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あっぷるぱい
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橘 柚
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第1話「彼女が来た日」――休み時間
キーンコーンカーンコーン――。
一時間目が終わった。
「はぁ〜……」
潔は机に突っ伏した。
「緊張したぁ……」
すると、隣の席の凪が顔を上げる。
「潔」
「ん?」
「疲れた?」
「ちょっとだけ。でも大丈夫!」
潔が笑う。
凪はじっと潔を見る。
「……ならよかった」
その瞬間。
ガラッ!!
教室の扉が開いた。
「潔ちゃーん!」
蜂楽だった。
その後ろには――
玲王、千切、雪宮、黒名、氷織、乙夜、烏、士道。
そして最後に凛。
「……なんで全員来てんだよ」
凪が呟く。
烏が肩をすくめる。
「いやぁ、別に?」
「別にじゃないだろ」
玲王が潔の机までやってくる。
「潔、学校にはもう慣れたか?」
「うん!みんな優しいから大丈夫!」
「そっか」
玲王が嬉しそうに笑う。
すると蜂楽が横から顔を出す。
「潔ちゃん、俺も優しい?」
「うん!蜂楽くんもすごく優しいよ!」
「やった!」
蜂楽が満面の笑み。
凪がぼそっと呟く。
「……俺は?」
潔は凪を見る。
「凪くんも優しいよ」
「……そっか」
凪の口元が少し緩む。
「じゃあ俺、もっと優しくする」
「え?」
「潔が困ったら、全部俺がやる」
「ありがとう!」
潔は嬉しそうに笑う。
「でも、凪くんも無理しちゃダメだよ?」
「…………」
凪が固まる。
「……潔って優しいね」
「そうかな?」
「うん」
凪は完全に嬉しそうだった。
その様子を見ていた玲王。
「おい凪、抜け駆けすんな」
「してないよ」
「してるだろ」
「してない」
千切が二人の間に入る。
「はいはい、喧嘩しない」
そして潔を見る。
「潔、さっき先生が言ってたけど、体育は午後からだよ」
「本当?」
「うん。運動着、持ってきた?」
「……」
潔の動きが止まる。
「……忘れた」
「え?」
千切が目を丸くする。
潔は苦笑した。
「朝、遅刻しそうになって急いでたから……」
「じゃあ、僕の予備貸そうか?」
「えっ、いいの?」
「もちろん」
「ありがとう、千切くん!」
潔が千切の手を両手で握る。
「本当に助かる!」
「……っ」
千切の顔が一気に赤くなる。
「う、うん……」
その後ろで雪宮が眼鏡を押し上げた。
「潔さん」
「ん?」
「もしサイズが合わなかったら、僕のもあるよ」
「本当!?」
「うん」
「ありがとう!」
潔が雪宮にも笑顔を向ける。
「雪宮くんも優しいね!」
「…………」
雪宮は一瞬黙った。
「……どういたしまして」
耳が赤い。
氷織がそれを見ながら笑う。
「みんな、潔ちゃんに弱すぎやろ」
「氷織くんもでしょ?」
烏が即座に突っ込む。
「お前もずっと潔のこと見とるやん」
「……見てへん」
「見てたやろ」
「……ちょっとだけ」
潔が二人を見る。
「氷織くんと烏くんって仲良いんだね!」
「まぁな」
烏が笑う。
「腐れ縁みたいなもんや」
「へぇ〜!」
潔が嬉しそうに笑う。
「私も仲良くなりたい!」
烏が一瞬固まった。
「……お前、そういうことサラッと言うんやな」
「?」
氷織も小さく笑った。
「……ほんま天然やなぁ」
そこへ黒名が潔の袖を引っ張る。
「潔」
「ん?」
