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#異能力
ここと🌹🫶 @低浮
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#異能力バトル
名無の男2
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都内 航空自衛隊基地
司令本部内 地下通信室より緊急発信
半刻前にEMP攻撃を確認、
継続して広範囲電波妨害を受けている。
基地内で防毒面を装面した、
正体不明の敵戦闘員と交戦中。
死傷者多数の為、現在は避難を優先している。
駐屯していた部隊がコンタクトしたが、
第二から第五までの全てが壊滅。
敵は一人、たった一人だ!
単身で滑走路に立って大立ち回りしてやがる!
噴射機構付きの火炎放射器型水鉄砲で
緑の液体を基地内に散布し続けている。
調査の結果、強い酸性液と判明。
人間も建物も、
アスファルトも金属も関係なく、
接触部を一瞬で溶かす強酸のようだ。
おかげで基地が穴だらけだ。
恐らくあれが……、
防衛省から特記勢力と通達されていた
『少数派』の構成員だろう。
警戒しろ、上からの情報が正しければ、
奴らには理屈も既存戦術も通じない。
我々が出来ることは時間を稼ぐことだけだ。
後のことは、噂の”専門家”頼みだ。
「――――成程、これは空自の手に負えないのも頷ける。 プロファイルされていない未確認の『少数派』構成員。 単身で自衛隊基地に侵入し、酸性液を振り撒き人も兵器も何もかもを溶かす力を持つテロリスト」
「ヤア……、お次は人型ロボットですか。 まあ何だっていいですよ。 話せるみたいだから聞きますがね、そこに倒れてるの、新設されたレーダー探知機塔って認識でいいですかなア?」
ガスタンクを背に積んだ、ミリタリーグリーンのガスマスク男が視線を向けた先にあるのは、元はパラボラアンテナだったはずの瓦礫の山だ。
対仮面犯罪専用権能探知兵器『LIBRA』。
仮面犯罪の現場で必ず確認されている波長をキャッチし発生源座標を特定する、三日前に投入されたばかりの新兵器だ。
『少数派』からすればこの存在を面白いとは思わないだろう。
破壊工作をするのも納得できる。
「私は内閣府直属、公安特殊犯罪対策任務課『 P.R.V.L.M.』、捜査副本部長の7thだ。 ガスマスク、覚えなくていい」
「特務課ですか! あの方から聞いていますよ、私たちを逮捕しようと躍起だとかア。 初めまして7th、私はオル・コープス・デリッチ。 親しみを込めて、リッチーとお呼びください」
「親しみなど微塵も感じてやるつもりはないが、自ら名乗った点は評価してやろう。 潔い奴は嫌いじゃない」
「それはそれは。 ロボット様に褒められるのは光栄ですな。 その側頭部の機構、私の声に同調して接合部が点滅しているようですが、音声記録も……、いえ、犯罪データベースとの照合までしていますね?」
「評価点が増えた。 犯罪者にしては察しも良いようだ」
バイザーの裏側に複数のUIが展開される。
照合結果 : 一致なし
ガスマスク男の容姿、体格、挙動、音声波形は完全未確認のものだ。世界中の犯罪者を一括管理するデータベースに未登録ということは、今回が初犯または過去の犯罪で未逮捕・監視カメラなどの装置にも捕捉されていない人物であるということだ。
どちらであれ、権能という謎の力を扱う犯罪者を相手に無情報のまま対峙しなければならないというのは、かなり難度の高い挑戦となるのは間違いがない。
「リッチー、お前には黙秘権がある」
「権力告知を口にするとは。 ロボット人間の7th君はこの私を拘束するつもりでいるみたいですが、それは不可能。 私は逮捕されない。 理由は、逮捕される理由がないからだ」
「自衛隊基地内に不法侵入した上、毒液を噴射して死傷者多数。 こんな事態を起こしても逮捕される理由がないと?」
「はい、一片の不安もなく」
リッチーは両手の火炎放射器型の水鉄砲から高圧の毒液を噴射して、
「辺りを見てみなさいよオ! 事件というものは犯罪の現場・遺体がなければ立証不可! こんな穴だらけの中で、この私を! どうやって罪として問うというのでしょオオ! 私の『存在隠滅』の毒に接触した対象は、超強酸に溶けゆく中でその存在ごと世界から消えていくのです。 数時間後には、もう誰も溶けた自衛隊員のことも、基地司令部のことも、この滑走路も、あのレーダーのことも憶えていない。 それは忘却ではなく、ただただ最初から知らなかったという事実に書き換えられるのですよオオ! 勿論、7th君がその頭のカメラで録画している映像も再生不可でエラーを吐くことになるでしょう! 私の後ろに映るものが、この世に存在しないという事実調節のためにねエエ!」
「毒液で溶かした対象の世間認知を消す権能とは、全くもって……、厄介な異能だ。 我々サイドにいればどれだけ有用な力だったか」
腰部のメタル装甲に差された拳銃を引き抜き、そのまま躊躇なく引き金が引かれる。
機械の剛腕が拳銃の跳ね上がりを抑制し、ほとんど無反動の指切り連射を実現させている。
しかし。
弾倉が空になるまで、リッチーにはたったの一発も直撃することはなかった。
狙いは完璧だった。
