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「え……っ?」
「はい?」
「んんん?」
目の前で力なく横たわる巨大ナメクジを見て、
リザードマンのような亜人たちはポカンと
口を開ける。
「これでもう動けないと思うけど、
触りたくないな、コレ」
自分がそれを見下ろしていると、
「グ、巨大ナメクジが!?」
「一体どうやって―――」
「死んだ、のか?」
そう戸惑う彼らに、黒髪の短髪に、
犬耳・巻きシッポの獣人族の少年が、
「もう安全です。
シンさんが処分しましたから。
もしあれが邪魔なら、森の外にでも
捨てて来てください」
そう言われたリザードマンたちは、何人かが
すぐに反応し、
「はっ、はい!!」
「直ちに!!」
すぐに複数の人たちが巨大ナメクジの周囲に
集まり、
「あ、動けなくしましたがまだ死んでは
いませんので。
あとは煮るなり焼くなり、好きにして
ください」
その処分を彼らに任せると、私たちは改めて
事情を聞く事にした。
「ああ、なるほど……
倒せないわけではなかったんですね?」
「は、はい。
そうなのです。
塩に弱く、火魔法でも倒せるモンスターでは
あったのですが―――
何せここはコモロの自生地です。
どちらもその手段は使えず……」
コモロ、というのがこちらの世界での
トウモロコシの名称らしい。
そしてあの巨大ナメクジ……
その弱点が塩という事は知っていて、さらに
火を使えば普通に倒せたらしいのだが、
その手段―――
火や塩は貴重な食料であるコモロの生息地では
当然使う事は許されず、
「かと言って、打撃や剣での攻撃は、
アイツにはほとんど効かないのです」
「アイツもそれを知ってか知らずか……
我が物顔でコモロを食い荒らしやがって」
「正直八方ふさがりでしたが、
倒してくださり感謝いたします!!」
頭を下げる彼らの後ろに、巨大ナメクジに
食われたであろう、コモロの無残な姿が
あちこちに散見する。
「それで―――
今、コモロはとても貴重という話でしたが。
足りているのですか?
子供の食べる分とかは」
私がそう質問すると、リザードマンたちは
先ほどまでの明るい顔から一気に暗くなり、
「かなり厳しいかと……」
「内戦もありましたし、ちゃんと食料が
俺たちのような亜人の子供にまで回って
来るかどうか」
ああ、そういえば―――
『あー、ンなものが入っちまってたか』
ってあの時の店主が言ってたっけ。
つまり普段は買い付けないような、
規格外の商品が混じっていたという事。
内戦が市場にまですでに影響を及ぼして、
そういう品でも取り引きされていたとしたら……
そこで私はティーダ君に耳打ちして、
「(土精霊様を連れてきた方が
いいかも知れません。
緊急事態のようですし―――)」
「(それはわかりますけど、どうして僕に?)」
「(通常の手続きなら船で来てもらう事に
なりますけど、そんな時間は無いでしょう。
ですが、フェンリル様に口添えしてもらったと
言えば……)」
そう言うと彼は私の言いたい事を察したようで、
「なるほど。そういう事情でしたか。
では僕の方からルクレセント様に
お願いしてみましょう」
獣人族の少年の言葉に、リザードマンたちは
顔を見合わせ、
「お、お願いとは?」
「食料を支援してくださるので?」
「し、しかし―――
巨大ナメクジを倒して頂いた上に、
そこまでしてもらうのは」
動揺する彼らにティーダ君は、
「先ほどのお話では、このままだと
子供たちが飢えてしまう可能性が
あると判断出来ます。
そもそもルクレセント様がこの大陸に
関わったのは……
辺境大陸に押し寄せた大船団の中に、
魔物のエサ用とされた幼子の奴隷が
積み込まれていたからであって―――
とにかくお話だけでも通してみましょう。
何か考えてくださるかも知れません」
すると彼らは両手を地面について、
「な、なにとぞ!!」
「よろしくお願いいたします!!」
そこで話がまとまったと思った私は、
「あ、それと……
またあの巨大ナメクジが出て来たら
困りますよね。
ちょっと試してみたい事があるのですが、
巨大ナメクジを運んだところまで案内して
もらえませんか?」
再びあのような巨大ナメクジがここに
出現した時、私がいなかったら何も出来ない、
では困るだろう。
土精霊様に土壌改良や豊作にしてもらった
ところで、また被害が出ないとも限らないし。
そうして私とティーダ君は―――
リザードマンたちが住まう集落まで向かう
事となった。
「改めて見ると大きいですね」
村と町の中間くらいの規模の集落に来た
私たちは、例の巨大ナメクジが横たわって
いるところまで案内され、
「まだ生きているぞ」
「フェンリル様の従者が倒してくれたらしい」
「助かった……
これで、今以上の被害は出るまい」
そうギャラリーたちが話す中、
「どうするおつもりですか?」
「このまま、燃やして処分しようと思って
いたのですが―――」
処分担当と思われるリザードマンが2人、
不安そうに聞いてくるが、
「いえ、対応方法があるんですよ。
塩も火も確かに有効なんですけど……
木灰ってありますか?」
「灰、ですか?
