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本日も本日とて、居酒屋「天神鳥(てんじんちょう)の羽」は開かれる。
店員はいつも通りの神羽(じんう)、名論永(めろな)、雪姫(ゆき)に加え、バイトである夏芽も出勤する日だった。
4人で開店準備を整え、神羽と名論永はホール、夏芽と雪姫はキッチンで待機する。
「いやぁ〜、今日も新メニューのために家で料理作ってたんすけどぉ〜」
と神羽がカウンターに肘をつきながら言う。
「ダメだった?」
「いやぁ〜。美味かったんすよ?でも手間とコスト考えると、ねぇ〜?」
「あぁ〜。オレもキッチンやってたから、手間は、ねぇ」
「っすよねぇ〜?雪姫(ゆきひめ)にごねられますからねぇ〜」
「そういえば、沖縄料理をメニューに加えるって件は、どうなったの?」
「あぁ〜…。金城崩(かなしろほう)さんがシフトがあって都合良いときに
早めに店来てもらって考えるー予定ではあるんすけどぉ〜…。
そうだ。そのときめろさんも来てくれないっすか?」
「オレも?」
「いやぁ〜、自分1人で食べて決定するのはあれなんで」
「神羽くんのお店だから別にいいんじゃないの?」
「まあぁ〜。でもオレが始めた店ですけど、今やめろさんと梨入須(ないず)の店でもあるんで」
とニカッっと笑う神羽。
「じゃあ梨入須さんも呼んだほうがいいんじゃない?」
「…まあぁ〜。でも梨入須出不精だからなぁ〜…。仕事以外で店来てくれるかどうか…」
「あぁ〜…」
なんて神羽と名論永が話す中、キッチンの夏芽と雪姫はというと、2人ともスマホをいじっていた。
夏芽はいろいろ話そうと思っているが
雪姫のほうが、まるで見えない氷の城に閉じこもっている氷の女王のようで話しかけづらいのだ。
「あっ…」
話しかけようとして「あっ」っと声を出したが、宙に消えていく。またキッチンに沈黙が訪れようとするが
「あのっ」
と思い切って声を出した。
「は、はい…。なんですか?…」
スマホから視線を逸らすが、夏芽と目を合わせる様子はない雪姫。
「な、梨入須さんはご趣味とかはなんなんですか?」
話しかけたはいいものの、話す内容を決めておらず、緊張したお見合いみたいな質問になる夏芽。
「趣味…。特に…ないです…」
「あっ…」
会話が終わった。
「おっ、音楽とか聴きますか?」
しかしめげない夏芽。
「はい…。聴きます、けど…」
「なに聴かれますか?好きなアーティストとか」
「…。特にいないです、けど…最近は聴いてるのは「&Lock(アンロック)」とか「家守と夜守」とか…」
「おぉ!「&Lock」に「やもやも(「家守と夜守」の略称)」!