15メートルもない距離であれば機甲にインストールされている射撃補助機能により敵対象の人体正中線を的確に狙撃することが可能なはずだったのだが、それでもリッチーにはたったのひとつも風穴が開くことはなかった。
その理由は、理解こそ不可能であれど、すぐに事態を把握することが出来た。
弾丸を受けると波紋を起こしてその形状を現す、リッチーを中心に展開されたドーム型の毒液の壁が弾を阻んでいたのだ。
「私は超強酸のカプセルの中にいます。 半径5メートル。 毒液に満たされた半球が常に展開されているのですよオ! 銃弾も手榴弾も火炎も鉄剣も、私に触れる前に全て溶けて消えてしまうのですよオオ!」
「……駐屯していた陸自が壊滅させられたのはそのカプセルが原因か。 加えて、消防ホース程の勢いで放射される超水圧カッター噴射機、毒液の水鉄砲。 オル・コープス・デリッチ。 お前をAランク以上の仮面権能犯と判定する」
「Aランク。 全体分布を知らない限りは何ともコメントし辛いところですが、お褒めに預かり光栄ですよオオッ!」
火炎放射器のようなバレルから一直線に放たれる緑の毒流が、二本とも7thに向けられた。
長尺の破壊直線が鋏のようにクロスする。
その交差点を見計らった7thの無機質な体躯が、背と足裏から吐き出るジェットフレイムに押されて空へ浮いた。
「ほう! すごいですね、飛べるんですかアア! まるでSFみたいですよオ!」
「私は人類の叡智を尽くした最新鋭技術の塊だ。 この程度の大道芸なら幾らでも見せてやれる」
「ウハハハハッ! 良いですねエ、是非ともお願いしますよオ!」
空をジェット噴射で飛び泳ぐ7thを追尾するように、毒液のレーザービームが空へ向けて放たれ続ける。
手のひらに組み込まれた機構から断続的にジェット噴射をしてドリフトを効かせ、急旋回に急上昇、急降下。重力無視した違法ジェットコースターばりの空中回避でリッチーの直上まで飛翔する。
「コンカッションランチャー『LPAC』。
A1-A8、発射準備」
7thの両肩から鉄の棚が盛り上がり、小型のロケット弾頭が顔を見せる。
「発射」
鉄の棚が発火した。
目下へ向けて、計八発の小型ロケット弾が大声をあげて急行する。
そして、着弾。
小規模かつ局所的な爆炎が重なる。
「全弾命中。 だが……、依然効果を認めず」
7thのバイザーカメラ越しに映る地上には、爆煙の中で毒カプセルの中で余裕そうに立ちつくし、こちらを見上げるリッチーが確認できていた。
爆発は毒液がほとんど吸収し、溶かし、中にいるリッチーまで届かなかったようだ。
「垂直方向からの爆撃すら通さないとは堅牢な……、いや、無慈悲な包容力とも言える」
「ロボットなのに面白い表現だ。 でも記録メモリが良くないらしいですね。 先ほど言いましたよ、銃弾も手榴弾も火炎も鉄剣も、付け足すのなら勿論ロケットも! 私には効かないとねエエ!」
「どうやら、その様だ」
足腰のジェット噴射を弱め、バランスを取りながらゆっくりと着地する。
辺り一帯は既に穴だらけに加えて曲線だらけ。
毒液放射の痕跡があらゆる床や建物に刻まれていた。
「私は『少数派』の中でも、あの方の目に掛けられている有望株。 参謀にすら恐れられた掃除屋のリッチー。 ロケットの数発、軍の大隊、どれだけの仮面持ちを束ねたとしても私を倒すことなど出来ない。 拘束など以ての外ですよオ」
「随分と自信家のようだが、二つ名が掃除屋とはな。 ただの雑務、ゴミ処理人じゃないか」
「ウハハ!! そうかもしれませんねエ! あの方の考えは私たちには到達できない高次のものですからア! 私は目の前の仕事に、ゴミ処理に徹しましょう。 クズ鉄ジャンクの7th君、弾丸もロケットも瞬時に溶かす超強酸で、その御自慢の最新鋭ボディも液体にしてやりますよオ」
「……ほう、お前の毒液なら私を跡形もなく溶かせると?」
当然です、とリッチー。
「ボディだけでなく、その存在ごと消してあげますよオ。 日本には物に魂が宿るという思想があります。 もしアナタもその例外でなければ、そのボディの中には魂が潜んでいると言えるでしょう。 つまりその装甲の中身が毒液で満たされれば、御自慢のボディは魂が溶けるまで揺らし続けるだけのカクテルシェイカー型の強酸風呂に成り果てる。 中に人が入っているのか、ただの精密機械かなんてどうでもよくなる。 最後には……、内も外も、魂も塊も、全部溶けて何もなくなるのですからねエ」
「……ほう。 悪趣味だが面白い、私もお前に興味が湧いた」
7thは銃も取り出さず、静かな機械音を響かせながらリッチーのドームへと近づく。
その様子からは戦意は感じられない。
それは、自分から嬉々として死に向かっている挙動だった。
「私を……、魂ごと殺してくれるのだな?」
コメント
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「ああ、この第63話、めちゃくちゃ熱かったです……! リッチーの『存在隠滅』っていう権能の理屈がすごくしっかりしてて、だからこそ“立証不可”っていうタイトルの意味が重く響きました。自衛隊基地が溶けてゆく映像的な怖さと、7thのロボットらしからぬ「私を魂ごと♡♡♡てくれるのか」という最後の一言、あそこ、ゾクッとしました。機械だからこそ逆説的に“魂”を求めるような哲学めいた問いかけが、このシリアスな戦闘シーンにすごく合ってました。」