「俺とも仲良く」
「もちろん!」
「……毎日話す」
「うん!」
「……約束」
「約束!」
小指を差し出す潔。
黒名は少し驚いたあと、そっと小指を絡める。
「……約束」
その様子を見ていた乙夜が笑う。
「へぇ〜。潔ちゃん、距離縮めるの早いね」
「そう?」
「うん」
乙夜が潔の前に立つ。
「じゃあ俺とも仲良くしてよ」
「もちろん!」
「即答?」
「だって乙夜くんもいい人そうだし!」
「……それ、結構嬉しいな」
乙夜はニヤッと笑った。
そして――
「潔」
低い声。
凛だった。
「はい?」
「……昼休み」
「うん?」
「一緒に食べるぞ」
潔が目を輝かせる。
「みんなで?」
「……」
凛は一瞬黙る。
「……俺はお前と食べたい」
「え?」
教室が静まり返った。
凛本人も、自分が何を言ったのか理解して少し目を逸らす。
玲王がニヤニヤする。
「凛、お前……」
「うるさい」
士道が大笑いする。
「アハハハ!!お前、めちゃくちゃ分かりやすいじゃねぇか!」
「黙れ、士道」
「で?潔と二人で飯食いてぇって?」
「…………」
凛は答えない。
潔はそんな凛を見て――
「じゃあ、みんなで食べようよ!」
「…………」
全員が固まる。
潔は笑顔で続けた。
「せっかく仲良くなったんだし!」
士道が腹を抱えて笑う。
「ハハッ!!こりゃダメだ!」
烏も笑う。
「完全に天然人たらしやんけ」
「え?」
「なんでもない」
雪宮が優しく笑う。
「……じゃあ、昼はみんなで食べようか」
「うん!」
蜂楽が潔の肩に手を乗せる。
「楽しみだね、潔!」
「うん!」
凪も反対側から、
「……俺も楽しみ」
玲王も、
「じゃあ昼飯、何食べる?」
千切、
「学食行こうよ」
氷織、
「僕、オススメのとこ知ってるで」
乙夜、
「じゃあそこ行こうぜ」
黒名、
「潔、一緒」
烏、
「人数多すぎやろ……」
士道、
「いいじゃねぇか!騒ごうぜ!」
そして――
教室の入口。
冴が静かに立っていた。
「……お前ら」
全員が振り返る。
「何してる」
「冴!」
蜂楽が手を振る。
「潔ちゃんと昼飯食べるんだ!」
冴は潔を見る。
「……そうか」
潔が笑顔になる。
「冴くんも一緒に食べる?」
「…………」
冴が少し目を見開く。
「……俺も?」
「うん!」
「…………」
冴は一瞬だけ黙った。
そして――
「……分かった」
その瞬間。
凛が冴を見る。
「兄さん」
「なんだ」
「……なんで即答した」
「別に」
士道がニヤニヤする。
「兄弟そろって分かりやすいなぁ!」
「うるせぇ」
冴が士道を睨む。
潔はそんな二人を見ながら笑った。
「ふふっ」
「?」
全員が潔を見る。
「なんか……楽しいね!」
――その笑顔に。
また全員の心臓が跳ねた。
そして潔は知らない。
今日一日で――
彼女の周りにいる十一人の男子たちの想いが、
もう後戻りできないほど大きくなっていることを。
コメント
7件
めっちゃええやんええやん(👍 ˙-˙ )👍👍続き待ってます(*^^*)
読み終えました!第6話、学校生活が始まってますます賑やかですね。休み時間に十一人全員が集まる光景には思わず笑ってしまいました。特に凛くんが「俺はお前と食べたい」って口にしちゃうところ、彼にしては大きな一歩だなと……。でも潔ちゃんが「みんなで食べよう!」と天然でさらっと流すのがまた絶妙で。冴くんも巻き込まれて「……分かった」って即答するあたり、兄弟揃って潔ちゃんに弱いのが伝わってきますね(笑)。みんなの気持ちが日に日に大きくなっていく過程が、丁寧で楽しかったです!