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鳴海と八咫烏隊・獄卒たちが会議を勧めている頃…
一ノ瀬と皇后崎は、ある1人の同期について言葉を交わしていた。
「珍しいな。戦いに行かねぇなんて」
「うるせぇ。それよりも遊摺部から目を離すな」
「は?遊摺部から目を離すな?なんで?」
「さっきの襲撃時見たんだよ。桃の隊員が遊摺部に気づいた瞬間、攻撃をやめて襲わなかった」
「見間違いだろ?お前もテンパってたんじゃねぇの?」
一ノ瀬はそう言って、大して気にする様子もなく会話を切り上げた。
だが皇后崎はそんな簡単には割り切れない。あの時確かに自分の目で見てしまったから。
何の確証もない現状では、これ以上の行動は難しい。
皇后崎は1人冷静な目で、同期の動きを注視することにしたのだった。
会議を終わらせ最後に部屋から出た鳴海。
ふと目をやった先で、無陀野が一ノ瀬に拳銃を渡していた。
少し近づけば、2人の会話が聞こえてくる。
「四季、これを渡す。実弾はダメみたいだったしな」
「これは?」
「実弾より低威力のゴム弾の銃だ。ヒビを入れるくらいの威力はある。頭から下に当てれば、まず死ぬことはない」
「…」
「他の負傷者と一緒に避難しても構わない」
「え…?」
「だがやるやらないの決断をあやふやにしたまま残るのは邪魔なだけだ」
「…だよな。もうちっと頑張るわ」
そう言って、一ノ瀬は渡された銃を見つめながら一旦自分の部屋へと戻って行った。
鳴海はそんな一ノ瀬に気づかれないよう、静かに無陀野の元へと近づく。
「…さっきの襲撃の時、戦えなかった感じ?」
「あぁ。それどころか、襲われそうになっても抵抗すらできていなかった」
「やっぱり時間かかるよね…」
「こればっかりは、アイツ自身がどうにかするしかないからな」
「…少しでも力になれるように、俺も出来る限りは四季のこと見守るから」
「ありがとう。助かる」
無陀野からの言葉に、鳴海は少し疲れた笑顔を見せた。
普段見ない姿に、無陀野の表情は険しくなる。
と、不意に鳴海の頭にポンと手を置く無陀野。
「無人くん?」
「お前自身の方は大丈夫か?不安や恐怖があるなら吐き出していいんだぞ?」
「大丈夫!…って言いたいところだけど結構ナイーブなんだよね今。…スパイの事も考えなきゃいけないし、やる事いっぱいあるから、いつもの “斑鳩鳴海” で四季とは接することは出来ない。 」
「…」
「でも、準備出来る範囲で準備は済ませたし根回しも終わってるから…」
「今のお前は俺が1番知ってる時の鳴海だな」
いきなりの言葉にぽかんとする鳴海に無陀野は続ける
「全部が不安定で誰かに縋りたいけど誰にも縋れなくて、それを誤魔化して隠すために上っ面だけの笑顔の時のお前だ。」
「…癖になってるのかもね」
「何度も言ってるが、鳴海はいつも頑張ってる。抱え込み過ぎるなよ。何かあった時、誰かに頼るのを躊躇わないこと」
「うん」
鳴海の手を取り、手の甲にそっと口付けた無陀野。
「終わったら校長に直談判して休みが取れないか聞いてみる。2人でゆっくりしよう。家でも、ホテルでも鳴海の好きな所、落ち着く所で」
疲れきっていた鳴海の心が少し回復した瞬間であった。
各班準備が整い、いよいよ出発の時間となる。
淀川率いる偵察班は残された鬼たちの救助。
無陀野率いる戦闘部隊は杉並区の隊長討伐。
そして花魁坂率いる救護班は、負傷者の治療及びアフターケア。
八咫烏並びに獄卒は各チームのバックアップ。
これから大人を中心に、それぞれが自分たちに課せられたミッションを遂行することになる。
「連絡は妨害対策済みスマホでね」
「気をつけてな!……鳴海!」
「ん?」
「…ケガ、しないでな」
「もちろん!」
自分の方へ駆け寄り、心配そうに声をかけてきた一ノ瀬に対し笑顔を見せる鳴海。
そんな彼の手を取り、両手で優しく握り締めると、鳴海は周りに聞こえないよう小さな声で言葉を紡ぐ。
「四季も無理しないで。ゆっくりで大丈夫だから」
「! …サンキュ …鳴海に手握ってもらうと安心する」
「天使だからね!」
「(あ、俺の好きな笑顔。…態度も表情も手のあったかさも、今までと何も変わらない。やっぱ鳴海は…)」
