テラーノベル
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サンダルは遥香が自分で買ったようだった。
そこから今度は、すぐ隣のバッグ売り場へ移動する。
サンダル2足だけでこんなに大きな紙袋になるのか……それぞれ硬い箱に入っていてかさ高いな。
私は大きな紙袋を持って、また二人が見えるところで待機する。
靴もバッグも、個々に入口のあるようなお店でなく、オープンなスペースでいろんなブランドが見られるような売り場での買い物だから、私が入店拒否されるようなこともない。
「これ、この前もあったね。新しいデザインのものが今日発売なのに、ない?」
大きな独り言を言いながら遥香がぐるりと通路を歩くけれど、店員は近寄らない?
聞こえていたはずだけど、百貨店というのは店員から声を掛けないのか?
そう思って観察していると、すぐ近くにいたシンプルなTシャツとパンツ姿のお客様に店員が
「何かお探しでしょうか?」
とにこやかに声を掛けた。
「いえ…まあ、ちょっと見せていただきます……」
「陳列されていないものもございますので、どうぞ何なりとお申し付けください」
そう言った店員は、お客様から一歩だけ離れてお客様の視線に集中する。
おお……百貨店の店員も営業するんじゃないか……
「そちらはお色違いで、ベージュもございます」
「どうぞ、手に取ってご覧ください」
「こちらに大きな鏡がございますので、どうぞ」
店員がTシャツのお客様に一生懸命接客しているのを聞きながら、私は遥香と池田がいろいろなバッグに触ったり、肩に掛けたりしつつ物色するのを見る。
少し離れすぎたと思って、私も彼女たちの後ろに行くと
「ねぇ、今日発売になった新作ってまだ並べていないの?」
遥香がいきなり店員に聞いた。
「どちらのバッグでしょうか?」
「あの定番のストラップが限定デザインになったやつ」
「申し訳ございません。入荷分はすべて完売致しました」
「はっ?まだお昼にもなっていないのに?」
「申し訳ございません。朝からご予約お取り置きのご依頼をいただきましたので、完売でございます」
「そんなの聞いてないわ」
憤慨する遥香に
「顧客がいるんだろ。知り合いにも、欲しいものは個人外商担当に頼んで取り置きしてもらうとか言っている奴がいるから」
とわかった風に池田が言うけど……なんか二人とも残念な感じだ。
遥香は何も言わずにどんどんと歩き始め、私は目の合った店員となんとなく会釈し合ってから急いであとを追う。
そこから試着もしないで、あれとこれと……と洋服を買い始めた遥香の荷物は、私の両手と両肩を塞いでしまった。
池田は一度だけ、会計をしていたようだね。
ショップバッグの紐って、結構肩に食い込むのね…地味に痛い。
「トイレ行く」
そう言った遥香の後ろを大荷物で歩くエプロン姿の私を見る目は、お客様も増えて来た時間帯なので何とも言えないものだった。
気がつけば、また二人のかかとを見て歩いていた私はトイレ近くの通路で立ち止まって
ふぅ……
ため息をついた。
「真奈美、何か買ってやろうか?」
遥香はトイレに行ったけれど、池田は行っていない。
その池田の靴が私の靴に触れそうな距離に止まって、私は壁に背中をつけるまで後ろに下がって池田を睨んだ。
「いりません」
「欲しいものがたくさんあるだろう?」
そう言って池田は私の顎をクイっと持ち上げると同時に、ムニュ……噓でしょ……お尻を触った。
コメント
7件
池田調子に乗ってたら後から2倍返しが待ってるわよー
池田やっぱりやりやがったな(# ゚Д゚)
最低😡