「&Lock」はそうですねぇ〜。最近めちゃくちゃ人気ですからねぇ〜。
韓国系の独特の、癖になる曲調で思わずリピートしちゃう曲ばっかりですよねぇ〜。
そして、まさかの「やもやも」。梨入須さん「やもやも」聴かれるんですね。
男性2人の「やもやも」。メロウな曲調が特徴で、歌声も曲調に合ってるんですよね。
甘い歌声で、夜に溶け込む、夜空に遊ぶヤモリってのがコンセプトなお2人なので
すごく合ってるんですよね。お耳に良いって感じの方々です」
と饒舌になる夏芽。
めっちゃ喋るじゃん
と思う雪姫。
「あっ。すいません。ペラペラと」
と申し訳なさそうにする夏芽。
「…す…好きなんですか」
雪姫から質問が来て、パアァ〜っと嬉しくなる夏芽。
「はっ、はい!音楽全般が好きで、アイドルもボーイズグループやガールズグループ
ソロのアーティストさん、バンド、海外も日本も」
とキラキラした目で言う夏芽。相変わらず夏芽のほうを見てはいない雪姫だが
広いな
と思った。
「たとえばぁ〜「Super Visual」とか「&Lock」「MVP」「BeSicks」「AGP」
「A childish adults」「LIGHTING RIGHTS」「JEWELRY BOYS」
「Talkative eyes」「IMI」「The Circle of Angels」「WHOOHM」「9SIXIS6」「LCS」
「ULTRA GREAT DELICIOUS WONDERFUL SUPERSTAR」「BEST or BEST」
「Cleeaan」…あ、最近は「Clean boyz」になりましたけど。
あと「Shadow Tickets」「Cowoforer」。えぇ〜ここまでがボーイズグループ
ま、ボーイズグループではないアーティストさんもいらっしゃいますけど
一応全員男性で構成されているグループ。
ガールズグループが「Envied Model」「WESICK」「withlife」「※fictions※」
「Envied Model」「RIZZ」「Totes」「祭之華」「風ノ音」
男女ミックスが「Beautirul」「Cassos take ALL」「“Reveal the truth”MEDICINE」「古都生」「53」
「y’all」「WALE」「OWLs」「CAT FAMILIA」「UNDER THE MOONLIGHT」
「Colorful wing crow」「PEACE piece PEACE」「鬼はん」「社会の重要な歯車」
ネット出身というか、個性的な雰囲気のアーティストさんは
「来世から仕事します!!」とか「月光-Gecko-」「Diamond Bullseye」「Crystal peanut」
「More fair」「うん」「AWSOME OOPARTS」「replicest」「True King」
「NSSP」「Be 銀河」「A phantom tree」「ZZZzz夢の中zzZZZ」
「IKYKY」「Ring -win-Ring」「家守と夜守」「宝背亀」「SPECULO」
でバンドがー「1 Sturdy arrows」「FACTs.」「I want to be jellyfish」「House of owl」
「HEARTFUL WRONGANZ」「Pawn beat Everything」「魔性の果実」「魅惑の果実」
「カラフルなクラゲたち」「ANGEL or DEVIL」「Goals」
あとぉ〜、アイドルでいえば「Pretty of Dead」「KAWAII scene creators」
「The CUTEST in the planets」「愛嬌ファーストクラス」
「かわいさヘビー級チャンピオン」「Art wizards」とかですかね。私が聞いてるのは。
あとはぁ〜海外で言ったら「Own Direction」「Lucky Ducky」
「3 World Map Editors」「Rebuild the culture 」「FReE」…」
その後も続々とアーティスト名を言い続ける夏芽。それを聞きながら
暗記力すごっ。テストとか点良かっただろうなぁ〜
と全然違うことを思っていた。
「パッっと出るアーティストさんはこれくらいでしょうか」
と「まだ出るかな?」と斜め上を見て考える夏芽に
パッっと出るので今のはおかしいって
と思う雪姫。
「でも私、音楽が、曲が好きなので、メンバーのお名前とかは知らないニワカなんですよ。
聴いたらどなたの曲ーとかはすぐわかると、思うんですけど
でもファンの方々には到底敵わないですし、曲制作の裏側とかも知らないんですよね。
ニワカでお恥ずかしいですが…」
と言う夏芽に
あんだけアーティスト知っててニワカ?
と思う雪姫。
「あっ、すいません。私ばっかり喋っちゃって」
と申し訳なさそうに、恥ずかしそうにする夏芽。
いまさらすぎんか?
