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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「Thank you for having us here. This is Aoi Nanase, my secretary」


社長に紹介されて私は色々な人と名刺を交換し握手を交わす。私は今、社長と共に新しいクライアントとの会議に来ている。


本来八神さんが一緒に同行するはずだったのだが、彼がこの打ち合わせに間に合わない為私が急遽参加する事になった。


今まで秘書として社内で対応したことはあっても、社長と一緒に秘書として外に同行したことはなかったので緊張する。


このクライアントはカリフォルニア、シリコンバレーにある会社の一つで自社の製品を日本で公開するイベントを行う為桐生クリエーションに依頼してきた。


社長とは知り合いなのか、会議と言ってもあまり堅苦しくなく和やかな雰囲気で進む。緊張していた私も次第にリラックスして話を聞きながら、必死にメモを取った。


「Yes, We can provide this video streaming over the internet. If you want we can also ーー」


社長の流暢な英語を聞きながら、顧客の返事をメモにとる。私が思うに、彼は恐らく長いこと留学か何かしていたに違いない。


英語はある程度日本にいても出来るが、微妙なニュアンスや独特の言い回しや表現は、何年か住んでいないとわからないものもある。電話で時々聞いてはいたが、改めてこうして対面同士の会話を聞くとますます確信する。


「Ok. Great. I will come up with a new plan based on your input and my team will contact you later.」


社長は皆と握手を交わし、会議が無事終了した私達は彼の運転して来た車に向かった。


「お疲れ様。議題のメモは全て控えてある?」


「はい。こちらにあります。後でまとめてメールします」


「助かるよ。今日は七瀬さんがいたから英語での会議が楽だったよ」


社長はそう言って微笑む。そんな彼を見ながら、私は先ほど思った事を尋ねた。


「社長はとても流暢に英語を話されるんですね。昔留学された事がありますか?」


「ああ、実はサンフランシスコのベイエリアにある大学に通ったんだ。今日の社長は昔大学で知り合ったんだ」


私は納得して社長に頷いた。


ベイエリアには有名な大学がいくつもある。おそらくその大学の一つに行ったに違いない。さすが社長だ。


「なんか腹減ったな。何か食べてから帰らないか?」


社長はネクタイを緩めながら車の方に歩いた。その姿からは男の色気がだだ漏れしていて、なんだかドキドキして落ち着かない。


目のやり場に困り、慌てて腕時計を見るとすでに8時を回っていた。


「そうですね。何か近くのレストランでも探しましょうか?」


「七瀬さんはメキシコ料理好き?」


長い会議でちょっと疲れていたのか社長は手ぐしで髪をかき上げた。


髪が少し乱れ、目の上にさらりとかかり緩めたシャツから喉仏と素肌を覗かせている。上着をとってシャツを少し腕まくりし、微笑んで私を見る社長の色気と破壊力は半端じゃない。どおりで皆彼に恋をするわけだ。


「はい。実は大好きなんです。アメリカにいる時はよく食べに行ってたんですが、日本に帰って来てからはあまりメキシコ料理を出しているお店を知らなくて」


社長は私の返事を聞くと嬉しそうに答えた。


「奇遇だな。実は俺も好きなんだ。アメリカにいる時は俺もよく食べたよ。それからテキーラとマルガリータも」


ふふっと、それを聞いて思わず声にして笑う。社長が強いお酒を大学の友達と飲んでる姿が想像できる。


「社長、お酒が好きなんですね。私はあのグラスの周りにまぶしてある塩が嫌いで」


社長は私を優しい目で見つめた。


「実はいいメキシコ料理店があるんだ。いいマルガリータもある。そこに一緒にいかないか?」


社長は車を出すと夜の街を走りだした。私はしばらくチェックしていなかった携帯を取り出した。


すると佳奈さんから着信が沢山来ている。メッセージも沢山来ていたので急いで読むとポテトの容体が急変して今病院にいるという内容だった。しかも肺に水が溜まりこれ以上の延命はできないとも書いてある。いよいよ恐れていた時が来たのだ。


「社長、申し訳ありませんがここで降ろしてもらってもいいでしょうか?」


私は社長にそう言いながら急いで最短で動物病院に行ける方法を調べる。悲しくて涙が出そうだ。


「どうした?何か忘れ物でもしたのか?」


社長はそう言いながら道路から視線を少し外して私を覗き込んだ。でもその途端、すぐに車を道路脇に止めた。


「おい、大丈夫か?顔色がすごい悪いけど具合が悪いのか?」


「いえ、具合が悪いわけじゃないんですが、少し急ぐ用事ができて…」


私は社長に手短く事情を説明した。すると彼はすぐに車を発進させた。


「いいから場所を教えて。今連れて行くから。ほら電話番号をナビに入れて」


社長は親切にも車を動物病院の方へ走らせた。私はその間に佳奈さんにメッセージを送って、すぐにそちらに向かうと伝える。


しばらくして動物病院についた私は、社長にお礼を言うと急いで中へ走った。


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