テラーノベル
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画面が暗くなる。
部屋に静寂が落ちた。
時計の針の音だけが、
やけに大きく聞こえる。
零司は動かなかった。
リモコンを握ったまま、
ただ真っ黒な画面を見つめている。
葵生の声が、
まだ部屋に残っている気がした。
『大好きだよ、零くん』
耳の奥で、
何度も繰り返される。
零司はゆっくり息を吸う。
でも、
うまく呼吸ができなかった。
喉が痛い。
胸が痛い。
苦しい。
それでも。
今まで、
泣けなかった。
事故現場でも。
葬式でも。
骨になった葵生を見ても。
どこか現実感がなくて。
葵生はまだ、
ふらっと帰ってくる気がしていた。
でも。
もう無理だった。
この部屋にはもう、
葵生はいない。
二度と。
「……なんで」
掠れた声が落ちる。
零司は俯いたまま、
震える手で顔を覆った。
「なんで、お前が謝んだよ……」
息が詰まる。
涙が零れる。
止め方が分からない。
「迷惑なんかじゃねぇよ」
声が震える。
「一回も」
「一回も思ったことねぇのに……」
零司は崩れるようにソファへ座り込む。
視界が滲む。
葵生がいた場所。
笑っていた場所。
眠っていた場所。
全部残っているのに。
本人だけがいない。
「勝手に一人で抱え込んで」
嗚咽混じりの声。
「怖かったなら言えよ……」
零司は唇を噛む。
血の味がした。
「俺、お前が思ってるよりずっと、お前のこと……」
最後まで言えない。
喉が詰まる。
涙が落ちる。
零司はぐしゃぐしゃになった顔のまま、
小さく笑った。
「……好きだったんだよ」
静かな部屋に、
泣き声だけが響く。
「葵生」
名前を呼ぶ。
返事はない。
当たり前だ。
もう、
どこにもいない。
なのに零司は、
壊れたみたいに何度も名前を呼ぶ。
「葵生」
「葵生……っ」
肩が震える。
呼吸が乱れる。
それでも。
今さらみたいに、
溢れて止まらなかった。
「俺、お前と普通に生きたかった」
涙で声が掠れる。
「ただそれだけだったのに……」
コンビニ行って。
くだらないことで笑って。
歳取って。
一緒に生きて。
本当に、
それだけでよかった。
「……会いてぇよ」
零司は泣きながら呟く。
子供みたいに。
どうしようもなく。
「っ、葵生……」
返事は、
最後までなかった。
コメント
1件
うわ……読み終わって、しばらく動けなかった🥀 零司がやっと泣けたの、しんどすぎた。ずっと気を張ってたんだね。「好きだったんだよ」ってあのタイミングで言わせるの、ずるいよ(泣)。コンビニ行って笑って歳取るだけの普通の未来って、それすら叶わなかった現実が重すぎて…。トマチンさんの空気の描き方、毎回沁みる🖤