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翌日⸺
教室の窓から差し込む午後の光。二人は隣り合って座っているけれど、どこかぎこちない空気が漂う。
『…あの、まろ?』
ないこは小さな声で切り出す。言葉を探すように、少し目を伏せてから続けた。
『昨日は、本当にありがとう。あの時、すごく怖かったから…』
まろは静かに頷き、少し目を伏せてから言った。
「ないこが困っとるのに、ほっとくわけにはいかないやろ」
二人の間に沈黙が訪れる。お互い、何をどう話せばいいのか分からず、視線を交わすこともできなかった。
やがてまろが口を開く。
「俺…時々自分がなんなのかわからなくなるんよ」
そう言いながら、まろは視線を落とし、指先を机の上で軽く動かしていた。
その姿は、強気な不良の面影はもうなく、どこか幼くて繊細に見えた。
俺はその様子を見つめて、ゆっくりと息をつく。
『俺も…正直まだ、全部信じられているわけじゃないよ』
『まろのこと、昔のままの不良のイメージで見ちゃうこともあるし、怖いって思う時もある』
『でもね…昔のまろも、嫌いじゃないよ』
その言葉に、驚いたように目を見開く
「…ほんまに?」
『うん。強くて、誰にも流されなくて、でも、時々見せる優しさが好き。
それに、そういうまろが変わろうとしてるのも、ちゃんと見てる」
二人の目が合い、自然と笑みがこぼれた。
まろはぎこちなく手を伸ばし、俺の手に触れる。俺は少し戸惑いながらも、その手を握り返した。
『これから、もっとお互いのことを知っていきたいな』
「俺も…そう思う」
まだ不安もあるけれど、二人の間には確かな期待が芽生え始めていた。