と思う雪姫。
「…いや、…私、喋るの苦手なので…。喋ってくれたほうが…いい…かも、です」
と消え入りそうな声で、夏芽のほうを見ずに言う雪姫。
それを聞いた夏芽は、まず雪姫が話してくれたことが嬉しく
しかも喋ってくれたほうが嬉しいと言われたので目を輝かせて喋り出す。
「人気のボーイズグループである「Super Visual」はバラード、アップテンポな曲
ヒップホップ、ラップやEDMなんかもあって、しみじみと心に沁みる、耳心地のいい曲から
EDMのようなダンスをメインにした踊るパートが多い曲まであって
でもそれは「Super Visual」に限った話ではなく「&Lock」や「BeSicks」「IMI」もそうで
「AGP」「Always a Game Player」は他のボーイズグループとは違ってですね
名前の通り、メンバーの皆さん、ゲーム好きのゲーマーさんらしくてですね
おそらく事務所側の方針ですかね?ゲーム関連のサウンドを使用してる曲が多いんですよね。
あのぉ〜、私たち、ゲームをあまりしないライト層からすると馴染みのない
レトロゲームのセレクト音?っていうんですかね?だったり
「ゲームスタート」か「設定」を選ぶときとか
キャラクターを選ぶときの、コマンド選択音っていうんですか?とか
RPGの魔法攻撃の音とか斬撃音とかシューティングゲームの弾を撃つ音とか
とにかくゲーム関連のサウンドを多く使った曲で
「AGP」は基本的にアップテンポな、ヒップホップ、ラップ調の曲が多いですね。
でも、RPGであるじゃないですか?裏切りとか仲間を失ったときに流れる少し寂しげな曲調。
あれも再現されてて、アップテンポな曲の中で転調されて、バラードになったりする曲もあるんですよ。
すごくおもしろくて、なんかゲームしたくなるような曲が多いですね。あとは」
と少し早口で話す夏芽を見ずに、スマホから顔を上げて、キッチンの天井の角を見ながら
あぁ〜…。喋ってなんて言わなきゃ良かった…
と思っていた。そんなこんなしているうちにお客さんが来始める。その中には知っている顔もある。
「ちゃおぉ〜」
「お、鳥希(とき)ちゃん」
鳥希だった。
「いいです?」
「もちろん」
鳥希が席に座る。
「ほい」
神羽がおしぼりを鳥希の前に出す。
「あー、ありがとぉ〜……あれ?今日夏芽ちゃんは?シフトじゃなかったっけ?」
とおしぼりで手を拭きながら店内を見渡しながら言う鳥希。
「そうよ?」
「いなくない」
「あ、今キッチンやってもらってるんだよねぇ〜」
「え。あんな可愛い子をホールじゃなくてキッチンにしたんですか」
驚く鳥希。
「鳥希ちゃん、なんでたまに敬語になるの?怖いんだけど」
「いや、なんか、ここに来た当初の感じがあまり抜けなくて」
「そろそろホームにしてくだせぇ。で?ビール?」
「うん。ビールと枝まーめを」
「はい。ビールに枝まーめね」
注文をキッチンに伝える神羽。そしてビールを注ぐ。
「はいー。とりあえずお通しとビールねぇ〜」
「ありがとうございまーす。いただきまーす」
と言ってビールを飲む鳥希。
「んん〜…。うまい…」
「今日もお仕事?」
「もちろん。いつも通り定時より少し長く仕事して、直で来ましたよ」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
キッチンからお通しと枝豆が伸びてきたので、受け取って鳥希に出す神羽。
「枝まーめです」
「ありがとーございまーす。にしても、ほんとにキッチンに夏芽ちゃんいんの?」
と言う鳥希に、神羽はキッチンの暖簾から顔をキッチンに突っ込み
「金城崩さん、ちょっと」
と手招きする。夏芽は「?」と思いながらも神羽の元に行く。そして暖簾から顔を出す。
