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あの出会いの日から、ユリウスとレオンハルトはほぼ毎日のように屋敷へ来るようになった。
「ボクの妹は本当にかわいい。レオンハルトもそう思うだろ?」
「うん。世界一かわいい……」
(可愛いって言うのはいいけど、二人してほっぺ触りすぎなんですけど……!)
左右からむにむにと柔らかくされ、私は内心で必死に抗議していた。
赤ちゃんの身体では、なすすべもない。
「ユリウス様、レオンハルト様。そんなに触っていると、ルクシア様の機嫌が悪くなってしまいますよ」
落ち着いた、低めの声。
(……え)
聞き覚えのある声に、意識が一気に覚醒する。
視線の先に立っていたのは、凛とした佇まいの男性。
無駄のない姿勢、鋭い眼差し――
(この人……)
冷酷な騎士団長。
原作で、私を断罪へと追いやった人物の一人。
――アルベルト・グランツ。
(よりによって、なんでここに……)
内心で身構える私をよそに、彼はゆっくりと近づき、私を覗き込んだ。
「……ほう」
そして、ほんの一瞬。
驚くほど柔らかく、目を細める。
「これは……本当に可愛らしいですね」
(……え?)
(今、可愛いって言った?
あの、冷酷無慈悲って設定の騎士団長が?)
しかも。
(なんか……視線、優しくない?
というか、顔、めちゃくちゃ整ってない?)
原作知識と現実のギャップに、頭が追いつかない。
「アルベルトが可愛いとか言うなんて珍しいな」
ユリウスがむっとした顔で言う。
「でもルクシアはオレの妹だからな!」
「……分かっています」
アルベルトは静かに頷きながらも、視線は私から離れない。
「ですが、この子は――
多くの人の目を引く存在になるでしょう」
その言葉に、部屋の空気がわずかに変わる。
(……やめて。
これ以上、目立ちたくない)
けれど、誰も私の内心など知らず。
ユリウスは誇らしげに胸を張り、
レオンハルトはじっと、宝物を見るような目で私を見つめる。
そして、未来で敵になるはずだった騎士団長までもが、
柔らかな視線を向けてくる。
(……おかしい)
原作と、全部違う。
嫌われないように生きると決めただけなのに。
気づけば、私の周りには――
(……人が、集まりすぎてる)
小さな胸の奥で、
言いようのない不安と、ほんの少しの温かさが混ざり合った。
――この出会いが、
どんな未来へ繋がっていくのか。
まだ、この時の私は知らなかった。