前回たくさんの♡ありがとうございました!
【sha視点】
倒れている彼を見つめる。
近くで見ればよくわかるのだ。
腕や顔につくられた無数の傷が。
きっとこれと同じように脚や腹にも数え切れないほどあるのだろうと簡単に予想がつく。
こんなボロボロになってまで、耐えて耐えて総統に忠誠を誓ってきた『彼』。
たとえそれが洗脳によるものだったとしても。
きっと我々の総統は目を光らせて笑うだろう。
そんな考えを巡らしたとき、インカムで救護テントに侵入し暴れられたと聞こえた。
刹那、視界の端で緑は揺れた。
今の今まで倒れていたzmは立ち上がり、ズカズカと、それでいてフラフラと俺らに近寄ってきた。
そして彼は言う。
「おい。俺を救護テントに連れて行ってくれ」
掠れていて、それでいて力強い声だった。
そう思うと同時に俺らはぎょっとした。
保護対象とはいえ、敵である彼を案内して大丈夫なのか。
そもそも、今こうして化物とも言える彼を目の前に、戦闘態勢を取らずして大丈夫なのか。
こんなにも倒れそうなのに俺らが案内をして動かすようなことをしていいのか。
ぐるぐると困惑が脳を支配する。
しかしそれは、彼の真っ直ぐな眼差しによって遮られた。
横にいるknと顔を見合わせると、同様に困惑しているようだったが、次第にその顔ははっきりし、 コクリ、と大きく頷いた。
タッタッタッ
三人の走る音が救護テントの方角に移動していく。
さっきまで倒れて限界のはずなのに、zmはいとも容易く俺らに遅れを取らないスピードで走り続けている。
…こいつは只者ではないのだとひしひしと体が感じ取る。
knのこめかみには単なる暑さからか、それとも味方が攫われたことに対する焦りからか、それともこのzmという男の強さからか、幾らか汗が滲み、滴っていた。
それは俺も全く同様であった。
最中、emはどのような見た目であるのかなど、特徴を聞かれた。
これもまた、素直に伝えてよいのかどうなのか。
俺が困惑のさなかにある中、knは馬鹿正直に特徴を伝えた。
目は色素が薄いこと。
周りの人間のような隊服は着ておらず、戦闘が苦手の知識文明おじさんであること。
(ハゲが進行していること)
knはあんな見た目で、あんな性格だが、案外頭のキレるやつだ。特徴を教えたこの選択は間違っていないだろう。
…間違ってないと思うしかない。
しかし、knもこう思っただろう。ハゲが進行している、そう伝えたときのzmがくすりと笑う顔。
とてもじゃないが、俺らを敵視しているようには見えないし、俺らに対して心の壁を作っていなさそうだ。
そして何より、俺らwrwrd軍に近しい雰囲気を。
【zm視点】
救護テント em 何者かが暴れた 攫われた? 色素薄い 隊服なし 戦闘不得意 ハゲ
走りながら要点を考える。絞り出す。
んーーーー。
ま、取り敢えずemいうやつが救護テントから攫われたんやろ?
きっとその攫った奴はA国で、そいつを捕まえればええんやな?
そうすれば俺はまた救える。
誰かの正義になれる。
…いや、ハゲってなんやねん!!
足はこいつら二人に合わせて動かし、呼吸も乱さず、只々、emという人物のイメージ、A国の奴が去りそうなルートなど今後の動きを考える。ここから救護テントまでは200m。
身体はとっくに限界のはずで、足にはもう感覚がないし、呼吸ができているのか、五臓六腑が動いているのか。
もうわからない。
でも動いている、生きて動き続けている理由は今たった1つの目的が目の前にあるから。
必ずemを助ける。A国には連れて行かせない。
なぜなら、きっとA国についた時点で洗脳ルートが確定するから。
あの糞総統によって洗脳されてしまう被害者はもう出さない。俺で終わらせる。
これだけだ。
気力で体を動かす。
救護テントまであと100………50…………10…………
0
少し前
【shp視点】
くそ、emさんが攫われた。
突然A国の奴がテントに入ってきて暴れやがった。
それも、比較的戦闘能力のある人物にことごとく足に弓矢を放ち、追手を越させないように。
そして紛れながらemを攫う。
わいは右足に矢1本。帰り際に2弾腹に食らった。
僅か5秒もない時間でこれだけの成果と言えるものを挙げた相手は幹部か何かなのだろう。
すぐにインカムで先輩たちに伝えたが、暴れたやつがA国につくまでにこちらが追いつけるのか…。
あぁくそッ!!!!
