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最初は小学2年生の時だった。

『輝石』という名前が気持ち悪いと言われた。


たとえ小さなことでも輝けるように、と親がつけてくれた名前だった。その名前に恥じないよう、皆が喜んでくれるなら、とどんな小さなことも率先してやるようにしていた。


それなのに、《お前は輝ける石じゃない、砂利だ》と言われた。初めのうちはクラスの何人かだけだった。でも、気づいたら他のクラスの子にも馬鹿にされるようになった。嫌なことを押し付けられるようになった。


それでも誰かの為なら、と頑張った。でも、誰からも《ありがとう》と言われたことはなかった。次第に会話をしてくれる子も少なくなっていった。同じクラスの子に虐められるようになった。それでも、輝きたいと思って頑張った。

 


小学4年生の時に転機が起きた。好きな子ができた。優花ちゃんという子。相変わらず皆にはいじめられたままだったけど、優花ちゃんだけは僕に話しかけてくれた。


初めて《いつもありがとう》と言われた。すごく嬉しかった。皆に嫌われていても優花ちゃんだけに好かれていればよかった。優花ちゃんに喜んでもらうためにもっと頑張ろうと思った。


でも、2学期が終わる頃、クラスの子と僕のことを話している会話を聞いてしまった。

 

「ねえ、なんでいつも優花は白銀くんに話しかけているの?」

「だって、いつも1人で可哀そうじゃん。皆のためにいろいろなことやってくれてるのに虐められてるし。」


「えー、でもさー何かキモくない?いつも優花のことばかり見てるし、優花のこと好きだったりして……?」

「気持ちは嬉しいけどね。でも他に可愛い子いっぱいいるし…。」

 


僕のこと…嫌いじゃないんだ。嬉しい。

 


「え、お前、白銀のこと好きなの?」

「あいつ皆でハブしてるのに、あいつのこと好きなら優花もハブだな。」


「そういうのやめようよ、大事なクラスメイトなんだよ。」

 


「はーい、皆さーん!灰原優花さんは白銀輝石くんのことが好きだそうですー!」

「えー、あの砂利を好きなの?」

「それなら今日から優花もハブだな。」

「じゃあ、皆で無視しようぜー。」

 


僕のことなんか嫌いだって嘘でも言えばよかったのに、優花ちゃんは全然言わなかった。クラスの子たちが僕の悪口を言うたびに庇ってくれた。怒ってくれた。

 

でも、そんな毎日が続いていた時、優花ちゃんは学校に来なくなった。いつもニコニコ笑顔で学校に来ていたのに会わなくなった。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月が過ぎる頃、優花ちゃんが転校するという話を聞いた。あんなに学校が大好きだったのに……僕は心配になった。僕のせいで学校に来られなくなったんじゃないかって。

 


最後に『ごめんね』と『ありがとう』を言いたくて優花ちゃんの家に行った。


「こんにちはー。優花ちゃんに会いに来ました。」

「ごめんなさいね…優花は今会えないの。でも、後で伝えておくからお名前教えてくれる?」

 


「白銀輝石です!」

「白銀……輝石…?」

「はい!」

 

「…のせいで…あんたのせいで、優花の人生はめちゃくちゃなのよ!2度と来ないでちょうだい。」

 


僕の名前を聞いた途端、インターホンが切れた。この時僕は悟った。

僕のせいで、優花ちゃんは学校に来られなくなってしまったことを。僕なんかを庇ったせいで優花ちゃんは壊れてしまったんだと。

 

 


家に帰ってたくさん泣いた。優花ちゃんを傷つけてしまったこと、自分の力で何もできなかったこと、自分なんかいなければよかったこと。いろんな「ごめんなさい」でいっぱいで今度は僕が壊れてしまった。


次の日から僕も学校に行かなくなった。起きることもご飯も食べることも歩くこともできなくなった。それでも、お父さんとお母さんは変わらず仕事に行っていた。


でもある時、2人が喧嘩をした。

 


「お前がきちんと世話をしないから輝石が学校に行かないんだ。女は家事だけこなしてればいいんだよ。」

「あんたの稼ぎが少ないから私が働かなきゃいけないんでしょう!文句言ってる暇があるならお金を稼ぎなさいよ!」

 


喧嘩の理由は僕のせい。僕が学校に行かないから喧嘩をした。優花ちゃんの時と一緒だ。僕のせいで誰かが傷つく。

 


「もういいわ、離婚しましょう。輝石はあんたに渡すわ。いたって邪魔なだけだし。」

「ふざけんなよ!あんなクソガキいらねえんだよ。」

「私だっていらないわよ。父親なんだから息子の面倒見なさいよ。」

 

お母さんは、お父さんに僕を押し付けて家を出て行ってしまった。

生贄の花嫁~Lost girl~

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