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私の個人の主張なのですが、中途半端にこの作品は終わらせれないと思ったので、一旦、この作品は公開させていただくことにしました。まだ状況はわからないですが、取り敢えずこの作品の完結までは全体公開にします。完結してからは少し考えます。
では、どうぞ
―――――――――――――――――――――――――――――
第7話 応援コーチがいる君
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——恋は戦である。
——だが、観客席から石を投げてくるやつがいる場合、その限りではない。
幾度となく頭の中でその言葉をきりやんは反芻させていた。
―――――――――――――――――――――
放課後、1人の人間を除いて何もかもが静かに佇んでいる橙色に染められた教室。
そこでメールを送る人物がいた。
――――――――――――――――――――
委員会の仕事が終わった後、ある人物から某連絡アプリでメールが来ていた。
内容は「仕事終わったら、俺の教室に来てよ」というあからさまに何かを企んでいそうなものだった。
行きたくない気持ちはもちろんあったが、断るのも何かを失いそうで怖かったので彼のメールに従い廊下を歩いた。
きりやんが目当ての人物を見つけ、後ろの席についた瞬間、前の席の椅子がくるりと回った。
「どうすんの?」
そこには当然のように——nakamu。
彼は当たり障りのないいつもの笑顔でこちらに話しかけてくる。
「……何が」
「いやいや」
でもいつも通りの笑顔とは少し違って、にやにやが隠しきれていない。
「昨日のアレ見て、何もないわけないでしょ」
(やっぱ来たか……)
きりやんは内心でため息をつく。nakamuにバレているとは思っていたけれど、ここまでド直球に聞いてくるとは。
「別に、何もねえよ」
「ふーん?」
明らかに信じていない顔。流石に苦し紛れすぎる言い方だろう。
「スマイルと、きんとき 」
わざとらしく名前を出す。きりやんの心はドキッと跳ねた。
「幼馴染なんでしょ?」
「……らしいな」
一応スマイルからきんときの存在を探ってみたところ昔の幼馴染らしい。でもそんな事実を知ったところできんときへの嫉妬は止まらなかった。
「で、距離めっちゃ近かったね」
わざとらしく大きめの声でnakamuは言った。
「……」
無言。
「で?」
再度、圧。nakamuの不思議なオーラはこういうところから来ているのだろう。
カリスマ性があって人を纏められる。―――いや、ついてくるのほうが正しいだろうか。
そんな今考えてもどうにもならないことを頭のなかに浮かべながら彼と話すために話題に向き合った。
「……なんだよ」
「いや、どうすんのかなって」
先程の圧とは打って変わって、楽しそうに言う。
「そのまま取られる感じ?」
「は???」
きりやんの声が一段低くなる。
「取られるって何だよ」
咄嗟に反応してしまうほどきりやんのなかでは信じられない言葉だった。
「え、違うの?」
わざとらしく首を傾げるnakamu。
「好きなんでしょ?」
——沈黙。彼の計画的な罠にすっぽりとはまってしまったきりやんはもはや黙るしかなかった。
「……」
「……」
完全に図星。もうここからいい方向に転ぶことはないだろうと思いリアルにため息をつく。
一番最初にこの気持ちを分かるのはスマイルが良かったのに。
開き直って、机に思い切り肘をつき、だらんと気の抜けたポーズでnakamuと向き合った。
「……お前さ」
「うん」
あま
「なんでそんな確信持って言えんの」
「いやわかるでしょ普通に」
あっさりと放たれた言葉に当然という表情をしながらnakamuは呆れていた。
「見ててわかりやすすぎるって」
nakamuは開き直ったきりやんがあまり面白くなくなったのか、爪をいじりながら適当に相槌を打っている。
「……マジかよ」
きりやんは軽く絶望の状態に陥った。
(俺そんなバレてんの???)
思い返してみれば、きんときと会ったときずっと彼に嫉妬をしていたのではないだろうか。でも顔に出ているつもりはなくて、と自分の心の中で言い訳を考える。
そんな一人で考えているきりやんを見ていて少し経った後、急にnakamuが思いついたように聞く。
「で?」
nakamuはさらに身を乗り出す。
「告んの?」
「告らねえよ」
迷う様子もなく即答した。
「はや」
「まだ早い」
そりゃあそうだろう。
あのスマイルだ。無鉄砲に告白なんてしたらどうなるかなんて嫌でも想像できる。だから、ただの持論だが、じっくりと時間をかけるのがコツなのだ。
「へえ、“まだ”なんだ」
明確ではないとはいえ、きりやんのこれからの方針が聞けてこれからどう振る舞えるかワクワクしてきた。
「うるせえ」
投げ捨てるようにぶっきらぼうにきりやんはその言葉を放った。
――――――――――――――――――
「じゃあさ」
nakamuはきりやんと同じように机に頬杖をつきながら言う。
「作戦とかあるわけ?」
その言葉に。
きりやんの目が、わずかに自信に満ちたように変わる。
「……あるけど」
「お、出た」
こんなスクープ見逃せないとでもいうように目を見開いて食いついた。
「どんな?」
「……」
その言葉を聞かれた刹那、一瞬迷う。
(こいつに話していいのか……?)
