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ピンポンパンポーン、という聞きなれた音が頭に鳴り響き、私は片目をそっと開ける。
「みんなーおはよー!そろそろ第二ゲームを始めるから、いつもの広場に集まっててね!あでも、こっちも準備あるからモーニングコーヒーくらいは飲めると思うよー!じゃあ、今回もよろしくね!」
珍しくぐっすり眠っていたらしく、身体が少し硬い。
軽く伸びをして、私はベッドから起き上がった。
私はいつも同じ服を着用する。
この状況を予期して予備の服……なんて当然ながら持ってきていないので仕方ない。
一応パジャマのような服は用意されているので洗濯はできるが、私にとって服装決めは朝一の楽しみだったのでなんだか悲しい。
深くため息をつき、私は髪を梳かす。
happyが言うには、朝のコーヒーくらいは飲めるらしい。
コーヒーサーバーはいつも私たちが集められる場所の広場にある。
つまり起きて来いってことなのだろう。私は多少憂鬱になりつつも扉を開けた。
「動くなら第二までにはなると思うけど。分断されるのがだるいかな。まあ君なら平気じゃない?命令は全部遂行でしょ」
「あ、桐原さん!」「……指揮?」
既に先客が居たらしく、天神と音端が談合していた途中に来てしまったようだ。
「ご機嫌よう。少しコーヒーでもと思ったのですけれど、お話の邪魔でしたか?」
「あー……別に大丈夫っすよ、そこまで聞かれて困る話してないですし」「ん、でも気まずいから僕らは遠く行ってる」
「それは私も思いましたけれども。気遣いに感謝致します」
気まずい、というのは私の過去の出来事に関係している。
思い出したくもないような出来事が。
私の生まれた桐原家は、先祖代々にわたり神化人の「神器」になり続けていた。
人間が100年生きればなれる種族である神化人には、三つの種類がある。
付喪神、八幡神、天照神。
その中の付喪神につくのが「神器」である。
神器となった人間は、その付喪神と思考、肉体を共有する。
端的に言えば付喪神に乗っ取られる。
そうでもしないと通常の人間は神化人の声や姿を感じられないので、神化人を信仰するにあたり必要なことだ。
その神器になれる人は限られていて、無論私の血筋は神器になれる血筋だった。
私は桐原家の一人娘として生まれた。
右目が青、左目が黄の「神器の目」をした私が神器になる確率はほぼ100といっていい。
なのに、あの男に邪魔されてしまった。
ウインドー族は、人間のお手伝い兼奴隷として、苗字が機種により変更される。
彼の苗字である「大台」は、最新機種の2つ前くらいのスペックを示す。
つまり、本当の苗字は分からない。
ここまで言えばわかるはずだが、彼……音端の本名は「桐原音端」。
彼の瞳は、右が青、左が黄の神器の目で、結局神器になれたのは音端だった。
桐原家は正直かなり狂っていた……。
神器になれなかった私は「出来損ない」となり、そこから酷い仕打ちを受けることになった。
一番ひどかったのは、私の右目を無理やりえぐって、まともに学校に行けなくした事。
しばらくショックで立ち直れなかった。しかも、私の目をえぐってきたときに、
「この目さえなければあなたに期待しなかったのに!!」
「障害者として手当だけで生きてろ!その時に桐原家だってことも忘れろ!桐原家の面汚しが!!」
なんて言ってきたことが一番つらかった。
勿論彼に非はない。偶々苗字が桐原だっただけ。彼は目隠しを外す時まで気づかなかったのだから。
それでも、ここまでの仕打ちを受けていて、恨むなって言うのは無理がないか?
ここまで考えて気づいたが、どうして天神は私と音端が気まずいことを知っていたんだろう。
あの談合で話してたのかな。でも私が受けてきた仕打ちを音端は知ってるはずでしょ?なら言えなくない?