まあそれなら―――」
私が指定すると、近くの家から持ってきたのか
数分もしないうちにそれが運ばれ、
「ではそれを、この巨大ナメクジにかけてみて
ください」
「えっ? は、はい」
2人が恐る恐る木灰をその巨大な体に
ふりかけると、
動けなくしているはずの巨大ナメクジは、
灰から逃れようとするかのように、
ビクビクと体を震わせる。
そして灰をかけられたところは、みるみるうちに
溶けていって、
「こ、これは……」
「こんな事で巨大ナメクジが」
ギャラリーたちもその効果には驚いたようで、
「塩や火はあの場所では無理でしょうが、
これを使えば大丈夫でしょう。
少なくとも追い払う事は出来ます。
もしまた、あそこにこれが出現したら、
木灰を用意しておけば」
コクコクとリザードマン2人はうなずいて
いたが、ギャラリーが騒がしくなり、
「おっ、おい!」
「あれ、ドラゴンじゃないか!?」
「我が国のファルコンではなく!?」
私も見上げると、そこには見知ったドラゴンが
上空を飛んでいて、
「大丈夫です。
多分、この方の妻ですから。
恐らく、ルクレセント様もいらっしゃって
いるのでしょう」
ティーダ君の説明に、
「え? という事は―――」
「フェンリル様がいらっしゃるという
事ですか!?」
「こ、こうしてはいられません!!
すぐに歓迎の準備を……!」
と、彼らは慌ただしく動き始めようと
するが、
「落ち着いてください。
とにかくまず、ルクレセント様に
事情をお話ししますから―――」
そして私と獣人族の少年は、お互いの妻が
降りてくるのを待った。
「ここ、これはフェンリル様!
ようこそ、このような場所に降臨して
くださった!
こんな辺鄙な村では何もおもてなし
出来ませんが、精一杯の歓迎をさせて
頂きますので……!!」
恐らく、ここの長老であろう年老いた
リザードマンが、ロングの銀髪に切れ長の
女性―――
人間の姿のルクレさんと対峙するも、
「話はティーダより聞いておる。
歓迎どころではないという事もな。
ただでさえ少ない食料を我に回して、
それでさらに子供たちが飢えるとしたら
本末転倒であろうが」
「そそ、それは……」
そう対応しているルクレさん・ティーダ君
2人組を遠目で見ながら、
「またシン、何か倒したの?」
「まあシンがいれば問題ではなかったで
あろうが」
「おとーさんだもんねー。
たいていは大丈夫だし」
童顔の女性に、欧米モデルのような
目鼻立ちのドラゴンの方の妻、
そして黒髪ショートの娘が事情を聞いて
呆れ半分で語る。
何でも彼女たちは、ショッピングで
見回った後―――
私たち夫組よりも先に、ロックウェル家の
お屋敷に戻ったらしい。
これは、常にフェンリル様に侍る羽狐たちには、
今回ばかりは同行を遠慮してもらい、屋敷で
待機してもらっていたので、
あまり彼らや私たちを待たせては悪いと、
なるべく早く帰るよう心掛けたのだが……
こちらがまだ帰っていなかった事で、
市場に聞き込みに行ったところ、どうも
近くの森へ向かったようだとの情報を得て、
私たちを探しに飛んで来たのだという。
「んで?
