テラーノベル
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木曜日。
放課後の教室。
文化祭の準備を終えた玲は、机の上を片付けていた。
「玲くん」
「ん?」
「今日、帰るの少し遅くなるの」
「用事?」
「うん。ちょっとだけ」
「分かった」
星羅は鞄を持つ。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
星羅が教室を出ていく。
玲はその背中を見送る。
――また配信かな。
最近、星羅には妙に予定が多い。
それに。
セラの配信がある日は、必ずと言っていいほど放課後に用事がある。
「……」
玲は小さく息を吐いた。
疑っている。
でも、決めつけることはできない。
その頃。
星羅は学校を出て、配信スタジオへ向かっていた。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です、星乃さん」
スタッフに挨拶する。
「今日の配信は雑談中心でお願いします」
「分かりました!」
控室。
星羅はスマホを見る。
玲からメッセージは来ていない。
「……」
少し寂しい。
でも。
今日は配信がある。
玲くんも見てくれる。
そう思うと、自然に笑顔になる。
配信開始。
『みんなー! こんばんは!』
いつもの星乃セラ。
コメント欄が一気に流れる。
『セラちゃん今日も可愛い!』
『学校どうだった?』
『最近楽しそうだね』
星羅は少し照れながら答える。
『うん。最近、学校がすごく楽しいの』
『仲良しの子ができたから!』
コメントがざわつく。
『男?』
『女?』
『もしかして彼氏!?』
「ち、違うってば!」
星羅は慌てて否定する。
でも、頬は赤い。
『ただのクラスメイトだよ』
――嘘。
ただのクラスメイトじゃない。
私にとっては。
世界で一番大切な人。
その夜。
玲も配信を見ていた。
「……」
やはり。
星羅と似ている。
それだけじゃない。
今日、星羅が言っていたこと。
『最近、学校がすごく楽しい』
そして昨日、星羅も同じことを言っていた。
玲はスマホを握る。
「……やっぱり」
しかし、まだ確信はない。
そのとき、配信中のセラが言った。
『あ、そうだ』
『明日、ちょっと早起きしなきゃなんだ』
「……」
玲は時計を見る。
明日は学校。
星羅も当然来る。
玲の疑念がまた一つ増えた。
配信終了。
星羅がスマホを見ると、玲からメッセージが届いていた。
『今日もお疲れ』
「……!」
星羅は嬉しそうに笑う。
『玲くんもお疲れさま♪』
返信する。
しかし、その直後。
玲からもう一通。
『星羅って、普段何時に寝てる?』
「……!」
星羅の表情が固まった。
――もしかして。
気づかれた?
心臓が早くなる。
しばらく考えてから返信する。
『普通だよ? 12時くらい!』
そして、すぐに続ける。
『どうして?』
玲から返信。
『いや、昨日も遅そうだったから』
「……」
星羅は胸を撫で下ろす。
まだ大丈夫。
でも。
玲くんは少しずつ近づいてきている。
正体に。
「……どうしよう」
不安。
でも――。
嬉しい。
自分のことを知ろうとしてくれている。
翌朝。
教室。
「おはよう、玲くん!」
「おはよう」
玲は星羅を見る。
「昨日、遅くまで何してた?」
「……宿題!」
「そうか」
「うん!」
玲は何も言わない。
ただ、星羅をじっと見る。
「……何?」
「いや」
「?」
「……セラに似てるなと思って」
星羅の心臓が止まりそうになる。
「えっ!?」
「声とか」
「あ、あはは……」
星羅は必死に笑う。
「よく言われるんだよね!」
「そうなのか?」
「うん!」
――もちろん嘘。
そんなこと言われたことなんてない。
でも。
今はそれでいい。
玲はまだ、確信していない。
放課後。
星羅は一人で教室に残った。
「……危なかった」
胸に手を当てる。
そして――。
「でも」
小さく笑う。
「玲くんが私のこと、そんなに見てくれてるんだ」
正体に近づかれる怖さより。
自分を見てくれている嬉しさのほうが大きかった。
「……もっと見て」
誰にも聞こえない声。
「もっと私のことを知って」
そして最後に。
「いつか全部、玲くんに教えてあげるから」
星羅は静かに笑った。
コメント
1件
うわあ、もう玲くんが星羅の正体にかなり近づいてきてる……! 声が似てるとか同じタイミングで早起きするって話とか、伏線を拾うのが上手いなあ。でも何より、星羅が「バレるのが怖い」より「玲くんが自分を見てくれてるのが嬉しい」って言ってるところがもう、心臓ぎゅっとなる。秘密を抱えたままでいてほしいような、でも早く二人で共有してほしいような、複雑な気持ちになる良エピソードでした!
#青春恋愛
める
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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