テラーノベル
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あまり眠れないまま、迎えた翌朝──
だけどせっかくの週末だっていうのに、春樹は起きてくる気配もなくて、
今日もまた、起きたら居酒屋に行くだけなのかなと思ったら、なんだか帰りたくもなってきた。
どうせ起こしたところで、「休みの日ぐらい、ゆっくり寝かせろよ」とか怒られるだけだしと、ひとりで外に出かけることにした。
軽くメイクをして、エレベーターに向かう。
フロアに降りてくるのを待って乗り込むと、
「あ……、あんた昨日の女」
奥にあの鷹騰社長がいるのが目に入った。
相変わらず口が悪いっていうか、無遠慮なんだけどと思いながら、
「昨日は、どうも……」とだけ口にした。
「服が同じなんだな、昨日と……。と、言うことは……、ここはおまえの自宅じゃないのか?」
やけに頭の回転が早いけど、いきなりナニ分析してくれてんのよと思う。
「そんなこと、どうでもいいでしょう」
ややぶ然として言うと、
「かわいくない女だな、本当に」
腕組みをして睨まれた。
「別に、あなたにかわいいとか思ってもらわなくてもいいので」
黙っていられずに言い返すと、腕組みをしたままで私の顔をじっと見下ろして、
「少しは、かわいげくらい見せとけよ。そうすれば、いい女にも見えるんだから」
いかにも知った風な顔つきで、そう話した。
「それなら、男だって惚れ直すはずだからな」
そうして、ニッと口の端で笑って見せる。
「……大きなお世話なので」
そういうアドバイス的なやさしさとかいらないし、
人が彼氏とうまくいってなくて凹んでるような時に、気にかけてるような言葉をかけてくるのとか、ホントやめてほしいと思う。
「はぁー……」
思わず口から漏れたため息に、
「ため息は、やめとけよ。よけいかわいくなくなるぜ?」
その手の平で、頭をぽんと軽く叩かれた。
「あんまり、触んないでください。昨日だって、傘の中で肩とか抱いてきたし……」
彼氏との倦怠期のせいでやさしくされることにまるで耐性がなくなっていて、つい反抗的な言い方になる。
「ふん……かわいくなくて、」
すると、その人は鼻先で軽く笑って、
「けど、なんか面白い女……」
もう一度、私の頭をぽんぽんと叩いた。
「なんなのよ……」
そんな風にされたことに、つい赤くなりそうになって、顔を横にそむけた。
「……。……そう言えば、スーツ着てますけど、休みの日も仕事なんですか?」
話題を変えるつもりで、そう振ると、
「ああ、まぁな。仕事なんてしようと思えば、いくらでもあるしな」
急に、社長然ともした口ぶりで話した。
「昨日も、夜中まで仕事をして……ました、よね……」
そう言いかけたところへ、エレベーターが一階に着いた。
「うん? なんか言ったか?」
足を踏み出そうとして立ち止まる様子に、
「なんにも……」と、首を振って応えた。
すると「じゃあな」と、鷹騰社長は手を振って、エントランスを大股な足取りで出て行った──。
(なんか、変なヒト……っていうか、テレビに出てる時と、感じがまるで違うんだけど……)
距離感のないエゴイストな言い方は、やっぱり許せないところもあったけれど、
なんだかそのストレートな物言いは、嘘がない分だけ、胸の奥に直に響いてくるような感じもあった。
──そんなことを考えつつマンションを出て、(どこに行こうか)と、辺りを見回した。
大した目的もなく外に出てきてしまったけれど、考えてみれば行きたいところも特になかった……。
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コメント
1件
第6話、読ませていただきました。エレベーターでの再会、いいですね。鷹騰社長の「服が同じ」からの分析、確かに口は悪いけど観察眼は鋭い。彼女が彼氏との倦怠感で余裕を失ってるのを見透かしてる感じがします。「かわいくないけど面白い女」という評価、意外と本質を突いてる気がする。頭ポンポンも、距離感の近さが際立つけど、嘘がないストレートさがむしろ胸に響くっていう彼女の気づき、共感できます。