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ガタンガタンと列車は揺れながら走る
前に居る仲間は和気あいあいと話している中、私はそんな気にはなれなかった
気を紛らわそうと、目を外にやった
青い鏡のような海は、全てを包み込むような優しさがあった
嗚呼
私は、死ぬのだろうか
莫迦な事を考えているウチにトンネルに入った
窓に反射する顔は自分で無いような気がした
入隊して数ヶ月経ち、戦争は開始した
アメリカ軍と日本軍の戦闘機は火を放ちながら落ちていく
冷や汗が止まらなかった
操縦している手は力が籠もっていた
その時だった
アメリカ軍の戦闘機が突っ込んできた
轟音と火花が全てを包み込んだ
目を覚ました
杉の木で作られた質素な天井
体を起こした時、全身に痛みを感じた
包帯やらは巻かれてないから、医師を呼んだりしたのだろうか
奇跡的に軽傷だったのだろうか
等と詰まらぬ考えを為ていると、軍服の人が入ってきた
「よお、起きたのか」
ガハハと笑う姿を無視し、体のあちこちを観察した
「嗚呼、御前なあ、爆発の衝撃で吹っ飛ばされたんだが、断片が刺さるだけで済んだんだよ。其処を俺が助けた」
ほーん
普通、腕の1本2本吹っ飛んでそうだがなあと思いながら、近くに畳まれてあった軍服を着用した
「御前腹減ってんだろ?」
「ええ…少しは…」
「丁度好い、夜飯の準備が出来てんだよ。食いな」
「…はい」
今は兎に角、空っぽの腹になにか入れたかった一心で、大きな背中を追い掛けた
そして光が広くなったと思った瞬間、沢山の軍人が此方を向き、驚いたような表情を為た
促された自己紹介をテキトーに済まし、夜飯を平らげ、休憩時間までストレッチをしていた
休憩時間のチャイムが鳴り、皆が一斉に散り散りになる
そんな中、倉庫に出向いた
大きな日の丸と桜が描かれたピカピカな戦闘機
惚れ惚れと見入っていると、後ろから声をかけられた
「此れ、君のなんだよ」
ビックリして振り向いた
眼鏡をかけた糸目の男
「嗚呼、僕は桐島。宜しく」
伸ばされた手を握った
「っへへ、有難う。」
「…あの、…」
「ウチの隊長が上司に無理言って戦闘機を用意させて、ウチの部隊に入隊させたんだよ」
「はあ」
隊長…多分、あの大きな男だろう
「じゃ、また。唯それ云いたかっただけだし」
といって手を振りながら消えていった
蟋蟀が夜を奏でている
横に成り、目を閉じた
将来の夢は、皮肉にも飛行士だった。
そして私は、死ぬのだろうか
友人も金も…恋人以外の全てを失った
私には恋人しかいない
でも私は彼女に会えない
夢を失い、軍人に為れた私は何がしたいんだろう
今更、何が為たかったんだろうか