⚠注意⚠
・🇺🇸×🇷🇺(のつもりだけど恋愛要素はあんまりない)
・BL
・嘔吐っぽい描写
・暗い
許せる方のみ見てください…
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飛び起きてしまった。
よかった、夢だ。そうは分かっていてもさっきまでの赤色が、呻き声が、鉄っぽい匂いが妙に生々しくてあまり良い気分ではない。少し吐き気がする。
カーテンを開けると部屋がぼんやりと薄い自然光で照らされる。窓の外はなんだか暗いのか明るいのかよく分からないような深い水色をしていて変な時間に目が覚めてしまった事だけ分かった。
今日だけでなくここ最近眠れていないからなのか少し頭が痛くてくらくらするし吐き気もする。1秒でも長く睡眠時間を取るために再びベッドに上半身を投げ出して目を閉じた。まあどうせ安眠はできないだろうけど。
その直後、枕元に置いていたスマホから着信音が鳴った。おそらく相手は時差のある場所にいるのだろう。こちらの時刻の事も考えてほしい。多分普通なら寝てる時間だぞ。
睡眠を邪魔された事に少し苛立ちながら、寝ぼけたまま誰から掛かってきているのかも確認せずに鳴り響く音楽を止めた。
「…алло?」
頬に軽く触れる小さな板が、いつもより少し冷たい気がした。
「ハロー、ロシア!なんか声低いな!今暇?」
数秒の間の後、やたら早口で自分とは対象的に明るく元気な声が返ってきた。アメリカだ。普段話す分にはいいが、寝起きでこいつの声を聞くとなんだか頭が痛くなる。ていうか普通に声でかいうるさい
「暇……っちゃ暇だが、今から寝ようとしていたところだ。」
「今から?明日朝早いのか?モスクワは今21時半くらいだろ」
「あ、言ってなかったか。1週間前から上の都合でウラジオストクに来てるんだが、えっと…」
壁にかかったアナログ時計にちらりと目をやる。
「こっちは午前4時半だ」
「うっっそ!?わ、悪い。そうとは知らず起こしちゃって…」
今度はしゅんとして申し訳なさそうにしている。プライベートで話す時のこいつは顔に出る方だとは思っていたが、顔が見えない電話でも声色がコロコロ変わってどんな表情をしているのか手に取るように分かって面白い。自分よりも長く、しかも200年以上生きているのに時々ちょっと可愛く見えることがある…かもしれない。
「いや、元々起きてたから気にするな。それより何かあったのか?直接電話掛けてくるなんて珍しいな」
「最近はちょっと忙しくてあんまりお前と話せて無かったんだけどさ…そんな大した用ってわけじゃなくて、いや大した用なんだけど、えっと」
少し言葉に迷っているような感じであー、とかその、などの声が聞こえる。忙しいのにわざわざ電話してまで伝えたいことなんて、一体なんなんだろうか。
「…ロシアさ、最近ちゃんと寝れてる?」
「えっ」
予想外の質問だった。てっきり何か機密性の高い話とか重要な話とかしてくるもんだと思っていたから素で驚いた声が出てしまった。
「いや、うーん、まあ…普通に寝れてるけど」
しかもどういった意図を持ってこんな質問をしてきたんだ?直接会ったときに雑談でこういう事を聞くのは分かるが、わざわざこれだけのために電話を掛けるほどのものではない気がする。
「そっちはまだ日の出前なのに俺が電話掛ける前から起きてたんでしょ?ほんとに寝れてるの?」
「あー…」
なんと返せばいいんだろうか。いや別にちょっと寝付きが悪かったり変な夢を見たり程度で一睡もできていないというわけではないのだが、しっかり眠れているといえば嘘になる。しかしこれをそのまま伝えれば心配させてしまうかも。でも…。
言葉に詰まって黙り込んでしまい、アナログ時計の針の音だけが部屋に響く。距離によるタイムラグではごまかせない程の間が空いてしまい、気まずさに耐えかねて何か返事をしようと思考を巡らせていると耳元から少し音質の悪い声が聞こえてきた。
「最近ずっと体調悪そうだって聞いたしさ、今もあんまり元気無いじゃん。嫌な事あった?やっぱ先月の…」
分からない。悩み事が一つも無いってわけじゃないし最近は少し色々大変だけどそれでも普段通り人並みに充実した生活はきっと送れていると思う、多分。
「いや、特に何もない。たまたま寝れない日が続いてるだけだから心配しなくて大丈夫だ」
「大丈夫じゃないだろ、今だってちょっと声震えてるし」
思わず目を見開く。気が付かなかった。自分では何事も無いように振る舞っているつもりなのに気付かないうちに他人に自分を見透かされている。怖い。ずっと傷んだ部分を隠せていたはずなのに最近どうも上手くいかない。
こういう話をこいつとしたくない。憐れまれているようでなんだか癪に障る。電話越しの声を他人事のように聞き流しながら、窓の外を見た。まだ少し仄暗い。
「聞いてるか?今はどこか体調悪くない?」
体調。そういえばずっと体が重いし頭も少し痛む。何よりさっきから吐きそうだ。でもそれをここでこいつに伝えたくない。他人に心の中を見せるより一人で抱える方がまだ楽だ。それに弱みに付け込まれたら困る。スマホを耳元から離して、画面を見つめる。
「…ごめん」
そう呟いて受話器のマークを人差し指で軽く叩く。短い電子音が鳴って声が途切れた。部屋に再び静寂が訪れる。ベッドの上にスマホを投げ、これでよかったんだと安心した途端強い吐き気に襲われた。
「ぅえ…」
その直後、枕元に置いていたスマホから着信音が鳴った。今度は音源に目も向けずふらふらと別の場所へ向かう。部屋に響き渡る音楽はさっきよりもやけに大きく聞こえた。大丈夫。別にあいつとこんな話を続けなくたって生きていけるだろうし。
つるつるした便座に手を付くと、皮膚がじっとりと汗で湿っているのが分かった。自分の浅い呼吸音と、喉元まで込み上げてきたものがごぷ、と水っぽい音を立てるのを聞いた。
平和にしようとしたのに結局性癖を詰め込んでしまった!いずれ消す。
コメント
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うわ好きですッッ……