「四季?あの、茶化してくれないと恥ずかしいんだけど…!」
「うん、俺の大好きな天使だ」
一ノ瀬はそう言って、穏やかな笑顔を向けながら鳴海の手をギュっと握り返す。
茶化すどころか、”大好き” なるパワーワードを放たれ、天使様はふっ、と吹き出した
「大好きか…ありがと四季」
「隊長、そろそろ」
「もうそんな時間か…じゃあ四季、ちょっと行ってくるね」
「おぅ!」
真逆に呼ばれた鳴海は一ノ瀬に小さく手を振ってから、チームに合流すべく駆け足でその場を後にしたのだった。
ゾロゾロと地下通路を進む偵察班と戦闘部隊の面々。
分岐点で淀川たちと別れ、鳴海たちは目的の出口までまた足を進める。
歩きながら敵側の情報やこの後の動きの最終確認している鳴海。
先のことを見据えて多数のプランをその場で練り上げ花山院に書き記させていた。
そんな彼女に両サイドから近づく怪しい同期コンビ。
2人の顔は、真面目にペンを走らせている花山院に絡む気満々だった。
「柚~歩きノート危ないよ~?」
「ちゃんと前見てるさかいいけるで〜」
「ん~前とかノートじゃなくて俺のこと見てよ」
「あほなこと言うてへんで先輩はんらの話し合いに参加したらええのに」
「平気平気。大我が全部やってくれっから」
「出た〜紫苑はんの人任せん術」
「なぁなぁ、俺の治療してくれた時そんな服だった?」
「まさか。八咫烏の正装やでこれ。言うとくけどあて、戦闘部隊やさかいね?」
「いいなカスタム可能な服〜俺も八咫烏入りたーい」
「うわ、死んでも入って欲しない。」
「辛辣〜w」
「お前、あの人から鳴海に近づくなって言われてんだろ?チクるぞ?」
「名前も言えないぐらいビビってる奴に言われてもね~」
「はぁ?ビビってねーわ」
花山院を間に挟んだまま小競り合いをする朽森と猫咲。
仲良し同期が故の可愛らしい口喧嘩だが、今はそういう状況ではない。
何とか止めようとする花山院に構わず、先輩コンビが任務と関係ないやり取りを続けた結果…
ついに怒らせてはいけない “隊長” の逆鱗に触れてしまった。
喧嘩を止めるため、2人の間から抜け出し後ろ向きで歩いていた花山院は、不意に何かにぶつかって動きを止める。
驚いて振り返れば、そこには殺気に似た圧を発している鳴海がいた。
「隊長…!」
「「(ヤバ…)」」
「随分余裕だね。別に君らだけで行ってもいいんだよ?」
「いや、それはちょっと…なっ、波久礼」
「うす…手を貸していただきたいです…」
「なら無駄口を叩いてないで集中。それと…柚の邪魔をしないこと」
背後から花山院の肩に手をポンと置くと、鳴海はそう言って今一度後輩たちに睨みをきかせる。
“すみません…”と少し頭を下げる2人とは対照的に、花山院は晴々とした顔でボスを見上げた。
そのままお礼を伝えれば、鳴海は少し目元を和らげ、再び前を向いて歩き出した。
彼の後ろ盾を得て強気になった花山院は、冗談っぽく勝ち誇ったような表情を先輩コンビに向ける。
「…その顔ムカつく」
「痛っ!あての可愛い鼻がもげたらどないすんつもり!?」
「ふっ。まだついてるから安心しろ」
花山院の鼻をギュっとつまんだ猫咲は、同期の100点な反応にとても満足気だ。
横を通り過ぎる時にワシャワシャと頭を撫でてから、彼もようやく先頭グループに合流した。
「絶対赤くなってるよ…」
「鳴海先輩ピリついてんね〜」
「これがピリつかへんでいられへんねんって。身内がこの事態起こしてるんやさかい」
「え?そうなの?」
「聞いた話やと異母兄弟が桃太郎らしゅうて今これに参加してるらしおす」
「先輩からしたら複雑だな…身内で…」
「身内?誰が身内なの?柚ちゃん」
突然話しかけられ驚いた花山院は目線を下にずらし声の正体を見つけた。
そこにいたのは鳴海の弟の “縫依” であった。
「急に話しかけられたら驚くさかいね縫依はん」
「縫依じゃん。怪我はもういいんだ」
「治ったよ。パーへぇクト。で、誰が身内なの?」
「この写真の人やわぁ」
ここにいるであろう身内が写る写真を見せると縫依はつまらなそうな顔をした。
「この人じゃ人形作れない」
「そうやった忘れとった。あんたさんの能力は操作系やったなぁ」
「あれ?唾切と同じだったけ?」
「正確にはちゃう。縫依はんの能力は生死問わへんで操れるんやさかい」