テラーノベル
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【sho視点】
zmが固まっていた。
ただ体力の限界なのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
目の前の森を見ているようで、彼は森を見てない。
遠くを見つめていた。
ただ呆然と。
「おい!! zm…zmッ!!」
声を掛ければハッとして、彼の目に光が宿る。
「行くで」
少しの沈黙のあとに彼は応えた。
zm「…おう。」
呼びかけに応答する声が聞こえたから、俺は森の中に駆けて行く。
knは先に水色のバイクを走らせて行った。
早よ追いつかんと、emさんッ…。
A国に何されるかわからん。早く助けんと…!!
zmを視察しにA国へ調査に行った俺が一番わかっている。
捕まってしまえば
それは勿論「洗脳」の道1択。
洗脳…。
せんのう??
…ん?
よく考えれば、zmは洗脳されてるやんな??
んんん???
じゃあなんで、敵である俺らの仲間を助けようとしている??
疑問に思って
「zm。お前なんで協力してくれるん?」
と声を出そうとしたとき、後ろからとんでもスピードで緑が駆け抜けて行った。
「は、…へ?」
驚いて阿呆みたいな声しか出ん。
彼は先程まで倒れていて、それでいて俺らと一緒に走ってきて、それで…
それで、とうに限界を迎えているはずでは…?
「knッ!!今zmがそっち行った!!」
ジジッ
≫kn「おう、わかった…ってぁぁああッ!?!?」
「どうした、何があった!?」
ジジッ
≫kn「は、ッ速すぎやろ……」
え?
もうknの方まで辿り着いて追い越したんか??
バイクの速さと時間の遅れを優に越した。
人の脚が。
…まさか。
A国は洗脳による自我の損失を図るだけでなく、人体改造までも行っていたというのか。
「…えぇぇ(困惑)」
「くくく…A゙HAHAHAッッ!!!!
よい…とても良いではないかッ!!!!! 今のを見たかトン氏!!!」
「嗚呼。見たけど…なんやアイツ。とんでもないですわ。」
「そうだろうそうだろうッ!!!!!とても魅力的だ。絶対にwrwrd軍に引き入れるんだゾッ!!!」
【zm視点】
まだや。
こんな速さじゃ追いつけへん。
さっき昨夜の雨による柔らかい土の変形を見た。
knの機種じゃないタイヤの跡がくっきりと一直線に1つついていた。
跡からして間違いなくA国のバイクや。
そして、跡の数からして相手は1人。
あのタイヤの種類からしてバイクは車体が長めで、二人乗りは不可能。
emはその車体のところに投げ出されているか、あるいは担がれているか。
間に合うか…、?
いや、間に合わせろ、俺。
もし…
もし間に合わなかったら、きっとemも被害者となってしまう。
決めたではないか。俺で終わりにする。
酷い仕打ちを受ける人をこれ以上出さない、と。
目的を忘れるな。
その為に、今、自分の限界を超えているんじゃないか。
ピッチを上げて、ストライドを大きく。
「ハッ……ン、ハァッ……」
まだなのか。まだ追いつけないのか。
…つらい。きつい。肺が痛い。肺だけじゃない。腕、脚、腹部、頭、全部痛い。
今にも脚が絡まって地面に飛び込みそうだ。
それでも、走り続けるのは
誰かの正義のため。
いや、自分自身の正義の為。
_見えたッ!!!
走るバイクに向かってその辺の鋭めの石を投げる。
パァンッ
音を立ててタイヤがパンクした。
「ッ!?!?
なッ…、zmッ!?!?貴様!!!!」
相手から怒号が飛ぶ。
パンクした衝撃で担がれていたemは前方に投げ出される。
_ッまずい!そっちは…ッ!!!!
ッ岩が!!!!
zm「い゛ッ…」
em「カハッ…!!!」
咄嗟にemを庇うようにして、手を伸ばした。
岩とemの間に体を滑らせ、お腹側にemを抱える。
背中には鋭い岩が刺さり、じくじくと痛む。
あーあ肺までいったかな、なんて頭の隅で思う。
zm「…大丈夫か?」
em「はい!!私は大丈夫ですが…ッ!?!? 」
パッと顔を上げて俺の問いに答えたかと思うと、すぐにサーっと顔が青くなる。
なんやこいつ。カメレオンかいな。おもろ。
人生で一番おもろいかもしれん。
em「あッあなたこそ…ッ!!背中、大丈夫じゃないですよね!?!?…っていうか、あなた…zm!?!?」
zm「くははッ、そうや?」
あまりにemという人物が面白くて、会話がこんなにも楽しいものかと感じてしまう。
その時、emの背後に黒い影。キラリと刃物が反射する。
「zmッ!!!!!許さんッッッ!!!!!!!!」
zm「危なッ_」
ザクッ
ポタポタと俺の腕から血液が流れる。
刺さっているナイフの煌めきとは対象的だ。
この赤い液体も、A国による改造に染められてしまったのだと思うと忌々しい。
ナイフから腕を抜き、相手から奪ったナイフで突き立てる。
心臓を一突き。
あーあ汚。せっかくの緑の草が。
哀れだなぁ。
これで、emは助けられた。
目的は達成した。
emがA国に回収される前に取り返したし、傷もつけてない。多分。
フッと視界が暗くなる。
あぁ。これが人間の最期というものなのかと察する。
はー。疲れた。
もう限界や。俺。
心臓から離れてる足先や指先はとっくに冷たくなってるし、背中の痛みはもう感じない。腕も同じ。
俺、やりきったよな?
_あぁ。最期に悔いができたとすれば、
sho、kn、shp、…きっといい仲間が居るんやろうなぁ。
俺もその中の一人でいたいなぁ。
雰囲気で感じたんや。
ここは互いに互いを尊重し、信頼し合う、誰にとっても最高の場所。
来世はアイツらの仲間になりたいなぁ。
emともう少し話していたかったなぁ。
そう思って思考を放棄する。
全身の力が抜け、意識も遠のく。
遠くにはバイクの音、車っぽい音。
頬には雫が。雨が降って来たんかな。
最後に見えたのは泣いてるem。
ふふん。
がちおまたせしました。
受験終わりましたよォォォ😌🪄🪄🪄
合格発表は明日なのでまだドキドキです…
次回もお楽しみに🪄🪄🪄
コメント
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風景描写や感情の動き方が本当に素敵すぎて国語の教科書かと思いました…… 適当そうな性格とか本当は守りたいものとかタイトル通りすぎて大好きです…… そして受験お疲れさまです……! 最後まで本当に応援してます……!