なんで…なんでこういうときにわいはッ…
腹を押さえる手が赤く染まっていく。
痛みに耐えながらなんとか這ってでも追いつこうと、もぞもぞと動いていると複数の足音が向かってきているのにびっくりして顔を上げる。
まさか、またA国が!?
そんな絶望はこちらに向かってくる先輩たちによって砕かれた。
そして何やら誰かを引き連れている。
ボロボロで、目は長い前髪と緑のフードで隠れてて、見たところ腰のベルトにナイフや銃をさせるようになっているが、一丁も見当たらない。
特徴でいったら対象のzm、だろうか?
…いやまて、zm?ここは戦場だぞ。
なぜ、武器を持っていない?
いやいや、その前になぜ先輩たちは対象を保護せずに引き連れている???
朦朧とする意識の中で痛みに耐え、ひたすらに思考を巡らす。
そうしている内に走る三人はあっという間にテントに着いた。
【sha視点】
テントに着いた。
インカムが入ってから2分は経過している。
kn「shpッ!!!」
shp「せ、んぱ…ぃ」
kn「ちょッ…神頼んだ!!」
倒れているshpにknが駆け寄りぺ神を呼ぶ。
どうやら弓矢で足を射たれたようだ。
その場にいる兵士数名も同様で、あたりは血の匂いが漂っている。
すぐさまぺ神が駆け寄り、適切な応急処置を施している。
zm「なあ。emっちゅうやつはどの方面へ行った?」
zmが処置を受けているshpに駆け寄り、問う。
ぺ神は俺とkn空気を読み取ったのか、zmに対して敵対意識はそんなにないようだ。
shp「…A国の…ッzmっスよね?言、えるわけ…ないやん。」
shpはzmに対して当たり前だがまだ信頼を置けていないようだ。
それはそうだ。出会ってすぐに信じれはしない。
zm「教えてくれ。」
shp「ッ…」
けれど
shp「…あっち」
zmがあまりに真っ直ぐな目で見つめるものだから、渋々といった形で森を指を指した。
kn「森方面やな。まだ2分しか経ってない。追いつくぞッ!!」
sha「おう」
zm「…ッ」
【zm視点】
テントに着いて、血まみれの紫ヘルメットのshp?と言うやつに問う。
どこの方面へ行ったのか。
俺らがこちらに来るまで2分43秒かかっている。
早く…早く行かなければ。
「あっち。」
shpが指を指したのは森だった。
A国に向かう森。
そして、俺を散々扱いた森。
「…ッ」
いやーな記憶がフラッシュバックする。
体が石のように固まる。
A国総統の期待と自己肯定感が滲み出る目。
常に数十名で俺を取り囲む幹部と兵士。
この森は大きい。
A国に近い場所ではそいつら全員の首に木刀を当てるまで終わらないという内容でいつも訓練させられた。
対してあいつらは長い鞭、鋭い刃物、弓矢にシャベルを持っている。
ただでさえ人数不利。1対多数。
それなのに相手は傷をつける、痛覚を与える道具を武器としている。
一度の訓練でどれだけのキズをつくったことか。
体に永久に残るキズは、俺の心のキズを表す。
どんなことがあっても俺を縛り続ける。
「…ぃ、z…ッ!!」
sha「zm!!」
声をかけられハッとする。
sha「…何があったか知らんけど、行かな助けられないんや。行くで!!」
そうだ。
em。
もう3分が過ぎただろう。
体の負担と記憶による抵抗で最高速度の減速。
昨夜は確か雨が降っていた。
地形による弊害もありそうや。
ここからA国までは25km。
…行けるか?
いや、行くんや。
片道ならば体力を使い果たしたとしても追いつけるスピードが出せる。
相手がバイクや車を使っていようと関係ない。
俺は追いつく。
zm「おう。」
誰かの…正義に。
主です。
え。遅いのに短いし展開少な。と個人的に思いますねはい。
スミマセンでした。
私情になりますが、期末も終わってあとは評定を待ち、受験するだけになりました。
少しは投稿頻度上げられたらと思いますが、それなりに勉強しなくてはいけないので、相変わらず🐢×100ペースだと思われます。
お知らせで皆様にお知らせさせていただいた通り、別作品での創作も並行して計画しておりますので、そちらもぜひ興味を持っていただけたらと思います。
それでは、次回の投稿をお待ちください。
コメント
4件
めっちゃ面白かったです!次回も楽しみです!