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スタジオブースの外から、ガラス越しにーー
白い防音ガラスの向こう。
マイクの前に立つ3人は、さっきまでの甘やかし王子たちとはまるで別人みたいに真剣だった。
「……よし、もう一回いこう」
元貴くんが低い声でスタッフさんに合図を出す。
「ハモリ、もう1トラック重ねてもいい?」
涼架くんがノート片手にリズムをとる。
「歌詞のこの部分、ちょっと感情入れ直すわ」
元貴くんが小さく呟きながら、立ち位置に戻る。
私はと言えば、
ドリンクを3本抱えたまま、完全にその姿に見惚れていた。
◆彼らの背中が、眩しすぎて
歌声が重なっていく。
ひとりひとりの声が、それぞれの個性で響いて、でもひとつに溶けていく。
涼架くんの、澄んで柔らかい歌声。
元貴くんの、力強くて感情の揺れる歌い方。
滉斗くんの、低く甘くて、安心感のある響き。
この声たちに、私は毎日甘やかされてるんだなって――
今さら実感して、胸がきゅんと痛くなった。
(……かっこいい)
(かっこよすぎる……)
思わず口に出しそうになって、慌てて唇を閉じる。
レコーディング終わりに
30分後。
ブースのドアが開いて、滉斗くんが最初に出てきた。
「……おつかれー。見てた?」
「……うん。ずっと、見てた」
素直に答えると、彼の目尻がふっと緩む。
「恥ずかしいな。◯◯に見られてると、変な汗かく」
そう言いながら、私の頭にタオルをぽんっと乗せる。
「なにこれ!?」
「お前の応援、熱すぎて、俺の心が沸騰したから冷ましてんの」
わけわかんない理屈なのに、顔が赤くなる。
次に出てきたのは涼架くん。
ヘッドホンを首にかけたまま、優しい笑顔で近づいてくる。
「◯◯の目、キラキラしてた」
「えっ……そんな見てた?」
「うん。ずっと俺たちのこと見てたでしょ?」
「……なんかさ、その目、すごい力になるんだよ」
「◯◯がそばにいるだけで、がんばれるんだって。……ほんとに」
照れくさそうに笑って、
彼は私の手にそっと自分の手を重ねた。
最後に、ちょっと汗を拭きながら元貴くんが出てくる。
「なに泣きそうな顔してんの」
「えっ……泣いてないよ……?」
「バレバレ」
元貴くんが自分のタオルで私の頬をそっと拭う。
「見ててくれてありがと。……◯◯が見てくれてたから、今日、100点出せた」
「……ほんとに、好きだよ」
耳元で囁かれた言葉に、息が止まりそうになった。
その後ーー、3人に囲まれて
「ねぇ、◯◯も歌ってみる? 俺がハモるよ♡」
「ダメ。今日は◯◯が”ヒロイン”の日だから、甘やかすだけ」
「うん、疲れた。◯◯、ご褒美くれる?」
「な、なにそれ!?!?!」
「チューとか、ぎゅーとか、言葉とか」
「俺たち、ちゃんと”頑張った”でしょ?」
気がつけばまた、いつもの“甘やかしモード”の3人に逆戻り。
だけど今は、さっきのかっこいい彼らを見てしまったから――
そのギャップが甘すぎて、もう何も言えなかった。
「……ずるい。かっこよすぎて、好きが止まんないよ」
その一言で、3人の目が一斉にきらっと光ったのを、私は見逃さなかった。
「次の曲はさ、◯◯のために歌うよ」
「◯◯だけに聴かせたい、俺たちの音」
「……愛、伝わった?」
その夜、レコーディングよりも甘い“お礼タイム”が始まったのは、言うまでもなかった――。