「あ、ほんとだ」
「ん?あ、鳥希さん」
「夏芽ちゃぁ〜ん。会いに来たよぉ〜」
「ありがとうございますー」
「でもなぜにキッチン?」
と神羽に聞く鳥希。
「いや、金城崩さん沖縄出身じゃん?」
「うん」
「だからメニューに沖縄料理加えたいなぁ〜って思ってさ?」
「あぁ〜。なるほどね?」
「んで、どうせなら本場の人に作ってもらいたいじゃん?」
「たしかに」
「ま、金城崩さんバイトだから、メニューに加えても、本場じゃない人が作る日のほうが多くなるんだけどね」
と笑う神羽。
「たしかに。夏芽ちゃんいるときだけのメニューにしたら?」
「あぁ〜。それいいね」
なんて話していると続々とお客さんがやってくる。その中には知っている顔もある。
「こんにちはぁ〜」
「おぉ!金兜(かなと)くん!」
金兜だった。
「大丈夫?」
「大丈夫っす大丈夫っす。カウンターでいいっすか?」
「あ、うん。ありがとー」
金兜は名論永にも会釈をし、名論永も会釈をし返す。
「今日は1人っすか?」
と言いながら金兜の前におしぼりを出す神羽。
「ううん。この後たぶん漆慕が来ると、思う。たぶん」
「あ、そうなんすね。じゃ、1席荷物置いて取っといてくださいよ」
「え、いや、悪いでしょ」
「大丈夫っす大丈夫っす」
と神羽が言うので、金兜はお言葉に甘えて荷物を隣の席に置く。
「今日もバイトだったんすか?」
「あぁ、うん」
「バイト、カフェっすよね?」
「うん」
「金兜くん目当てのお客さんとかいるんじゃないっすかぁ〜?」
「いるわけないでしょ」
と笑う金兜。と話していると、カラガラカラと引き戸が開く。
「いらっ、おぉ!漆慕くん!」
「来たよー」
と言う笑顔の漆慕。その後ろには
「…え?エースくん?」
漆慕たちのバンド「The Gold medal band」のベース担当で
神羽の先輩である銅辺(どうべ) 英丞(えいす)がいた。
「えぇ〜。ヤバッ。あ、金兜くんが席取っといてくれたんで」
「いや、神羽が置いてけば?って言ってくれたんで」
「2人ともありがと」
「いえ」
と言って座る漆慕と英丞。
「じゃ、とりあえずレモンサワーとビール、あとカシオレでい?」
と漆慕が英丞に聞く。
「ん」
「じゃ、それをお願いします」
と漆慕が言う。
「うっす!じゃ、めろさんレモンサワーお願いします」
「はい」
ということで名論永がレモンサワーを作り、神羽がカシスオレンジを作る。
「エースくん今日はどうしたんですか?珍しい」
とカシスオレンジを作りながら聞く。
「いや、漆慕に連れ出された」
「あぁ〜」
「昼に3人でゲームしててね」
と漆慕が言う。
「えぇ〜。なんのゲームしてたんすか?」
「Top of Legends」
「あぁ〜。オレめっちゃやってないっすわ」
と笑いながら
「カシオレでーす」
と英丞の前にカシスオレンジを置く神羽。同時に名論永もレモンサワーを
「レモンサワーです」
と言って金兜の前に置く。
「ありがとうございます。オレも最近やってないわトレ(Top of Legendsの略称)」
「…ん?漆慕くんたちとやってたんじゃないんですか?」
とビールを入れて
「漆慕くん、ビールです」
と漆慕の前に置きながら聞く。
「いやいや。オレは今日昼からバイトだったから」
と金兜が言った後
「じゃ、とりあえず」
と漆慕がグラスを持つ。金兜も英丞もグラスを持つ。
「乾杯」
「「乾杯」」
と3人で乾杯してとりあえず1口飲んだ。
「ぎんと3人でやったのよ」
と漆慕が言う。
「あ、そうなんすね?」
「オレも清掃の仕事あったから途中で抜けたけど、あの後どーしたの?」
と漆慕が英丞に聞く。
「ん?デュオで野良さんに入ってもらってやったよ」
と話していると鳥希が神羽を手招きする。
「ん?」
