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みぃ〜ฅ^•ω•^ฅ
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Misia
100
聖次
932
ギルドの二階にある宿ではディルたちが泊まっている。酒場へ引き返すのは少々、もやっとする気持ちもあったが、レアナに連れられて引き返す。
その道すがら、シレントは昔どこかで聞いた『人々は悲しみを分かち合ってくれる友達さえいれば、悲しみを和らげられる』という言葉を思い出した。彼女はまさに、そんな友達になってくれそうな気がしてならない。
幸いにも、酒場には見たくもない相手がいなかった。まだ部屋にいるのか、それともダンジョンに出発したかは分からないが、ともかくホッとして胸を撫でおろす。隅の席なら気付かれることもない。
「こっち座ろうぜ、隅の席はテーブルが小さいからさ」
レアナが意気揚々と選んだ席は、たまさか空いていたど真ん中の席。よく目立って仕方がないので気分は乗らなかったが、この笑顔を怒らせたくはないな、と隅の席に座るのは諦めた。
メニューを手に取り、見慣れた料理の挿絵を眺める。
「まずはビールでも頼もうか。それから……僕はチキンソテーにしよう。ハーブの香りとたっぷり油でぱりぱりになった皮の部分が美味しいんだよね」
「おう。私もビールと、つまみは茹で豆でいいか」
「たったそれだけ? お腹いっぱいにならないと思うよ?」
「さっきまで食べ歩きしてて腹は減ってない。酒が飲みてえだけ」
言われてみれば、と大き目なチュロスを食べながら現れたのを振り返って納得する。いっしょに酒を飲んでゆっくり話せるならそれでよかった。
「おっさん、なんでクビになったの?」
早々に届いたビールをぐいっと煽ってから、レアナが尋ねた。
「それが……本当にアレな理由なんだけどさ」
シレントは正直に話した。自分がそこそこの年齢であるのを理由に辞めさせれられたこと。水の入ったコップを投げつけられ、役立たずだと言われたこと。若い少女ばかりを囲いたいのだろうという推察まで。
聞いたレアナは喧騒をぶち抜くほどの大笑いをして、周囲の視線を一瞬だけ集める。笑いすぎて目に浮かんだ涙を拭った。
「そんなに笑うことないだろ」
「いやあ、悪い。笑ったのはあんたじゃなくてさ」
「ディルのほうかい?」
「そうそう、そいつ! めちゃくちゃ頭が悪くて好きだわ、そういうの!」
思い出すと可笑しくなってしまう。
数年の冒険者生活でレアナが初めて聞くような愉快な話だった。
「んで、やる気失くして煙草吸ってたわけだ?」
「そして酒まで飲んでる。まったくロクデナシだよ」
やれやれ、と傷心したとはいえ酒と煙草に逃げてしまった自分に呆れる。
だからといって飲まずにはいられなかったが。
「君こそ、どうしてパーティをクビに……」
見た目こそ細いが、新人冒険者にも見えない。しかし冒険者らしい服装もしていない。胸を隠すだけのチューブトップに股下の極端に短いホットパンツと、有り体に言って目のやり場に困るくらいの恰好だ。
レアナのブーツが、不機嫌そうに小さくコツコツと床を叩く。
「チームプレイができねえのかって言われたんだよ。でもな、そいつらときたら、私より弱いくせに手柄は欲しがりやがる。そのせいで死にかけたくせに礼を言うどころか、勝手な真似をするなだと。贅沢なやつらだっつの」
「強いんだねえ、レアナは。僕とは大違いだ、羨ましいよ」
届いたステーキを切り分けるのに視線を下げた。あからさまに。
「直視できねえか。同じクビでも理由が違うから?」
「……違うとは言い切れないかな。ほら、おじさんっていい歳だろ」
「だから? 若けりゃ良かったのか。それとも私が同い年なら違ったか?」
先ほどまでは楽しそうだったレアナの目が鋭い刃のようにシレントを映す。
「そんなことはないよ。ただ、なんというか」
「あんた、自信失くしちまったみたいだな」
図星だった。荷運び人としての仕事は心から愛していると言えるほどだ。しかし一方で、見限られた自分の怨嗟の声が首を絞めた。お前が選んだ仕事は誰にも愛されない。誰も笑顔にはできない。そう言われている気がしてしまう。
「気にしない方がいいぜ。荷運び人なんて、せいぜいパーティの荷物持ち。それこそ本人がお荷物ってパターンもあるが、あんたはそうじゃなさそうだ」
じろじろと見て、レアナがにやりと笑う。
「もし冒険者を続ける気があるんなら、私と一緒にパーティを組まないか」
思わぬ提案に、口に放り込んだステーキの切れ端が喉に詰まりそうになる。
「っ……本気かい? おじさん、そんなに強くないよ?」
「別に構いやしねえよ。私が守れば済む話だ。大体────」
何かを言いかけて口を閉ざす。シレントが首を傾げた。
「悪い、なんでもねえ。とにかくパーティを組まないか。どうせ他所に行ったって荷運び人の席ってのは案外埋まってる。便利だからな。それなら、私とあんたでパーティを組んで、そんでもって、仲間を集めて最強のパーティにしよう!」
ビールを飲み干して、だんっと樽のジョッキをテーブルに叩いて意気たっぷりに言った。傍から見れば酔っぱらいの戯言だが、ちっとも赤くなっていない顔で堂々とした真剣な眼差しが本気を物語っている。
「仲間を集めてって……いや、良い夢ではあるけどさ」
「最強パーティの専属荷運び人。良い響きだなって思うだろ?」
「……興味がないと言えば嘘になるよ」
若いときから、ただ荷運び人として多くの人々の役に立ち、笑顔が見られればそれでいいと熱心にやってきた仕事だが、冒険者としてギルドに名を刻んだかぎりは有名になってみるのも悪くない。
あごをさすって深く考え込んだ。結果、損得勘定より夢と希望を取った。
「おじさんで良ければ雇ってほしい。荷運びに関しては有能だと思う」
シレントの荷袋は魔法で編まれた特別製だ。どんなものでも際限なく回収できる。その代わり多少の制約はあるが、彼にとっては大した問題ではない。雇ってもらえるのならば、他のどんなパーティよりも負担を減らせる自信がある。
「いいね、最高だ! じゃあ結成祝いに酒を追加しよう!」
「あんまり飲むと体に悪いよ?」
シレントが言うとレアナは不服そうに睨んでから、くすっと笑う。
「煙草吸ってるおっさんが言えた義理じゃねえよ。んで、今は無礼講だ」
「なるほど。僕も今度からそう言おう」
「ついでにデザートも頼もうぜ。ここ、チェリーパイが美味いんだ」
ニコニコしながらメニューを選ぶレアナに、申し訳なさそうな顔をする。
「おじさんは遠慮しとくよ。その……最近、たくさん食べられなくてね」
「……お、おう。じゃあ多めに頼んで包んでもらっとくか」
コメント
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第2話読了! レアナの「私が守れば済む話だ」って台詞にグッときました。自信を失ったシレントにとって、その一言はすごく響いただろうなあ。お互いクビ同士で偶然出会って、最強パーティ目指すって展開、熱いですね。2人の温度差が絶妙で、これからどう仲間を集めていくのか楽しみです!