テラーノベル
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side:f
f「……」ガチャッ カチャッ
歩き続けて43分29秒経った
もうそろそろバッテリーが落ちる
歩いた時間はまだ少ないがそれまでの消耗が大きかった
右腕がない
足もコードが露出してしまっている
左足のアクチュエータが壊れて足が曲がらない
コードもいろんなところで切れてしまっていて全身にエネルギーが行き渡らない
視覚センサも潰れている
聴覚、嗅覚センサも壊れているな
外角センサのほとんどが潰れてしまった
内角センサは少しばかり生きているようだ
メモリーカードも破損している
もう何も覚えていない
自己位置推定ができない
ここはどこだ
超音波を出して周りの障害物の有無などを検知する
森?
木がたくさん……
あちら側にひらけた場所がある!
f「………」カチャッ ピーピーピー
バッテリーがっ………
ヒュウゥゥゥ………ブチッ
ガチャッ ゴトッ
side:o
ゴトッ
o「?」
誰かきた
誰だ?
敷地内に設置してあるカメラを確認する
o「!」
機械だ
それもボロボロの
o「どう言うことだよっ」
急いで外に出る
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
o「おいっ!」
機械に触る
最新型のようだ
ガチャガチャ
どうやらバッテリー切れを起こしているようだ
ボディがボロボロなのは置いといて
o「どうやって運ぶか…」
持てるかな?
o「失礼しますっ」
ガチャッ
o「軽っ」
流石は最新型
軽量化が半端ない
普通の成人男性より遥かに軽い
じゃなきゃ持てないのだが
姫抱きで家まで持って行く
家というより研究所なのだが
ガチャッ
o「はぁ…」
軽いとは言え
運動不足の体には結構応える
おっと
それよりコイツの充電をしてやらねば
機械に触るのは久しぶりだ
そもそもコイツの充電回路は壊れてないのか?
とりあえず人型ロボット用を研究していた時の部屋にコイツを運ぶ
人型ロボットを研究していたのだが
ロボットが手に入らず辞めてしまった
辞めたとは言え今でも諦め切れていないのだが
なんにせよ人型ロボットは高い
しがない研究員の俺には到底触れない代物
それが今目の前にある
最高だ
にやけが止まらない
そのままにしておいてよかったな
気持ちだけでも諦めずにいた甲斐があった
o「さてと…」
まずはコイツを治さなければ
o「んしょっと」
よくできた機械だなぁ
触った感じは普通の人間となんら変わらない
着せられている服を剥がす
o「うおっ…」
普通の人間と変わんない
露出しているコードとかが無ければ普通の人間と間違えることはないだろう完璧な見た目
コイツ男だったんだ
綺麗な顔をしていたからてっきり女だと思っていた
やっぱり触った感じは人間のそれと変わらない
とりあえず作業台に横たわったコイツにコードを繋げる
そして大体の構造を把握する
o「うぅん……」
だいぶ壊れてるなぁ
まずはアクチュエータだけでも治してやりたい
o「ふぅ……」
いじくり回したい衝動を抑えて必要な道具を取り出す
よかった
アクチュエータは治せそうだ
久しぶりの機械に高揚しながらコイツを治す
o「よしっ」
左足の内側が治った
時間はあまりかからなかった
人間楽しいことはすぐにできるんだな
問題は外側だ
どうやってるんだ?
この皮膚?は
他の綺麗な皮膚のところを読み込み構造を確認する
o「おぉ…」
奇跡的にうちにあるもので作れそうだ
o「できたぁ」
綺麗な左足ができた
皮膚とか初めて作ったけど我ながら上出来だ
周りとなんの違いもない綺麗な肌になった
o「つぎはぁ…」
PCを見て壊れている箇所を確認する
o「外角センサいくか」
超音波で周りの情報を得られるとはいえ
見えない 、聞こえない、 匂いもないは辛いだろう
o「うわぁ……」
機械だぁ
そりゃそうなんだけども
センサとか治るかなぁ?
o「……」
これもまたうちにあるもので直せそうだ
すんごい奇跡
o「やるか」
o「よしっ」
内部完成
これをまた皮膚で包む
待てよ
目ってどうやって作るの?
とりあえず元の目をスキャンする
o「むっず…」
めちゃくちゃ難しい
これもあるものでできそうだ
作れるかは別だが
o「出来ちゃった」
本当に出来ちゃった
めっちゃ綺麗
少しだけ人外感を出そうと思い虹彩は黄と赤のオッドアイにした
すげぇ綺麗だわ
o「右腕いくか」
左足の要領で右腕を作る
o「出来ちゃったなぁ」
完璧な右腕
本当に違和感がない
関節も自由に曲げれる
俺天才じゃね?
