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昼休み。中庭の植木のふちに一人、座っていた。
午前中は、なんとなく気まずい気がしてシャオロンに話しかけられなかった。
理由はそれだけではない気もするが。
こうやってまた、1人で居たらあいつが話しかけてくれるのじゃないか。そう、淡い期待を心の内に秘めて、空を見つめていた。
清々しいほどの青空だ。雲一つ無い。まるで今の自分とは大違いだなと思う。
『その時も、お前がそうやって、止めてくれたんやで?』
この言葉の心理はなんなのか。
何を思い、言葉を発したのか。
その時、とは、いつのことなのか。
分からないことが多すぎる。
今思い出すと、引っかかる点がいくつかある。
なぜか俺に話しかけてきたり
好きな色を知っていたり
注意されたはずが笑っていたり
あの公園を、しかもあのベンチのことを懐かしいと言ったり…
「お〜!ここにいたんか!」
「…えっ、シャオロン?」
「いかにも〜!シャオロン様だぞ!皆のものひれ伏せ!!」
「一人しかおらんけど」
「うぇー、じじちんやぞ!」
表面では面倒くさそうにしているが、どこか心の内では嬉しい気がする。
あのことを訊くなら、今しかない。そう思い、シャオロンを見つめる。
ムカつくほどに綺麗な笑顔。この青空によく映える。
「あんさ、シャオロン」
「ん?どしたん」
「昨日のこと…どうゆうことなん?」
一瞬、シャオロンは硬直した。その後、思いがけない質問だったのか、少し驚いた顔をした。
俺から目を逸らし、何かを考えているようだった。俺には、どう返そうかを考えているように見えた。
少しして、シャオロンが口を開いた。
「まだ…そっか。」
まだ?何がだよ、と思わず少し強めに返してしまった。
ううん、と彼は顔を横に振る。
少し寂しそうな、悲しそうな顔をしていた。
さっきまでの笑顔は、消えていた。
これ以上は訊いてはいけない…そう察した。
なぜか、これは自分のこと、自分で何とかしなければいけない…と感じた。
「…何か、忘れてへん?」
「え?忘れて…」
「…ええよ、無理せんでや。」
そう言い、俺に笑いかけた。
忘れてる?何を?それはそんなに大事なこと?
だったら忘れるはずがない、忘れるはずが…
「ゴボッ…ゲホッ、はぁっ」
「ろっ…ぼ…」
生々しく聞こえてくる水の音、誰かの荒い息。
鮮明に映る、バシャバシャと上がる水しぶき。
誰かに助けを求める声。
その方に手を伸ばし、何かを叫んでる。
その瞬間、目の前がフッと闇に包まれた。