どうするつもりなの?」
「土精霊様に来てもらおうと思う。
その辺りは、あっちの2人に任せて
あるから」
メルの問いにそう答えると、
「ああなるほど。
フェンリルであれば、たいていの事は
神獣だからで通るものな」
「じゃあボクたちが探しに来たのは、
ちょうど良かったのかな?」
続いて、アルテリーゼとラッチがうなずく。
そして交渉の方は、とそちらへ振り向くと、
「ふむ、そういう事であれば―――
土精霊に来てもらうか。
今は辺境大陸におるが、すぐ来るであろう」
「う、海の向こうから……ですか。
来て頂くのはもちろん嬉しいのですが」
まあ別の大陸からやって来るなんて、
最悪、一ヶ月くらいを想定している
だろうしなあ。
老人は微妙な表情になるが、
「ルクレセント様のお願いであれば、
断られる事は無いと思います。
多分、明日には来ると思われますが」
ティーダ君の言葉を聞いた途端、
長老や他の地位が高そうなメンバーも、
ポカンと口を開けたままとなり、
「我と誰だと思うておる?
そなたらが神獣と申す存在じゃ。
それに幼子の命がかかっておるでな。
時間をかけるつもりは毛頭ない。
すぐに連れて来る。
まあ、待っておるが良い」
こうして私たちはいったん、ロックウェル家の
お屋敷へと戻る事になった。
「こ、こんな―――」
「たった1日でこれだけの量が!?」
「これなら、子供たちに腹いっぱい食わせる
事が出来る……!」
翌日、コモロの生息地の森は―――
まるで専用の畑かと思えるくらいの、
トウモロコシが所狭しと実っていた。
「フェンリル様!!
ありがとうございます!!」
頭を下げるリザードマンの若者に、
「礼なら我ではなく土精霊にな。
我はただ彼に来てもらっただけじゃ」
そう語るルクレさんの隣りには、
緑色の少し長めの髪をなびかせた、
エメラルドグリーンの瞳を持つ少年がいて、
「ここ一帯の、この植物に頑張って
もらいました。
日頃から害虫や獣から守ってもらい、
あなた方には感謝しているとの事でしたので」
土精霊様は植物を意思疎通が出来る。
そして彼らの意を伝え、
「しかし、コモロだけではこういった
事態が起きた際、不安が残ります。
もし出来るならば、他の農作物も
育ててみた方がいいでしょう」
そして精霊の少年はとある植物を
取り出し、
「これは、『奴隷殺し』と呼ばれている
ものです。
基本的に手はかかりませんし、
植えておけば勝手に増えていく
野菜ですので」
と、彼らに『奴隷殺し』を紹介したところ、
「『奴隷殺し』……ですか」
「クアートル大陸の?
あまりいい噂は聞かないのですが」
「それに大変危険だと―――」
どうやら、その悪評はこのフラーゴル大陸にも
届いていたようだ。
確かに当初は禁忌の食材と呼ばれていたのだが、
(■178話
はじめての えっけん(らんどるふていこく)
参照)
「危険な種類もいたようですが、
こちらは無害なただの野菜ですよ」
そう土精霊様が説明するも、彼らは
及び腰で、
「へー、そうなんだー」
「こちらの大陸では、そのような話は
聞かなんだがのう」
「こっちじゃ、『奴隷でも死ぬほど
お腹いっぱい食べられる』と言う意味で、
『奴隷殺し』って言っているけどねー」
(■258話 はじめての よていび参照)
と、家族がビジネストークで話し、
「それに味も良いのだ。
まあ、一度食ってみるがよい。
ちょうど料理人もいる事だしのう」
「そうですね。
食べてから決めてもらった方が」
ルクレさんとティーダ君も続くと、
「ま、まあ……
フェンリル様と土精霊様がこう
仰っておられる事だし?」
「とにかく、まずはこの大量のコモロを
持ち帰ろう」
「そうだな。
後は長老たちに決めてもらって」
そう言いながらリザードマンの若者たちは、
それぞれ背中にコモロを担ぎ始めた。
「あ、甘い―――
何ですかこのトロっとしたスープは!」
「それにコモロにもよく合う!」
「コモロにこんな食べ方があったなんて」
リザードマンたちが、私の作った料理に
舌鼓を打つ。
集落に来た私はさっそく、『奴隷殺し』で
コンソメスープやポタージュを作った。
どういう理屈でそうなるのかはわからないが、
『奴隷殺し』は、
細かく刻んだものを煮込むと、地球でいう
ところのコンソメスープに、
すりおろして煮込むとポタージュになるという
特徴があった。
(■180話 はじめての せんぞがえり参照)
そしてそのポタージュとコーンは当然、
相性も非常に良く……
「おいしーい!」
「もっとちょーだい!」
「おかわりー!!」
と、リザードマンの子供たちにも大変人気で、
土精霊様もそれに混じって一緒に食べている。
「いやあ、こんなに粒が簡単に取れる方法が
あるなんて」
「コモロは味もいいし保存も効くんですが、
粒を取り出すのが面倒でしてね。
まあ我々は、直接かぶりつくのでそれでも
問題は無かったんですが」
一方で、料理を手伝ってくれた
リザードマンたちが私に頭を下げる。
地球では三大穀物とされている
トウモロコシだが、こちらの世界で
敬遠されていた理由はこれで、
小麦や芋に比べ、粒を取り出すのが
面倒という欠点があった。
そこで私が、おばあちゃんの知恵袋的な
感じで―――
いったん茹でた後、箸やスプーンで
削ぎ落す方法を伝授。
コーンはその歯ごたえがアクセントとなり、
味もさる事ながら、サラダやラーメン、
肉料理に添えるなど多様に使えるので、
簡単に粒を取り出す事が出来るようになれば、
用途は広がっていくだろう。
「では、これを10本ほど頂いても
構いませんか?
