テラーノベル
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画面の中で、葵生は少しだけ緊張した顔をしていた。
でも、
無理やり明るく振る舞おうとしているのが分かる。
『えっと……これを零くんが見てるってことは、多分私はもうちゃんと話せなくなってるか、もしくは……まぁ、その、色々あった後なんだろうなって思います』
小さく笑う。
『なんかこういうの恥ずかしいね。遺言みたい。私まだそんな歳じゃないんだけどなぁ』
少し沈黙。
『でもね、ちゃんと残したかったの。 私、多分これからいっぱい忘れていくからさ』
『レイちゃんに初めて会った日のことも、一緒にコンビニ行ったことも、アイス半分こしたことも、ライブの音も、手の温度も、少しずつ分かんなくなっていくと思う』
『だから……忘れる前に言いたかった』
『零くん、優しかったよ。 めちゃくちゃ不器用だったけど』
『全然喋んないし、愛情表現とか下手だし、すぐ“別に”とか言うし、煙草臭いし、寝不足だし、顔怖いし』
ケラケラ笑いながら言う。途中で僕の真似をしながら。
『でも、本当はすごく優しい人だった。 私が怖くて眠れない日は、何も言わず隣にいてくれたし』
『道分かんなくなった時も、怒らないで迎えに来てくれたし』
『私が自分の名前書けなくなった時、笑って“大丈夫”って言ってくれた』
『覚えてるよ、 ちゃんと覚えてる』
『私ね、病気分かった時、一番最初に思ったの、“嫌だ”だった』
『死ぬのが怖いとかじゃなくて』
『零くんのこと忘れるのが嫌だった』
『だって、大好きだったから』
『こんなに誰かのこと好きになると思わなかった』
『レイ画面の中で、
葵生は少しだけ緊張した顔をしていた。
でも、
無理やり明るく振る舞おうとしているのが分かる。
『えっと……これをレイちゃんが見てるってことは、多分私はもうちゃんと話せなくなってるか、もしくは……まぁ、その、色々あった後なんだろうなって思います』
小さく笑う。
『なんかこういうの恥ずかしいね。遺言みたい。私まだそんな歳じゃないんだけどなぁ』
少し沈黙。
『でもね、ちゃんと残したかったの』
『私、多分これからいっぱい忘れていくから』
『レイちゃんに初めて会った日のことも、一緒にコンビニ行ったことも、アイス半分こしたことも、ライブの音も、手の温度も、少しずつ分かんなくなっていくと思う』
『だから、忘れる前に言いたかった』
『レイちゃん、優しかったよ』
『めちゃくちゃ不器用だったけど』
『全然喋んないし、愛情表現とか下手だし、すぐ“別に”とか言うし、煙草臭いし、寝不足だし、顔怖いし』
『でも、本当はすごく優しい人だった』
『私が怖くて眠れない日は、何も言わず隣にいてくれたし』
『道分かんなくなった時も、怒らないで迎えに来てくれたし』
『私が自分の名前書けなくなった時、一緒に泣きそうな顔してたのに、無理やり笑って“大丈夫”って言ってくれた』
『覚えてるよ』
『ちゃんと覚えてる』
『私ね、病気分かった時、一番最初に思ったの、“嫌だ”だった』
『死ぬのが怖いとかじゃなくて』
『零くんのこと忘れるのが嫌だった』
『だって、大好きだったから』
『こんなに誰かのこと好きになると思わなかった』
『零くんと普通に歳取って、普通に喧嘩して、普通に生きていくんだと思ってた』
『おじいちゃんになっても煙草吸ってそうだな〜とか、絶対偏屈なおじさんになるな〜とか、そういう未来、本気で考えてたんだよ』
『でも、できなくなっちゃった』
『ごめんね』
『いっぱい迷惑かけたよね』
『私、自分が壊れていくのが怖くてたまらない』
『昨日まで出来てたことが出来なくなって、“あれ?”ってなる回数が増えて』
『顔見ても、一瞬誰だか分かんなくなる時もあって』
『でも、そんな時でも、声聞くと安心してた』
『だからね』
『もし私が零くんのこと分かんなくなっても、これだけは信じて』
『私はちゃんと、零くんが好き』
『世界で一番大好き』
『忘れたくて忘れたわけじゃないの』
『病気に負けただけ』
『だから、自分を責めないで』
『“守れなかった”とか思わないで』
『私ね、レイちゃんと一緒にいれて幸せだったから』
『本当に幸せだった』
『……あと、これ大事なんだけど』
『ちゃんと寝てください』
『ご飯食べてください』
『煙草減らしてください』
『あとライブ終わった後すぐ床で寝るのやめてください』
『……ほんと、放っとくとダメなんだから』
少し笑う。
でも、
その目は赤かった。
『もし来世ってものがあるなら』
『次もまた、零くんを好きになりたいです』
『その時はもっと長く一緒にいようね』
『今度こそ、一緒に歳取ろう』
『約束』
そこで、
葵生は少しだけ困ったみたいに笑った。
『……大好きだよ、零くん』
映像が、
そこで途切れた。
コメント
1件
読了しました……。葵生が動画で残した言葉のひとつひとつが、胸に突き刺さるようでした。「零くんのこと忘れるのが嫌だった」——その一言が、すべてを物語っていて。明るく振る舞いながらも目が赤い描写、来世でも好きだと言い切る強さと脆さ。それでも「ご飯食べて」って言える愛情が、たまらなく尊かったです。まだ続きがあるなら、零くんがどうこの言葉を受け止めるのか、読みたくてたまらなくなりました。