバンから配られたプリントや教材を出す。
『あ、』
ヒラリと、教材と教材の間からプリントが落ちた。拾い上げ、確認すると、そこには
「第二性調査に伴う血液検査のお知らせ」
と大々的に書いてあった。
『言わないとな』
簡易的な血液検査で、仮の第二性を出す。仮といってもほぼ確定の検査。そこでα、Ωだった者は別途検査を受ける。
血液を採取するため、保護者の署名が必要。
『言わなきゃ、ダメなのかな』
母は、自分がΩであることに強いコンプレックスを抱いている。息子までΩだと分かったら、ほんとにもう二度と一緒に暮らせなくなるかもしれない。
また、後で言おう。今すぐじゃなくても、
『お風呂沸かしてきたよ』
『ありがとう』
『お風呂入ってからご飯食べようか』
『うん』
キッチンでご飯を作り、俺に学校の話を聞いてくる。
『あっそうだ、瞬が中体連地区大会優勝して、県予選出られるらしいよ〜』
『今度お祝い持っていこうかな』
『そうだね』
瞬は中学からバトミントンを始めた。
忙しいみたいで土日も部活行ってたりする。小学生の時みたいに毎日会うことも無くなったし、クラス違うし、お互いに友達ができた。そもそも、瞬話しかけてこないし。俺から話すこともないし。
『ねぇ幸?』
『なんか、渡すものない?』
『え、』
はるかさん から聞いたのか。
いや、まだあれって決まったわけじゃない
『何の話?』
『そっか、ううんなんでもない』
ピーピーオフロガワキマシタ
キュウトウセンヲシメテクダサイ
『入ってくる』
『う、ん』
何か言いたげな顔。
母さんは、子供がΩなのは嫌だよね。
結果が出てるまで、
いや、もう自分でどうにかする。
『母さん、まだ入んない?』
『うん』
『まだご飯作り終わってないから』
『手伝う?』
『じゃあ火見ててもらうかな』
『わかった。』
『ねぇ、幸?』
『僕は、幸がΩでもαでもいいんだよ』
『僕たちがしたことは、幸が生きていくのに大きな枷にしてしまった。って』
『幸が背負うには、大き過ぎたんだ。って』
『そろそろ、血液検査の時期だよね』
『僕は幸が過ごしやすいようにしたいよ』
『だから、』
『うん』
『わかってる。結果が出たら、教えるね』
母の言葉を遮るように、料理に目を向けた。
『ありがとう』
母さんは、まだ安定しきっていわけではない。迷惑をかけないようにしないと。母さんが俺のことで悩まないようにしないと。
その日から、俺の家から色が無くなっていった。