それと、この美味しさと扱いが容易に
なった事を知れば、人間と交易出来る
ようになるかも知れませんので……
もし何か揉めるようでしたら、
ロックウェル家の名前を出してください。
そちらにはすでに、こちらから話を
通してありますので」
「な、何から何まで恐れいります」
ペコペコと頭を下げるリザードマンたちに、
私も反射的に頭を下げる。
実際、屋敷に戻った時ベルマイヤさんに、
コロモ=トウモロコシの商売の可能性について
伝えたところ、
『シン殿が言うのであれば間違いありますまい』
と食いついて来て、
さらに、こちらでの東の村原産の魚醤、
元祖鬼人族の醤油や獣人族特産のワサビなど、
いわゆるブランド路線でリザードマンたちの
トウモロコシを保護・支援して欲しいと申し出た
ところ……
『そのアイディア、頂きますぞおおお!!』
とかなり乗り気になっていたので、今後、
もしトウモロコシがあちこちで栽培・増産される
事になっても、彼らは大丈夫だろう。
「でも何か意外だねー」
「?? 何が?」
メルがふと疑問を口にしたので、つい
聞き返すと、
「いや、見た目からするに水辺の種族では
ないのか?
ラミア族や人魚族のような―――」
「うん。
お魚でも獲って暮らしていそうな
感じに見えたんだけど」
その後にアルテリーゼとラッチが続く。
確かにリザードマンといえば水棲というか、
水に強いというのが定番だ。
それが、地上の穀物に頼っているとは思いも
よらなかったのだが、
「いえ、我々も魚の方が旨いとは思いますが」
「??
でもザハン国は海が近いですし、
魚は大量にいるのでは」
いつの間にか近くに来ていたティーダ君が
そう話すと、
彼らは顔を見合わせて話しにくそうに
していたが、
「何か他に困った事でもあるのか?
言うてみよ。
せっかく助けてやったというのに、
もし後で他にも困り事があったとあれば、
後味が悪いでな」
そう言われたリザードマンたちの1人が
意を決したように、
「……まず、我々は海には入りません。
確かに生活の大半を水中で過ごしますが、
それは川や湖に限られます」
なるほど、淡水性という事かな。
彼は続けて、
「そして我らは、近くの大きな川を
狩場としていたのですが―――
そこに厄介な魔物が現れまして。
しかし、コモロさえあれば生活出来ますし、
また水中という事で……
これ以上フェンリル様の手を煩わせる事も
無いと」
申し訳なさそうに話す彼に、ルクレさんは
両腕を組んで、
「水中か―――
我の雷魔法さえあれば一発であろうが、
被害がのう」
「魔物は倒せるでしょうが、他の生き物も
無差別に殺傷してしまうでしょうね。
その魔物は常に水中にいるのですか?
いったいどのようなものなのでしょうか」
神獣の彼女の後に、夫(予定)の獣人族の
少年がたずねると……
「申し上げにくいのですが、その魔物も
雷魔法を使うのです。
なので倒すのであれば、それ以外の方法で
お願いしたいところなのですが」
リザードマンの話を聞いて、家族そろって
微妙な表情になる。
そりゃそうだよなあ。
雷魔法で被害が拡大している感じなのに、
それより強力な雷魔法で解決するのは、
元も子もないというか何というか。
自分が無効化すれば一番いいんだろうけど、
今後、似たようなケースが出た時に彼らで
解決出来る方法じゃないと―――
それに電気を放つ生き物って、地球にも
いるんだよなあ。
どこまで無効化が通じるか……
と思っていると、
「あの御仁に頼んでみたらどうだ?