作戦があると言ってしまったうえ、ここで教えないのは少し違う気がすると思う。
だが、nakamuは相当な情報収集能力を持っているし、仲間なのかも分からない。
でも。
(まあ、いいか……)
そんな敵か仲間かもわからない奴に縋らなければいけないほどきりやんは悩んでいた。
「段階的に距離詰めてく」
「うん」
「まずは“特別枠”に入る」
「うんうん」
「で、そこから——」
「ストップ」
まだ特段話したわけでもないのにnakamuが痺れを切らしたように手を上げる。
「長い」
「は???」
思わず驚きの声が出る。
「いや戦略はいいんだけどさ」
笑いながら言う。
「相手、スマイルだよ?」
nakamuは呆れたようにきりやんの作戦について指摘した。
「……だから何だよ」
「気づくと思う?」
——ひとときの沈黙。
学校備え付けのカーテンがひらひらと揺れ、風がボワッと教室のなかに入って揺れる。
「……」
スマイルとの出来事を思い返す。
一昨日。
距離を詰める作戦(笑)たち。
昨日。
ペットボトルの間接キス。
今日。
上着貸しイベント。
全部。
(気づいてないな……)
「でしょ?」
nakamuがそんなきりやんの心を見透かしたようににやっと笑う。
「だからさ」
身を乗り出して、囁く。
「俺が手伝ってあげようか?」
それは悪魔の囁きだった。
「……は?」
「恋愛コーチ」
待ってましたというばかりのドヤ顔。
「いらねえ」
多分nakamuはこれが目的だったのだろう、彼のいうとおりにはなるもんかと思い、即答した。
「えーなんで」
思っていた反応とは違い、がっかりするnakamu。
「絶対余計なことするだろお前」
「バレた?」
テヘペロとでも言わんばかりのウインクをして悪びれないnakamu。
きりやんは本日何回目かもわからないため息をついた。
――――――――――――――――
そのとき。
「……何してるの」
背後から聞き慣れた低く芯のある声。
振り向くと——今回の話題の中心であるスマイルが立っていた。
「……いや別に」
きりやんが即座に誤魔化す。
―――だが、
「きりやんの恋バナ」
「おい」
ニヤニヤしながら即バラすnakamu。
「……恋バナ?」
スマイルが首を傾げる。
「誰の」
先程の言い方だと聞きとれなかったらしいスマイルが聞き直す。
「だから、きりや——」
nakamuは声高らかに宣言しようとする。
しかし、
「なんでもねえから!!」
きりやんは慌ててnakamuの口を抑え、食い気味に遮る。
「ん〜、ん〜!」
「……?」
nakamuは何かを伝えようとしているようだが、スマイルはよくわかっていない顔をしている。
「で、何の用」
きりやんはこの話題を早く変えようと、スマイルに話を振る。
「……これ」
差し出されたのはスマイルの紫色のノート。
「今日の授業、途中で終わったから」
そういえば、体調不良のやつを保健室まで連れて行ったんだっけ。それでそのまま授業が終わっちゃって、と思い返す。
「……ああ、サンキュ」
こういうところが好きなんだよな、としみじみ思いながら受け取る。
「ぷはっ、はー…窒息しそうだったんだけど!?」
やっと口を開放されたnakamuは思い切り息を吸って、きりやんの抑え方に愚痴を言った。
「……あと」
そんなnakamuを無視して、スマイルが少しだけ間を置いて言う。
「きりやん」
「ん?」
なんだろうか、と顔をノートからスマイルの方に向ける。
「今日、帰り時間ある?」
「え」
急に帰りのことを聞かれ、思考が思わず停止する。
「……あるけど」
「じゃあ、一緒に帰る」
さらっと当然のように言う。
「……お、おう」
心臓が一気に跳ねる。
(なにこれ)
(イベント???)
一方。
「……」
nakamuは、全部見ていた。
(はい出た〜)
これが俗に言うスマイルの
――――無自覚。
(これだから面白いんだよなあ)
思わず、顔に満面の笑みが出そうになる。
そして。
(ちょっといじったら、もっと面白くなりそう)
完全にスイッチが入る。
にや、とこらえきれなくなり笑う。
「ねえきりやん」
ニヤニヤを隠すつもりもなく話しかける。
「……何だよ」
何か悪い予感がした直後、nakamuから言葉が放たれる。
「頑張ってね、コーチとして応援してるから」
「だからいらねえって言ってんだろ」
「いやいや」
ひらひらと手を振る。
「もう関わる気満々だから」
てことで、よろしく!ときりやんの背中を叩く。
「は???」
——この瞬間、きりやんの恋は。
外部からの干渉”という新たなフェーズに突入した。
しかも、幸か不幸なのか、味方か敵か、一番わからないやつによって。