神羽はカウンターから身を乗り出して鳥希に近づく。鳥希は顔を神羽の顔に近づけて
「漆慕さんって、もしかしてうちのお父さんと会ってる?」
と小声で言う。
「あぁ。うん。ここで会って、よく仲良く話してるよ」
「あぁやっぱり」
「意外と会ったことなかったっけ?」
ブンブンと頷く鳥希。漆慕のほうへ視線を向けた神羽。その後神羽がなにをするかを察した鳥希は
「待って。怖い人じゃない、よね?」
と神羽に聞く。
「どうかな?」
と笑う神羽。少し心配だったが、神羽がそう言うということは怖い人じゃないんだろうなと思う鳥希。
「漆慕くん漆慕くん」
「ん?」
「こちら奥樽家(おたるげ)さんの娘さん」
と両手で「こちらがそうです」と紹介するようにする神羽。鳥希は「あ、どうも」と言うように頭を下げる。
「あ、奥樽家さんがよく話す」
「たぶん?」
「初めまして。円鏡(まるきょう)漆慕です。
お父様にはお世話になって、ありがたいことに仲良くしていただいております」
と言う漆慕に
めっちゃちゃんとしてる人だ
と思う鳥希。
「こちらこそ父がお世話になっているみたいで。娘の鳥希です」
「あ、やっぱりそうですよね」
「…はい?」
「いや、奥樽家さんが、あ、お父様がよく「ここで飲んでる娘がいるんですけど
一緒には飲んでくれなくてー」って話してらっしゃるので」
「父、そんなこと言ってるんですか」
と鳥希が言うと、漆慕は微笑みながら
「はい。さぞお可愛い娘さんなんでしょうねって話してました」
と言う。鳥希は
おぉ…。イケメンだ…
と思った。
「漆慕くぅ〜ん、鳥希ちゃん口説いてるとさすがに奥樽家さんに怒られますよ?」
と笑いながら言う神羽。
そういえばー…
と思い出したことがあった鳥希。
〜
それは鳥希が母と夜ご飯を食べてリビングのソファーでくつろいでいたときのこと。
父は飲んで来てから帰ってきた。
「鳥希ー。もう帰ってたのかー」
「は?私めっちゃ普通に帰ってきたから。お父さんが飲み行ってて遅かっただけでしょ」
「それもそうか。いやぁ〜漆慕くんたちと飲むの楽しくてなぁ〜」
「へぇ〜」
鳥希はテレビを見ながら、スマホをいじりながらなので
父の話など半分、どころか2割程度でしか聞いていなかった。
「いやぁ〜、じんくんもいい子だけど、漆慕くんはなんかすごいんだわ」
「へぇ〜」
「こう、色気?いや違うなぁ〜。そんないやらしいものじゃない。人を惹きつける天性のものがある、うん。
漆慕くんが鳥愛(とあ)か鳥希の彼氏でもお父さんなにも文句言わないな。
ま、タトゥー多すぎるからあれだけど」
「…」
タトゥー?
非日常な言葉に、その言葉だけ耳に入ってきた。
〜
って、なんかしょーもないこと言ってたなぁ〜
と思い出しながら言う鳥希。
でも、たしかにタトゥーすごいな
と思う鳥希。
そしてなにより、お父さんが言ってた「不思議と人を惹きつける」か…
と思いながら漆慕を見る鳥希。
…。たしかに…
納得した。
「ま、漆慕くんはタトゥー多すぎですからね。
さすがの奥樽家さんも、娘の彼氏とかになったらいろいろ言うでしょうね」
と言う神羽。
「まあねぇ〜。ま、神羽も人のこと言えないけどね?」
「オレそこまで入ってないっすもん」
「埋めたくなんない?」
「んん〜。埋めたくなるほど入ってないっすからねぇ〜」
「英丞のピアスと同じだよ」
と言う漆慕に英丞を見る神羽。
「あぁ〜。え。そんなピアスしてましたっけ?」
と言う神羽にスマホの画面を見つめたまま
「…。前神羽にいつ会ったか忘れた。そんときから増えてるかも」
と言う。
「なにしてるんすか?」
「ん?スマホゲー。スナイプゲームとか放置ゲーの間にいろいろやってる」
「さすがはゲーマー」
「ゲーマーってほどじゃないけど」
