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side:o
o「ねぇ… 聞いてよ涼ちゃん」
飲食店で酒を飲みながら問いかける
o「最近耳鳴りがひどいんだ」
「ひどい時はうずくまっちゃうぐらい」
「いろいろとやってみたんだけどさぁ」
「全部効かなくて」
この飲食店は個室になっており話を気にせずするのにはうってつけでお気に入りの店だ
最近はよく通っている
目の前にいるのは涼ちゃん
笑顔がよく似合うとても可愛くて綺麗な僕の自慢の妻…になる予定
最近僕からプロポーズして婚約者になったんだ
妻って言いつつ男の子なんだけどね
左手の薬指についた指輪が光っている
色素の薄い髪がふわふわ揺れていてこの世のものとは思えないくらい綺麗
ここが天国だと錯覚してしまいそうだ
ニコニコしながら話を聞いてくれる涼ちゃん
やっぱり涼ちゃんは無口だ
僕の話をずっとニコニコして聞いているだけ
まぁそれだけで気持ちがぐっと軽くなるから良いんだけど
o「それからさ……」
そんな涼ちゃんに愚痴る
酒も進みいろんなことが口から出てくる
それを相変わらずニコニコしながら聞いてくれる涼ちゃん
とても可愛い
何も喋ってくれないのは悲しいけど、近くに涼ちゃんがいることで気持ちが和らぐ
涼ちゃんのほわほわした雰囲気が心地いい
o「若井のやつがさぁ……」
どんな話をしても涼ちゃんはニコニコするだけ
やっぱり寂しくなる
涼ちゃんの髪をいじりながら言う
o「涼ちゃんもちょっとは話してよね」
f ニコニコ
o「涼ちゃんのけち」
やっぱり涼ちゃんは喋ってくれない
今回で涼ちゃんと飲みにきたのは3回目くらいだけど話してくれることは一回もなかった
o「今回もだめかぁ」
f ニコニコ
仕方がないのでまた僕から話をする
o「最近家にGがでてさ……」
ピンポーン
インターホン?
僕は飲食店にいるのに
まぁ食べ物とか酒あたりが届いたのだろう
o「ゲーム中にGが出てね……」
w「元貴〜入るぞ〜」
若井の声がした
若井も誘ったっけ?
気にせず話を続ける
o「そいつがめちゃくちゃ飛ぶヤツでね……」
ガチャ
w「もとっ……」
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side:w
元貴からの返事がなかったので合鍵を使って家に入らせてもらった
元貴が引きこもって1週間心配になって様子を見にきた
w「うっ…」
扉を開けた瞬間異臭が漂ってきた
生ゴミだろうか
電気が付いていない
嫌な予感がしてすぐに靴を脱いでリビングへ向かう
w「もとっ……」
リビングにはゴミが散乱していた
酒の空き缶とかPTPシートが散らばっている
電気が付いていないのでとても暗い
そして、 床に座って酒を飲みながら独り言を言う元貴がいた
w「………」
o「それでねぇ……」
とても楽しそうだ
とても
o「涼ちゃんはねぇ……」
w「元貴」
o「もうちょっとね……」
w「元貴っ!」
「落ち着けっそれは涼ちゃんじゃない」
「幻覚だっ!」
o「若井?何言ってるの?」
「そこにいるじゃん涼ちゃんは」
w「元貴の方こそ何言ってんだよ」
「涼ちゃんは死んだっ!」
o「っ!!!」
「涼……ちゃ…」
w「涼ちゃんは交通事故で死んだっ」
「もうこの世にはいないんだっ!」
o「そ……んな…」
w「お前だって知ってるだろっ」
「涼ちゃんの…綺麗な死に顔っ」
涙が止まらない
元貴だって泣いている
w「涼ちゃんが空で悲しんでるぞ」
「元気でいてねって言ったのに…って」
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side:o
覚えてる
覚えてるよ
あの日涼ちゃんは僕らの目の前で死んだ
信号無視のトラックに撥ねられて
僕は涼ちゃんが撥ねられた瞬間時が止まったように思えた
どちらかと言うとゆっくり進んでる感じかな
ドンッ
涼ちゃんは10メートルぐらい飛ばされていた気がする
バチッ
涼ちゃんが地面に叩きつけられる音と同時にゆっくりだった時間が戻った
僕らは無我夢中で走り出した
ow「涼ちゃんっ!!」
道路に横たわっている涼ちゃんを抱く
身体中から血が流れている
それに骨も折れているようだ
足があらん方向に向いてしまっている
f「ヒューッヒューッ」
o「涼ちゃんっ」
「死んじゃ駄目だよ」
「俺たち婚約したばっかじゃん」
「たくさん幸せにするねって言ったじゃん」
「まだ何もできてないよ」
w「涼ちゃん………」
f「もと…きごめ……ひろ……も」
「げんき…でいて…ね」
「すぐ…おいかけてきたら……のろう…から………」
「ばい…ば…い、も….とき…ひろ…と」
f ニコッ
そこで涼ちゃんはこの世を去ってしまった
本当に…
本当に綺麗だった
女神のような全てを優しく包み込む笑顔…
辛いはずなのに涼ちゃんは満足そうな顔で死んでいった
w「うわぁあぁぁぁ…」
僕は耳を塞いだ
o「うるさいよぉ……」
w「涼ちゃんっ涼ちゃん…」
若井がボロ泣きしている
僕も目から涙が溢れて止まらなかった
僕らは気が済むまで泣いた
その日を境に僕の幻覚や耳鳴りは消え去った
そして家もいつも通りになった
今日は若井と墓参りに来ている
o「涼ちゃん…みてる?」
「なんとか元気にやってるよ」
w「俺のおかげでな」
o「岩井うるさい」
w「ひどっ」
涼ちゃん、まだ僕らを呪わないでよね
何度もそっちに行こうと思ったけど
お互いに支え合って生きてるから
そっちで彼氏作らないでよね
もし作ったらこっちから呪うからね
o「行こうか…」
「じゃあね、涼ちゃん」
小説のお題↓
引きこもり
幻覚
親友
飲食店
酒
耳を塞ぐ
閲覧ありがとうございました
コメント
3件
主さん天才すぎますぅ…… どうやったらこんな感動作品 書けるんですかぁ…😭 こっちまでボロ泣きっすよ…… 婚約したばかりなのに何もできてないって…そこで号泣ですぅ…思い出しただけで目の前が涙で歪んじゃいますよぉ…… 感動作ありがとうございました😭