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数日後。
🍵「……暇」
医務室のベッドの上で、すちはぽつりと呟いた。
熱はすっかり下がっていた。
顔色も戻っている。
けれど、医師からは「もう少し安静」と言われ、まだ独房には戻れていなかった。
そのせいで。
🦈「すちさーん!!」
ばたばたと騒がしい足音。
次の瞬間、医務室の扉が勢いよく開く。
🍵「うわっ」
🦈「元気ですか!? 苦しくない!? 熱ない!? ご飯食べた!?」
🍵「質問多いなぁ」
こさめだった。
今日も今日とて慌ただしい。
すちは思わず笑ってしまう。
🍵「大丈夫だよ。もう元気」
🦈「ほんとに?」
🍵「ほんとほんと」
こさめはじーっと疑うように顔を覗き込む。
距離が近い。
近すぎる。
すちは困ったように笑った。
🍵「……近いって」
🦈「だって心配だったんですもん」
🍵「うん、知ってるよ〜」
その返事に、こさめは少しだけむっとする。
🦈「なんか子ども扱いしてません?」
🍵「してる」
🦈「えぇ!?」
即答だった。
すちはくすくす笑う。
その穏やかな笑い声を聞いて、こさめはようやく肩の力を抜いた。
元気そう。
ちゃんと笑ってる。
それだけで、胸がじんわり温かくなる。
すると、すちはふと窓の外を見る。
医務室の小さな窓。
空が少しだけ見える。
🍵「……久しぶりだなぁ」
🦈「なにがですか?」
🍵「誰かが来るの待つの」
こさめは目を瞬かせた。
すちは窓を見たまま続ける。
🍵「ここって、基本みんな距離置くから」
当たり前のことみたいに言う。
でも、その言葉はこさめの胸に重く落ちた。
死刑囚。
関わりすぎちゃいけない存在。
みんな分かってるから、近づかない。
🦈「……こさめ変ですかね」
🍵「ん?」
🦈「普通、もっと怖がるんですよね」
すちは少し考えてから笑った。
🍵「変だと思う」
🦈「うぅ」
🍵「でも、嫌いじゃない」
さらりと言われて、こさめの顔が熱くなる。
🦈「す、すちさんそういうこと普通に言う……!」
🍵「ほんとのことだし」
🦈「ぅあー……」
顔を覆うこさめを見て、すちは肩を揺らす。
その姿は本当に穏やかで。
まるで“死刑囚”なんて言葉とは無縁みたいだった。
だからこそ、時々怖くなる。
この人は本当はどんな人なんだろう、と。
その時。
コンコン、と扉が鳴った。
入ってきたのは先輩看守だった。
先輩「こさめ、そろそろ戻れ」
🦈「あ、はい……」
名残惜しそうに立ち上がる。
すると先輩はすちを見て、少し眉をひそめた。
先輩「体調戻ったなら明日には元の場所だ」
🍵「了解です」
軽く返すすち。
こさめの胸がちくりと痛む。
“戻る”。
たったそれだけなのに、急に現実を突きつけられた気がした。
ここは病院じゃない。
刑務所だ。
そして、すちは——。
こさめが黙り込んだことに気づいたのか、すちはふっと笑った。
🍵「そんな顔しないで」
🦈「……してません」
🍵「してる」
優しく言われる。
その声に、また泣きそうになる。
するとすちは少しだけ声を落とした。
🍵「明日も会えるよ」
その言葉に、こさめはゆっくり顔を上げる。
すちは穏やかに笑っていた。
でもその笑顔の奥に、“いつか終わる”と分かっている人特有の寂しさが滲んでいて。
こさめは胸の奥がぎゅっと締め付けられた。