「いやぁ〜。漆慕くんも金兜くんもエースくんも高校んときから変わってないっすねぇ〜。
ま、漆慕くんはタトゥー、エースくんはピアス増えましたけど」
「そお?もう10年経つから、さすがに変わってると思うけど」
と微笑みながら言う金兜。
「それ!その微笑み!うちの世代でもオレらの1個下の中でも金兜くん
女子からモテモテでしたもん。めろさんめろさん」
不意に話しかけられ
「え、あ、ん?なに?」
少しビックリする名論永。
「この3人、魔性の円鏡、魅笑(みしょう)の汐旗(しおはた)
惹涼(まりょう)の銅辺って言われてた3人なんすよ」
となぜか誇らしげに言う神羽。
「恥ずかしいからやめろ」
と笑う漆慕。
「お恥ずかしいです」
と照れる金兜。
「魔性の円鏡、魅笑の汐旗、惹涼の…」
と呟きながら
「あ、3人ともマ行か」
気づいた名論永。
「そうなんすよ。なんか、2個上でしたっけ?」
「そ。オレらの1個上の先輩たち」
「先輩女子が考えたらしくて。不思議な、天性の、魔性の魅力がある漆慕くん。
女神も落ちる魅惑の笑顔の持ち主、金兜くん。
当時からピアス多くしてた、クールで誰にも靡かないところに惹かれてしまう英丞くん。
3人をまとめて3Ms(スリーエムズ)って呼ばれてたんすよ。で、バンド名(The Gold medal band)も相まって
3MsのMはメダルのMだってことになって。金兜くん、金って入ってるんですけど
漆慕くんの人気がすごかったんで、金メダルが漆慕くん、銀メダルが金兜くん、銅メダルがエースくんで
女子が「やっぱ金じゃない?」「でも私は銅の雰囲気が好きなんだよねぇ〜」
「いや、銀メダルの笑顔には敵わないって」ってメダル争いしてました」
「なんかアイドルみたいだね」
と言う名論永。
「いや。リアルにうちの高校のアイドルでした」
「やめて、恥ずかしい」
と言う金兜。
「でも、リアルに3人が、ま、仲良いんでね?
3人が一緒に歩いてたら女子が「見て見て!」みたいな感じになるんすよ」
「マンガじゃん」
「マンガみたいに「キャー!」とはなってなかったですけどね」
と神羽が言うと
「ほんとにそんなことあるんだね?」
と鳥希が言う。
「鳥希ちゃんの学校ではないん?」
「ないないない。聞いたこともない」
「あ、もしかして先生されてるんですか?」
と金兜が聞く。
「あ、そうなんですよ」
「どこですか?」
「亀池(きゅうち)学園ってとこなんですけど」
「あぁ〜。亀池ですか」
「うちの姉がみなさんの母校の達磨の教師をしてまして」
「え、あ、そうなんですね」
「そうなんです。あ。私のとこじゃないですけど、烏森高校って知ってます?」
「知ってます知ってます。スポーツ強いとこですよね?」
「あ、そうです。そこに今年四つ子が入学してきたらしくて、結構話題になってました」
「四つ子ですか?すごいですね」
と金兜が驚く。
「ですよね」
「一卵性ですか?」
と漆慕が聞く。
「あぁ〜。そこまでは聞いてないですけどー、そこまで話題になるってことはもしかしたらそうなのかもです」
「たしかに。一卵性の四つ子かぁ〜。そりゃー話題になりますね」
「ですね」
と漆慕や鳥希、金兜が話している中、名論永はずっとなにかが引っかかっていた。考える。結果
「あぁ」
原因がわかった。神羽の肩をツンツンと突く。
「ん?なんすか?」
「さっきの話なんだけどさ?」
「さっきの話」
「3Msの話」
「はいはい」
「淡田くんは入ってないの?」
「あぁ〜…。ぎおちんはですねぇ〜、なんか、なんていうんですかね。
軽すぎるといいますか。高嶺の花感がゼロなんですよ」
と言う神羽に
あぁ〜…。失礼だけどわかる
と思う名論永。
「でも漆慕くんたちと仲が良いから、郵便屋さんとか配達員さんとか呼ばれてましたね」