ここからはもうウィニングランだ
中の回路を綺麗にして
微妙に壊れている部分などを治す
o「……♡」
めっちゃ綺麗
めちゃくちゃ可愛い
俺コイツのこと好きだな
ほぼ一目惚れに近い
まだ動いてるとこも見たことないけど
o「あっ!」
メモリーカードの存在を忘れていた
メモリーカードを読み込み
内部を確認する
o「壊れてるなぁ」
でも復元できそうだ
o「よしっ」
できた
これまた綺麗に戻ったな
興味本位で中を見てみる
o「うっわ…」
コイツの過去が全て見えた
壊れた理由も
コイツはどうやら前の持ち主に壊されたようだ
買われたときから持ち主に犯されたり、殴られたり……よく壊されていたようだ
機械にだって痛覚はあるのに
前の持ち主はコイツの痛みに歪んだ顔に興奮していたようだ
気色悪い
みるだけで心が痛む
それと同時にコイツは俺が守ってやりたいという感情が芽生えてきた
そう言えば名前知らなかったな
コイツの名前はリョーカというようだ
カードをリョーカに戻すかどうか悩んだが、結局リョーカに戻すことにした
リョーカの記憶なんだから俺が勝手にどうこうするのは良くないと思ったんだ
o「ふぅ…」
カチッ
入れちゃった
仕方のないことだ
リョーカにそこにあった白い病衣を着せる
この病衣は背中が空いているのでコードをつけたまま着れる便利なものだ
やっぱり即日発送って助かるな
今日の朝興味本位で買った病衣が役にたつなんて…朝買った時には思いもしなかっただろうな
o「よし…」
リョーカを立たせて充電コードに繋げる
いろんなコードに繋がれて壁に貼り付けられてるリョーカ……なんかエロい
俺いつからこんな変態になったんだ?
充電はしばらく終わらないようだ
俺はここで眠りについた
o「ふぁ…」
充電できたかな?
o「100%なってる」
電源ボタンを押す
フォン
目が光って電源がついた
リョーカをコードから離す
リョーカがだんだん覚醒してきた
f「ごめんなさいっ」
o「はっ?」
side:f
この人は誰?
僕の体が治ってる
この人が治してくれたのかな?
でも人間ってみんなあんな人だし…
この人も体目当てで…
まずい
殴られたりするのかな?
謝らなきゃ
f「ごめんなさいっ」
o「だから…」
f「ひぃっ」
「なんでもっなんでもするから」
「コードは切らないで…」
o「………」
急に黙った
怖い
僕なんかした?
涙が溢れ出てくる
嫌になっちゃう
機械なのに感情が人間みたいにあって
他より出来損ないだから
しゃがみ込んで涙を流す
o ナデナデ
f「っ!!」
撫でられた?
知らない
こんなに優しい人間知らない
f「ヒグッ……グスッ」
o「リョーカ」
見上げると優しい顔をした人間がいた
o「君は偉いよ」
「頑張ったね」
「もう君を無理矢理につかって好き勝手する奴はいない」
f「へっ?」
もう前のご主人はいない?
f「本当に?」
o「うん」
「君の前の主人に言って君を僕のものにした」
人間に優しく抱きしめられた
初めて投げられる言葉の数々
よくわからないけど
とても暖かい
f「僕が…ここにいてもいいの?」
「迷惑じゃない?」
「僕が生きてても……」
o「自己肯定感低すぎ」
「俺がなんでリョーカを治したと思ったの?」
「リョーカが必要だからでしょ」
嬉しい言葉
僕の存在を肯定してくれる言葉
o「リョーカ」
「まだ人が怖い?」
f「少しだけ…」
o「そっかぁ…」
「俺は元貴」
「これからリョーカをどろどろに甘やかして幸せしか無い生活を送らせてやるから」
「前の主人なんか忘れるくらいにね」
「だから」
「覚悟しててよねっ!」
f「ふふっ」
o「リョーカっ!」
「やっと笑った」
f「ほんとだ…」
o「やっぱりリョーカは笑顔の方が可愛い」
f「急になにっ」
「容姿を褒めても何も出ないよっ」
o「ううん」
「思ったことを言っただけ」
f「っつぅぅ……///」
o「照れてる〜!か〜わいっ♡」
f「ばかっ」
顔が良いよぉ
胸がドキドキする
僕にそんな機能ないのに
f「ねぇ元貴、」
o「なに?」
f「胸がすっごいドキドキするんだけど」
o「っ……///」
「リョーカ、それ恋だよ」
f「っ……///」
f「僕、元貴のこと好きなのかも……」
o「リョーカ……」
「俺とっ……付き合ってください!」
f「うんっ」
o「リョーカぁ……」
元貴に強く抱きしめられる
人ってこんなにあったかいんだね
o「とりあえずっ」
「これからよろしくねリョーカ」
f「うんっ!」
「よろしくっ元貴!」
僕の未来は明るくて楽しいものになりそうです
o「とりあえずご飯たべよっ!」
「機械ってご飯食べれるの?」
f「うん」
「食べることはできるよ」
「エネルギーには変換されないけどね」
o「じゃあまず美味しいものから教えてあげるねっ」
f「楽しみにしてるっ」
end
コメント
3件
ストーリー面白かったし、分かりやすくて、こんな神作を書ける主さんはやっぱり天才ですね…!