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第一話 天の助の旅の始まり
世界は混乱に包まれていた。
毛という毛を根こそぎ刈り取り、ツルツルの世界を築こうとする「新毛狩り隊」。その恐るべき勢力は、町も村も焼き尽くし、人々を震え上がらせていた。
そんなある日、とある小さな町。
少女・テリは瓦礫の上に座り込み、故郷を見渡していた。
「……私の故郷が、こんなに……」
涙ぐむ彼女の耳に――。
「ぐすっ……うわあああああああん!!!」
町中に響き渡る大号泣。振り向いた先にいたのは……。
「……え、なにあれ。豆腐?」
豆腐であった。
豆腐が、二本足で立ち、大泣きしていた。白い体を震わせながら。
「だ、誰!?」
テリは思わず叫んだ。
「頼む!!俺を食べてくれぇぇぇ!!」
豆腐は涙と鼻水を滝のように垂らしながら、土下座した。
「……え?」
「誰も……誰も俺を食べてくれないんだあああ!!コンビニでもスーパーでも、賞味期限切れでも、誰も買ってくれねえんだよぉぉぉ!!」
「知らんわ!!なんで初対面でそんな重い話ぶっこむの!?てか賞味期限切れってもう食べちゃダメなやつ!!」
だが、哀れに思ったテリは、仕方なく豆腐を一口。
「……ぱくっ」
ふわ、と優しい大豆の香り。舌に広がる柔らかな食感。
「……おいしい!」
テリの目が輝いた。
「え……」
涙でぐちゃぐちゃの顔のまま固まる豆腐。
「うそだろ……お、俺が……おいしいって……言われたの、初めてだ……」
その瞬間――。
「ヒャッハー!!毛はどこだァ!」
瓦礫の中から現れる、新毛狩り隊の兵士たち!頭はピカピカに剃り上げ、光を乱反射させながら迫ってきた。
「そこにまだ毛が残ってる女がいるぞォ!!」
彼らの狙いはテリだ。
「やめてっ!」
テリが怯えた瞬間、天の助(自称:哀しき豆腐戦士)が立ちはだかった。
「……待て。彼女は俺の……俺の食べてくれた人だ!!」
「なんだこいつ、豆腐か!?」「くだらねえ、潰せ!」
兵士たちが襲いかかる――。
だが天の助は――。
「とうふスマッッッシュ!!」
謎の豆腐アタックで敵を吹っ飛ばした!
白い四角い体が跳ね回り、兵士の頭にめり込む!
「ぎゃあああ!!」「豆腐にやられるなんて恥だあああ!」
兵士たちは泣きながら逃げ去っていった。
「……た、助かった……」
呆然とするテリ。
「ふっ……俺は食べられるために生きてるが……たまには人を守るのも悪くねぇ……」
「かっこいいこと言ってるけど、さっきまで『食べてぇぇぇ!』って泣いてたよね!?キャラぶれすぎでしょ!」
ツッコミを入れながらも、テリの胸には一つの決意が芽生えた。
(この人なら……いや、この豆腐なら……!新毛狩り隊を倒せるかもしれない!)
そう考えた彼女は、地面に手をつき――。
「お願いです!!仲間になってください!!」
まさかの土下座!
「……」
天の助はすでに寝ていた。
しかも寝言で「賞味期限まだ……まだいける……」とつぶやいている。
「こいつほんと大丈夫か!?いや絶対ヤバいやつでしょ!!」
だが――。
「……しょうがねぇなぁ……仲間に……してやってもいいぞ……」
寝ながらも、なんだかんだOKする天の助。
「寝ながら返事!?いや今絶対無意識だったよね!?」
こうして――。
テリと天の助の奇妙すぎる旅が始まったのだった。