「郵便屋さん?」
「はい。ラブレターとか、手作りのお菓子とかいろいろ届けてくれる係」
「あぁ〜…。なんか、不憫だね」
「そうっすねぇ〜。…あれ?そういえばぎおちんはどうしたんすか?昼一緒にゲームしてたんすよね?」
と漆慕に言う神羽。
「うん」
「一緒に来なかったんすか?」
と神羽が聞くと金兜は漆慕を見て、見られた漆慕は英丞を見る。
英丞はしばらくスマホを見ていた。そのみんなの様子を見る鳥希。
飲み物を飲むためにスマホを置いた英丞がようやく自分に視線が向いているのに気づく。
「…なに?」
「ぎんは?」
「ぎん?がなに?」
「今日は?なんで来ないの?」
「…。今日は彼女が早く帰って来れるらしいから
彼女ん家(ち)で料理作って待ってるって言ってたって漆慕にも言ったよな?」
と息継ぎなしに、でも早口ではなく言う英丞。そして飲み物を飲む。
「いやぁ〜、英丞の声が聞きたくて」
と笑う漆慕。そんな漆慕に鼻を鳴らす英丞。
「だ、そうです」
「はあぁ〜。なんで高校んとき一番人気じゃなかったぎおちんが彼女がいて
大人気だった3Msは誰もいないんすか」
「そう言われても、ねぇ」
と言う金兜。
「そーゆー神羽はどうなんだよ」
と言う漆慕。その言葉に人一倍反応し、耳を傾ける者が1人。キッチンの雪姫である。
梨入須さん…どうしたんだろう…
と夏芽が思うほど、ホールとキッチンを繋ぐ部分を遮る暖簾に近づいて聞き耳を立てていた。
「オレっすか?オレは3Msの人気とは天と地だったんで
オレに彼女がいなくてもまったく不思議じゃないっすよ」
「じゃ、彼女いないんだ?」
「いないっすよ?」
という神羽の言葉に安心する雪姫。
「ふうぅ〜ん」
「つーか出会いないっすよ。ここと家の往復っすもん」
「ま、身近な人に目を向けるのもいいかもしれないけどね」
という漆慕の言葉にドキッっとして暖簾から離れる雪姫。
「オレのことはどーでもいいっす。お3人ですよ」
「オレはー…。まあ…ね?」
と微笑む金兜。英丞はスマホをいじり続ける。
「ま、英丞はゲームが彼女みたいなとこあるからね」
と言う金兜。
「オレはー」
「一番出会い多くて、一番人気の漆慕くんはどうなんすか」
「ま、出会いが”多かった“ね?過去形過去形」
と話す漆慕たちの話を聞いて
「めろさんめろさん」
と名論永を呼ぶ鳥希。
「はい」
「出会いが多いって、漆慕さんなんの仕事してるんですか?」
「あぁ〜…。前はホストだったって聞きました。祭都鈴(まつり)町の」
「へえぇ〜。祭都鈴町のホストかぁ〜。そりゃー口うまいわけだ」
と納得した。
「ま、熱狂的ファンが1人いるくらいかな」
と笑いながら言う漆慕に
「あぁ!そうだ!ストーカー!どうなったんすか!?」
と思い出した神羽。
「ストーカー?」
漆慕を見る金兜。
「ストーカー!?」
漆慕を見る鳥希。スマホから顔を上げ、漆慕を見る英丞。
「え、初耳」
と言う金兜。
「ま、ホスト時代のが続いてるってだけ」
「その後どうなったんすか?警察行ったとか」
「いやぁ〜…。警察行くほど悪い子じゃないし、実害もないし
そもそもオレが原因でストーカーになっちゃったわけだし」
と笑う漆慕に
優しすぎんだろ(神羽)
漆慕…(金兜)
たしか、元ナンバー5って言ってたよね?あれでナンバー5止まりなの?
ナンバー1ってどんな人なんだろ(名論永)
ホストってほんとーにストーカーとかつくんだぁ〜。大変だなぁ〜(鳥希)
めんどくさそ(英丞)
と思う5人。
「それに警察一家の息子がストーカー被害で警察行ったらなに言われるか」
「え!?ご両親警察官なんですか!?」
驚く鳥希。
「そうですね。まだ大学生の弟と高校生の妹と自分以外は親戚も含めて警察一家です」
「すごぉ〜」
とそんな話をして盛り上がった。