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妻が死んだ。乳がんだった。享年33。まだ30代前半で幼い娘を残して死ななきゃいけなかった彼女の気持ちは、正直言って俺には分からない。それを軽々しく『分かる』なんて言いたくない。
俺の名前は宇藤彰。35歳。トラックドライバー。妻志桜里とは高校時代の同級生で、たまたま仕事先で再会して意気投合してそのまま半ば勢いで結婚したが、その選択はお互いに成功だったと思う。長女も生まれてすくすく育ってくれて俺たちは本当に幸せだったと思う。
志桜里の病気が判明するまでは……
思えば彼女は変に我慢強いところがあって、ちょっとくらい具合が悪くてもそれを無視してしまえるタイプだった。と言うか、ガサツだったんだよな。だからなんとなく異変を感じてても無視してしまったんだ。
正直、それを恨みにも思ってる。と同時に、彼女がそうなのを知ってたからこそ俺の方が気付いてやるべきだったと後悔してる。
だがいくら後悔しても彼女は帰ってこない。それより今は彼女が残してくれた娘咲良のことだ。
もっとも、まだ5歳なのに咲良は俺なんかよりよっぽどしっかりしてると思う。