我が直接連れてくるゆえに」
というルクレさんの言葉に、私たちも
リザードマンたちも顔を見合わせた。
「何でぇ、久しぶりに大物とヤれると
思ったのによ。
話を聞くにそいつは多分、電ウナギか
電ナマズだろ。
あんなの、コツさえつかめば簡単だって」
翌日、リザードマンたちに案内された河川の
ほとりで、
木製の槍を持ちながら、アラフィフの
白髪の混じった筋肉質の男性がぶつぶつと話す。
ウィンベル王国、公都『ヤマト』の冒険者ギルド
支部長にしてゴールドクラスのジャンさんだ。
「ま、まあそう言わないで」
「出来ればそのやり方を、こちらの方々に
教えてあげて欲しいなーって」
私とメルが拝むようにしてギルド長に頼む。
あの後、一度『ゲート』で公都まで引き返し、
ジャンさんに事情を説明すると―――
バトルジャンキーである武器特化魔法の
使い手は、ろくに話も聞かずに喜び勇んで
ここフラーゴル大陸へ直行。
そして現地でリザードマンたちと合流後、
魔物のいる川まで案内してもらったのだ。
「お主に取っては簡単であろうがの。
実際に手本を見せてやった方が早いで
あろう?」
「ジャンおじさん、ギルド長だし教え方も
上手だし」
と、アルテリーゼとラッチが母子そろって
彼をフォローすると、
「まあやり方を知っているのと知らないのと
では、雲泥の差があるだろうしな。
そう難しい事でも無いからよっく見ておけよ」
ジャンさんは説明しながら、フトコロから
何か取り出す。
「それは何だ?」
「お金……でしょうか」
ルクセさんとティーダ君が首を傾げると、
「金じゃなくてもいいけどな。
要は金属でさえありゃあいい。
まずはこうして―――」
指先で、恐らく銅貨だろうがそれを指先で
弾くと……
クルクルと回転しながら川、といっても
端まで30メートルはありそうな大きな
河川の水面に落ちていき、
しばらくすると水中がピカッと光る。
「お、やっぱり思った通りか。
これを何度か繰り返すんだ。
一度雷魔法を使うと、再び使えるように
なるまで一定時間開くから。
で、これで相手の位置を把握していって」
ギルド長の説明通り、光る位置がどんどん
場所を変え、やがてそれは水面近くにまで
上がってきたと思うと―――
ザバァ、という音と共にそれは姿を現す。
「うわっ!?」
「こ、コイツが!?」
「な、何てデカさだ……!!」
水上に出てきたそれは、水面からの高さだけでも
3メートルくらいはあり、
それを見たジャンさんは平然としながら、
「で、こうして出てきたところをだな。
弓でも槍でも何でもいいが、金属製以外の
武器で」
彼が槍をふりかぶると、一瞬後でそれは
手から離れ、というか放たれ、
「ギ……?」
その電気ウナギの胸というか腹に、大きな
穴が開いて、
そのまま巨大な魔物は、大きな身を水面に
ぶつけて、水飛沫を上げた。
それを見ていたリザードマンたち他、
私たちもポカンとしていたが、
「とまあ、こうやって倒すんだ。
どうだ? 参考になったか?」
『いや、なるわけないでしょ……』
というリザードマンたちの表情を察した私は、
「あっあの!
彼は『武器特化魔法』の使い手ですのでっ」
「1人じゃなく、なるべく大勢であたってねー。
あんなの普通に無理だから!」
「数さえいれば何とかなるであろう。
というか、あんな大物、多分もういないで
あろうし―――」
と私と妻2人でフォローを入れる一方、
「おー、やっぱりジャンおじさん、すごーい!」
「さすがナルガ様と剣で互角以上の勝負を
したお方……!」
(■48話
はじめての 3たい3 さいしゅうせん参照)
「せっかく仕留めたのだしどうしようかのう。
というか食えるか、これ?」
「あー、ラージ・イールと変わらないと
思うぜ?」
向こうではラッチとティーダ君、ルクレさんが
ジャンさんと一緒に―――
獲物の処分について話し合っていた。
82
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