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どうも皆さんこんにちは、モブリット・バーナーです。
…いや、私にそんな大層な名前は無かったのかもしれません。
私はただ、モブリット・バーナーを演じた兵士にすぎません。
ところで、皆さんは私がどんな声をしているか思い浮かべることはできますか?
大体の人は、男性の声を思い浮かべたでしょう。
無理もありません。モブリット・バーナーは、広く男性として知られているからです。
ですが、それを証明する材料はどこにあるのでしょうか。
私が生きていたのは、100年も前のことなのですから。
私が男性だということを証明できる人間は、今生きていません。
ですので、私が女性である可能性もあるということです。
パラディ島には名前の性差もありませんから、名前が男性的だから…なんて
古典的な推測方法も通用しませんよ。
ああ…エレンなんかがいい例ですね。女性名ですが、エレンは男性として知られています。
まあ、彼だって本当に男性だったのかは分かりませんが。
そもそも、モブリット・バーナーという人物が
本当に100年前実在したのか…その時点で私は疑問を感じます。
自分自身が存在したのか、そこに疑問を持つ人間も少ないと思いますが。
近年は、ナナバさんやハンジさんが女性だったのではないかと
考える歴史学者が多いようですね。
ですが、今私が「彼らは男性だ」と言ったら、どうですか?
否定できないでしょう?
かといって、肯定も出来ないはずです。
なぜなら、私が嘘を吐いている可能性も存在するから。
ほら、歴史というのは本当に曖昧なものなのです。
仮に、私が男性だということが書かれた100年前の何かしらが発見されたとします。
人々は、“モブリット・バーナーは男性だ”という共通認識を持つようになりますが、
その100年前の何かしらを書いた人物が、嘘を書いていたらどうでしょう。
私は女性なのに、男性ということで広く知られるようになります。
これは間違った歴史、ということです。
本当に難しいですね。未来は捻じ曲がらないものですが、過去は幾らでも捻じ曲がるから。
さらに、捻じ曲げられているのかどうかもよく分からないときました。
歴史を探究しようとする人は、本当に根気強いのでしょうね。
そういえば、100年前の巨人が存在した世界を描いた映像があるようですね。
タイトルは…確か、“進撃の巨人”でしたっけ。
私は男性として描かれているようですが、そちらの方が大衆受けはいいようです。
ヒィズルの文化だと、歴史人物をやたら女性として描きたがるようなので、
そちらでは私は女性として描かれているようですね。
国によっても、私に対する解釈は違うということです。
…ここまで話を聞いて、あなたは私をどんな人物だと思いましたか?
男性?女性?そもそも存在しなかった人物?
どの回答にも、私は正解だとも不正解だとも言えません。
そもそも、そこに答えなんて無いのですから。
モブリット・バーナーという名前だって、本名かどうか分かりませんよ。
言い出したらキリがないですが、実際そうでしょう?
誰も私のことを、もう知らないのだから。
これでは、私は存在しないも同然ですね。
私は後世に語り継がれ、その活躍を広く知られる兵士ですが
その活躍を証明できる人なんていない。
忘れられずに、忘れられてしまった。
私たちは、そういう存在なのです。
“モブリット・バーナー”という兵士の、存在の証明は
もうすることが出来ないのです。
それでも、あなたは
私を信じますか?
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