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zmut
【キャパオーバー】の続きです。
ドルパロ
ut視点
深夜。
一悶着を終え、家へ帰って来たのだが。
ut『こういうのって何て返せばいいんや…』
トーク画面には『ごめん』の一言。送り主は有名なアイドルグループのzm。
ライブ終わりの件でだろう。
ut『あんまし覚えとらへんわ…』
実を言うところ、あまりにも衝撃的な出来事だったので覚えていないのだ。
目を覚ましてからの事なら鮮明に覚えている。
騒がしいな、と思い目を開けると、泣きそうなzmのご尊顔が目の前にあった。
もっかい気絶するかと思ったわ。
それはそれとして。
ut『…わからん!!』
『全然大丈夫です』…大丈夫じゃないやつやん。余計に心配するわ。
『あまり覚えていなくて』、それはそれでひどいか。
何度も入力をしては、取り消す。
悩みに悩んだ末、結局『僕もごめんなさい』と送った。何に対してかはわからない。
すぐに既読がつく。間を開けてから、
『なんでutが謝るん?』『utは困ってたのに、俺が悪いわ』と返信された。
俺は本当に何をしでかしたんだろう。
ut『…直接聞くのが早いか』
『一度お会いできませんか。』、気軽に送ったはいいものの、相手は有名人。
場所は?、どんな格好で会えばいいのか。そもそも忙しいから会えないのでは?
次々と浮かんでくる問題に頭を抱える。
送信を取り消そうにも既読がついてしまった。
『いつにする?』
…どうやら、また会えるらしい。
一週間後。
少し古い喫茶店の扉を開けた。からん、と扉の鐘が鳴る。
zmさんも大阪住みらしく、すぐに都合がついた。
zm『…!ut、こっちやで』
周りを見渡していると、奥のほうで手を振っているzmさんがいた。
椅子にそそくさと座る。近い、顔がいい…
ut『…ごめんなさい、呼び出してもうて…』
zm『全然ええよ。会いたかったし』
目を合わせにこ、と効果音が付きそうな笑顔を見せられた。
ぐ、眩しい…
恥ずかしくてふい、と目をそらしてしまう。
ut『…ファンサービスが過ぎますよ』
zm『連絡先交換してるのにそれ言うか?』
『てか、タメ口にしてぇや。むず痒い』
ut『わかった、わ』
何から話せばいいのかわからなくなって、口をつぐむ。
沈黙を破ったのはzmだった。
zm『…やっぱ前のこと、やんな』
『…ほんまにごめん、嫌やったやろ』
ut『あんまし覚えてないねんけど、なんか俺やっちゃったよな…?』
ちら、とzmを見る。
きょとん、とした顔をしていた。
zm『…覚えてない?』
ut『その…連絡先が繋がってんのかとか』
『zmさんが何で謝ってんのかいまいち…』
少し間が空いたあとはぁー、と大きなため息が聞こえた。
zmの方を見ると机に突っ伏し、隙間から見えた顔は険しかった。
怒らせた…?
ut『ご、ごめん』
zm『ほんまに。関わらんといてって言われるかと思ったわ』
『記憶なくなる位戸惑ってたん?』
仮にも推しやで。話してる時点で戸惑うに決まってるやん。
そう言いたくなる気持ちを抑える。
突っ伏していたzmが、ゆっくりと手を掴んできた。
ut『へっ…!?』
zm『結構俺も頑張っててん、忘れるなんてひどいわ』
『思い出させたる』
そのまま手の甲にキスをしたかと思うと、手首、腕。
次は鎖骨で、そのあとに額だろう。
あれ、前は押し倒されていたような。
ふっと頭に、押し倒しキスをされた記憶がよみがえってきた。
ut『まっ、まって!!』
『思い出した、思い出したから…!!』
軽くzmを押す。幸いにもすぐに止まってくれた。
顔が熱くて、視界が霞む。
zm『やっぱり、嫌やったよな』
zmは申し訳無さそうに笑った。
袖で涙をぬぐい、首を横にふる。
zm『でも、泣いてるやん』
ut『…せいりげんしょう』
zm『ほんまか?』
疑うような、心配そうな眼差しを向けられる。
昔から、恥ずかしいと涙が出てしまう。頑張っても治らない。
zm『…ごめん』
がた、とzmが席から立ち上がった。
荷物と伝票を持ってレジに向かっていく。
まって、
ちゃうから。
いつの間にかzmの腕をつかみ、引き留めていた。
ut『…嫌ちゃうし、むしろ嬉しい、てか推しにこんなんされたら、涙止まらんくらい恥ずいねん!!』
一息で言い切った。
顔をあげられないでいると、上機嫌な声が聞こえてきた。
zm『嬉しいんや、ふーん』
ut『う、うっさいわ』
つい、ぶっきらぼうに言ってしまう。
いつの間にかzmは正面に座り直しており、
『ふーん』や『へー』などと声を漏らしていた。なんだかからかわれている気がする。
zm『後輩組と俺にされるならどっちが嬉しかった?』
『shpとci最推しって言ってたやん。』
顔は笑っていたが、探っているような声色だった。
ut『最推しは確かにshpciやけど』
『…zmさんのほうが、嬉しい』
届くかわからない程の声。
顔を輝かせているあたり、聞こえていたのだろう。
zm『ほんま、かわええ…』
顔を背けてしまう。
がすぐに顔をzmの方に向けさせられた。
zm『絶対好きにさせたる』
いたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
ut『そんときの写真やん…懐かしい』
カメラのフォルダ整理をしていたら、喫茶店で撮ったツーショットを見つけた。
3年くらい前だろうか。
あのあと、1ヶ月も経たないうちにzmから告白を受けた。
アイドルと付き合うのに少し抵抗はあったが。
思い出に浸っていると、家の鍵が開けた音がする。彼だろう。
パタパタと玄関に向かった。
zm『ただいまー』
ut 『おかえり』
zmがもたれ掛かるようにハグをしてきた。今日は疲れているらしい。
ut『ご飯できてんで。食べるか?』
zm『めっちゃ食べたいけど、その前にut不足やから』
ut『おつかれさん』
トントン、とzmの背中を叩いてやる。
その手にきら、と輝くものが一つ。
薬指には、きみどり色の宝石がついた指輪があった。