「おーはーよー!朝から元気だねぇみんなぁ♥だぁれも夜這いに来なくてさみしかったんだよ?♡」
「ハートが白と黒で分かれているっ……だと……?やはりハートは黒のほうがいいな……!」「何の話だよ」
「ちょ俺朝弱いから幸せ来たら後で起こして……」「ついに幸せになったのか」「結婚??」
「や”っ”ほ”ーーー!!!!」
いつもの三倍くらいの音量でhappyが放送に現れた。多少音割れしている。
「おいふざけんな眠りを妨げるなよ!!」
「目覚ましになってあげたんだよ。感謝してよ」「そんな爆音にするほど朝弱くねーわ」
「一応全員集まってるよね?じゃあ準備できたし、第二ゲームを開始するよ。その前にルール説明ー!」
「第二ゲームでは、昨日一瞬話した通り、3つのチームに分かれてもらうよ!そのチームはそれぞれ別々の部屋に連れてかれるから注意してね。じゃあ、チーム分けの前にそれぞれどんなチームがあるか紹介!」
「まずはAチーム。ここは一番クリアが簡単だよ!だってネームドがいないからね。あ、でも謎解き要素が強めだから、みんなで知恵を引きちぎ……引き絞ってね!」
「次にBチーム。ここは二番目くらいにクリアが簡単。中間の難易度だね。ここはネームドはいないけど……戦いを司るおっそろしー神様がいるから気をつけて。くれぐれも怒らせないように!」
「最後はCチーム。普通にネームドがいるから、クリア難易度は一番高いね。このネームドは超強いよ本当に。まあ僕の方が何倍も強いけど!」
「これで説明は終わり。チーム分けは君たちをぶっ飛ばす時にルーレットして決めるから、僕もまだわかんないんだよね。何か質問ある?スリーサイズ以外なら答えるよ」「需要ないでしょ」
「そういえば、木更津さんはどこのチームにいらっしゃるのでしょう?」
「あー……あの研究室からつながってる場所だから……Bかな?僕あの辺管轄して無いからなんとも……まあでもBだと思う」
「人数とかは決めてねーの?Aに何人とか」「それもランダム!」「2,2,2が幸せだけどどうだろ」
「さぁて、ちょっと尺やばいし始めちゃっていいかな?……返答がないから始めちゃうわ!じゃあ、第二ゲームスタート!!」
また私たちはまばゆい光に包まれる。
あの地獄がもう一度。
今回は運要素が大きく絡んでくる。
私は戦力になるかと言われれば微妙だが、神化人の知識もあるし、Bに行ったほうがよさそうだ。
一番ヤバいのはC。みんなの共通認識ではありそうだが。
とにかく一人じゃないことを祈ろう。
光が段々と色を移し、視界も戻ってきた。
当然だが見知った場所ではない。
「ぃやああああああ!!一人?!もしかして一人?!ソロ?!」
「あ、猫手さん」
「指揮ちゃああああああああああああ!!!」
よかった。とりあえず人がいた。
猫手も同じように安堵しているらしく、今にも泣きそうな感じで私に抱き着いてきた。
「安心しました。一人になったらどうしようかと」「わだじもずごいふあんだっだーーー!!」
「よし、と。全員転移できたみたいだね……wwwwだめだ……ww面白すぎるこの配置www」
「どうして笑っていらっしゃるのでしょう」「誰かひとりだったりするのかなぁ……?」
「えっとねw君たちが何チームになったのかとか、他の人は?とかはクリアしてからね!まずは探索してみたら?じゃあ、頑張ってね!」
「探索……ですか。一応二人いますし二手に分かれ……」「いやああああ!!一人やだ怖い!!」「あー……」
「じゃあ一緒に行きましょうか。右に何か部屋がありますし、一旦そこに行きましょう」「分かった……」
猫手は多分男性が居て本領発揮するタイプなので、私とだとあまり強気に出れないらしい。
正直かなり鬱陶しかったので安心した。静かにしてくれるのならマシにはなるかもしれない。
*
「……スタート地点がみんなバラバラってだけ。うん。別に我が暗黒騎士に敵とかいないけど。でも。うん。もう一人くらいはいるはず。うん。うん……」
「……分かってる!!一人なんだろどうせクソが!!この暗黒騎士様を一人にするとはいい度胸をしやがって!!見習いたいかたじけない!!!ああああ!!!」
「ほう……少年が迷い込んできようたか。ほれ、そこの少年、儂の声が聞こえるか?」
「少年……だとっ……?俺は暗黒騎士だぞ!!てか誰?!」
「……!聞こえるのか?儂は神化人じゃから、普通は聞こえぬと思うとうたが。少年、まさか」
「暗黒ダークネスオーラのおかげだっ!!たとえその種族がなんであろうとも!!ダークネスでつながっているからな!!」
「少年、非常に興味深いではないか。名を何という?」
「覚えておけ!小指と申す!!漢字はなんかあったけど忘れた!!」
「そうか。儂は輝煌鬼神、またの名を八幡鬼神天じゃ」
「……輝煌?」
*
「3人か最高じゃねえか」
「ネームドとタイマンとかなったらやばいっすから、本当に助かったっすね」
「まあCだったらそれでもきつそうだけどね」
「なあ、やっぱ気にならないか?あの扉。なんかいかにもボス戦前というか……」
「この辺武器とかもおいてあるし。やっぱ……」
「僕らがCチーム……?」
「……まあまあ!!まだ可能性はあるよな!!とりあえず開けてみようぜ!!」
「アーメン」「アーメン」「神頼みすんなよ!!……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏!」