学園長「第十試合目をはじめる!一覇衆10番手は前へ!」
?「はい。」
十番目に出てきた男は、全体に霞が描かれた黒の半ぎつね面をしており、見える口元が弧を描いていてとても恐ろしく感じる。
?「初めて、僕の名前は黒翔です。僭越ながら、一覇衆の司令塔をしております。鉢屋三郎殿、お相手願いますでしょうか。」
雷蔵「司令塔…、」
八左ヱ門「今まで戦ってきたあの人たちをまとめ上げてるのか。」
兵助「なんだかオーラは違うのだ。」
勘右衛門「頑張れよ!三郎!骨は拾ってやる!」
三郎「何で死ぬ前提で言われなならんのだ!」
三郎は目の前に立つ黒翔を睨んだ。
黒翔は何も言わずただ見つめ返す。
沈黙が、二人を包む。
ガキンッ!
刃が触れ合う音が響く。
先手を打ったのは黒翔だった。
三郎〜速い!あの10人をまとめ上げてるだけあってそれ相応の強さがある。だが、負けてられない!〜
お互いに一歩もひかず、攻撃を繰り出していく。
が、急に黒翔が動きを止めて距離を取った。
三郎〜なんだ?〜
黒翔「鉢屋さん。こんな撃ち合いしていても埒が明かないので、そろそろ終わりにしましょう。」
三郎「っ、」
〜何をしてくる、〜
身構える三郎をみながら、黒翔はゆっくりと面を外した。
面を外して明るみになった顔は、
三郎「なっ!」
雷蔵だった。
三郎「らっ雷蔵!?いや、この顔は、」
黒翔・三郎『私みたいだ。』
三郎と黒翔の声が重なる。
黒翔「ふっ、びっくりしたか?」
黒翔は声も三郎に似せてきた。
三郎〜雷蔵に変装している私に変装するなんて!〜
三郎「……今までたくさんの人に変装してきたが、自分に変装されたのは初めてです。知らなかったですよ。自分と瓜二つの存在が目の前にいると、こんなに気味悪いなんてね!」
カキン!
三郎の鏢刀と黒翔の鏢刀がぶつかり激しい火花が散る。
三郎の攻撃を弾いた黒翔は、三郎の急所を狙い攻撃を繰り出してくる。
そんな黒翔に、三郎は違和感を覚えた。
三郎〜こんなに凄い変装もでき、一つの隙も見逃さない集中力もある、この人の実力なら私はすでに負けていてもおかしくない。いや、負けていなければいけないはずなのに、なぜこんなに試合が長引くのだ?〜
三郎は黒翔を見据える。
一つ間をおいてまた仕掛けてくる黒翔。
三郎〜なぜこの人の攻撃はこんなに荒々しいのだろうか。何かと葛藤しているようだ。~
そんな事を考えていたせいか、大きく振りかぶられた黒翔の拳が三郎の腹へと入った。
三郎「グッ!」
黒翔「僕は早くこの試合を終わらせたいんですが、降参していただけませんか?」
三郎「っ、そう言って今まで降参したやつがいたか?!」
黒翔「残念ながらいませんでした。……僕は戦うのが嫌いなので、強制的に終わらせていただきます。」
そう言った黒翔が振り下ろしてくる苦無を受け流した三郎は、辺りを見渡した。
黒翔の姿がどこにもない。
三郎〜いない!どこに行った!〜
黒翔「ここです。」
耳元で声がした。
三郎の首には苦無が当てられている。
学園長「勝者黒翔!」
三郎「っ、」
黒翔「対戦、有難うございました。」
そう言って立ち去る黒翔の背中は、とても辛そうに見えた。
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