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「さっ佐々木さん、頭を上げてくれませんか。俺はふたりが逢っていても、ヤキモチなんて全然妬きませんよ。雅輝のバカは、走ることしか頭にないんですから! 参ったなぁ、もう!」


所々上擦った声で弁解した時点で、橋本の嘘はバレバレだった。営業スマイルもかなり崩れているのが、頬の緊張感で伝わってくる。


「陽さんあのね……」

「ただな、佐々木さんに頼まれたからって、俺に隠し事をしてほしくなかった」


ギリギリ聞きとれる声量で橋本が本音をポロリした途端に、離れていた宮本が駆け寄り、タブレットを小脇に抱えて橋本の利き手を掴んだ。


「ごめんね、陽さん。心配して、ここまでわざわざ来てくれたんだよね?」

「べ、別に。おまえの心配なんて、してなかったけどな。場所がここだった時点で、走ることに夢中になってんだろうなぁと思っただけだ」

「それでも来てくれたんだよね? こんな夜遅くで、明日も仕事があるというのに」


橋本を掴んでいる、宮本の手の力が強められる。痛いくらいに握りしめられたそれに、文句でも言って抗いたいのに、宮本が傍に来てくれたという事実が嬉しくて、されるがままでいてしまった。


「雅輝が楽しそうに走ってる姿を、拝んでやろうと思っただけ。それだけだ……」

「雅輝さんは僕が頼んでも、走ってくれなかったんです」


ふたりの会話に割って入った佐々木が、意外なことを告げた。


「雅輝が走っていないだと?」


信じ難い佐々木のセリフで、穴が開くほど凝視した橋本の視線に、宮本は照れくさそうな顔を見せる。


「雅輝、どうして走っていないんだ? 走ることが好きなおまえが走っていないなんて、腹の具合が悪いとか、そんな理由しかないだろ」

「橋本さんは本当に、雅輝さんが走らない理由がわからないんですか?」


橋本が宮本に問いかけたというのに、なぜだか佐々木が先に口を開いた。


「コイツが走らない理由は……」

「どうして、すぐに答えられないんですか?」


橋本に鋭いまなざしを飛ばす佐々木に、反論はおろか、そのほかの返答もできなかった。すると宮本は掴んでいる橋本の手を解放し、ふたりに背中を向ける。素早い行動に宮本の表情がどんな感じなのか、まったくわからなかった。


「雅輝?」


答えられないことに嫌気がさして、手を放されたと思った橋本が、距離をとった宮本を掴もうとしたときだった。


「すみません。ちょっとトイレに行ってきます」


橋本だけじゃなく、佐々木からも逃げるように、宮本は走ってトイレに向かってしまった。


(このタイミングでトイレなんて、見え透いた嘘をつきやがって! 佐々木さんの口撃に参ってる状態だというのに、アイツは~っ!)


「橋本さんが雅輝さんと、付き合っていることは知ってます。はじめてここで逢ったときから」

「あ、はい……」

「雅輝さんの才能をひとりじめしていることについて、僕は嫉妬しています!」

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

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