テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する



第一話 天の助の旅の始まり


 世界は混乱に包まれていた。

 毛という毛を根こそぎ刈り取り、ツルツルの世界を築こうとする「新毛狩り隊」。その恐るべき勢力は、町も村も焼き尽くし、人々を震え上がらせていた。


 そんなある日、とある小さな町。

 少女・テリは瓦礫の上に座り込み、故郷を見渡していた。


「……私の故郷が、こんなに……」


 涙ぐむ彼女の耳に――。


「ぐすっ……うわあああああああん!!!」


 町中に響き渡る大号泣。振り向いた先にいたのは……。


「……え、なにあれ。豆腐?」


 豆腐であった。

 豆腐が、二本足で立ち、大泣きしていた。白い体を震わせながら。


「だ、誰!?」


 テリは思わず叫んだ。


「頼む!!俺を食べてくれぇぇぇ!!」


 豆腐は涙と鼻水を滝のように垂らしながら、土下座した。


「……え?」


「誰も……誰も俺を食べてくれないんだあああ!!コンビニでもスーパーでも、賞味期限切れでも、誰も買ってくれねえんだよぉぉぉ!!」


「知らんわ!!なんで初対面でそんな重い話ぶっこむの!?てか賞味期限切れってもう食べちゃダメなやつ!!」


 だが、哀れに思ったテリは、仕方なく豆腐を一口。


「……ぱくっ」


 ふわ、と優しい大豆の香り。舌に広がる柔らかな食感。


「……おいしい!」


 テリの目が輝いた。


「え……」


 涙でぐちゃぐちゃの顔のまま固まる豆腐。


「うそだろ……お、俺が……おいしいって……言われたの、初めてだ……」


 その瞬間――。


「ヒャッハー!!毛はどこだァ!」


 瓦礫の中から現れる、新毛狩り隊の兵士たち!頭はピカピカに剃り上げ、光を乱反射させながら迫ってきた。


「そこにまだ毛が残ってる女がいるぞォ!!」


 彼らの狙いはテリだ。


「やめてっ!」


 テリが怯えた瞬間、天の助(自称:哀しき豆腐戦士)が立ちはだかった。


「……待て。彼女は俺の……俺の食べてくれた人だ!!」


「なんだこいつ、豆腐か!?」「くだらねえ、潰せ!」


 兵士たちが襲いかかる――。


 だが天の助は――。


「とうふスマッッッシュ!!」


 謎の豆腐アタックで敵を吹っ飛ばした!

 白い四角い体が跳ね回り、兵士の頭にめり込む!


「ぎゃあああ!!」「豆腐にやられるなんて恥だあああ!」


 兵士たちは泣きながら逃げ去っていった。


「……た、助かった……」


 呆然とするテリ。


「ふっ……俺は食べられるために生きてるが……たまには人を守るのも悪くねぇ……」


「かっこいいこと言ってるけど、さっきまで『食べてぇぇぇ!』って泣いてたよね!?キャラぶれすぎでしょ!」


 ツッコミを入れながらも、テリの胸には一つの決意が芽生えた。


(この人なら……いや、この豆腐なら……!新毛狩り隊を倒せるかもしれない!)


 そう考えた彼女は、地面に手をつき――。


「お願いです!!仲間になってください!!」


 まさかの土下座!


「……」


 天の助はすでに寝ていた。

 しかも寝言で「賞味期限まだ……まだいける……」とつぶやいている。


「こいつほんと大丈夫か!?いや絶対ヤバいやつでしょ!!」


 だが――。


「……しょうがねぇなぁ……仲間に……してやってもいいぞ……」


 寝ながらも、なんだかんだOKする天の助。


「寝ながら返事!?いや今絶対無意識だったよね!?」


 こうして――。

 テリと天の助の奇妙すぎる旅が始まったのだった。






この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