テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#このキャラでログインしたい
298
「あーあー、これはまた。派手にやってんねぇ」
遠くで発生したPVPを双眼鏡で眺めながら、チームメンバーと一緒に呆れた溜息を零していた。
前回開催された、賞金首イベントのチーム戦。
そこで“シックス”の初めてのキルログが残されたという事実。
そして彼に最後の一手を加えたプレイヤーには……アイツの使っているハンドガンがドロップしている状態。
コレを狙っているのか、それとも単純にイベント戦のやり方が気に入らなかったのか。
彼を初めてキルした、“デスバレット”とかいうプレイヤーが必要以上に周囲から狙われ始めてしまった状態。
まぁ元々そういうゲームだし、これも一応ルールに従っての対戦である事は間違いない。
しかしながら……傍から見ていると、単純にゲーム内のイジメにしか見えないのだ。
「流石にキルされてもドロップしない様に、“保険”のアイテムは使ってあるんだろうが……結局あのプレイヤーがキルを飾ったのは、シックスとセブンの二人だ。フォーとファイブに関しちゃ、他のチームメイトがキルしたって状況……そうだってのに、あんなに毎日追い回されちゃなぁ。ゲーム自体、辞めちまうんじゃねぇか?」
「そもそも奪われない様にする“保険”アイテム、高っかいからねぇ~。その時の戦闘だって勝利で終わらせた訳じゃ無ければ、イベント中は賞金首を討伐しても“賞金”は満額振り込まれる訳じゃない。だとすると今、金欠って可能性もあるんじゃね?」
可能性は、あるだろうな。
本来賞金首は神出鬼没、コレを見つけ出して倒すからこそ、その首に掛けられた“賞金”が手に入るのだ。
運営側がお膳立てして、間違いなくイベントには出現する賞金首達。
コレを倒したからってキルした者全てに満額振り込まれていたら、それこそゲーム内マネーがインフレを起こすのは目に見えている。
彼等に結構なプレイヤースキルがあるからこそ、“そこそこ”しか狩られていないのは確かだが……本来であれば“生き残れない筈”の戦場ばかり用意されているのだから。
元々の設定としてこういう形になっているのは納得出来る。
その代わりと言っては何だが、イベント時のボーナスアイテムやら、前回で言うとデータを一つ奪うだけでも、結構な報酬を貰えるという状況にはなっている。
そこで“戦績”という結果だけを残してしまったのが、問題のプレイヤーという訳だ。
更に悪い事に、賞金首には結構厄介なファンが付いているという事が浮き彫りになった。
あの“シックス”は、余計に……。
まぁPVにも大々的に登場する様なキャラクターだから、こればかりは仕方ないと言えるのかもしれないが。
もっと言うなら、あのデスバレとか名前を付けているプレイヤーが、戦闘後に少々調子に乗ってしまったのも問題なのだろう。
生放送で、まぁ見事に“そういう連中”からヘイトを買う様な発言を、堂々としてしまったのだから。
俺等から見れば、多分若いヤツが中二病のノリで言ってるだけだろうって分かるんだけども。
そう解釈してくれない直情型は、やっぱりいる訳で。
「なぁどうする? 流石に可哀想になって来たんだけど。助けに入ってやる?」
「そうだなぁ……確かに、見ててあんまり気分の良いものじゃねぇしなぁ」
今回の俺達の狙いは、この環境そのもの。
相手はゲームのルールに則って、ただ対戦を挑んでいるだけに過ぎない。
しかしながら狙われた側としては、何処に行ってもPVPを吹っ掛けられるのでは堪ったものではないだろう。
これは言わば、ゲーム内でのストーカー行為にも近い。
つけ回しや嫌がらせにも妥当するであろう、ネットマナーのクッソ悪い行動という訳だ。
そうなってくると……来るんじゃないか? “賞金首”が。
なんて考えて、最近は件のストーカー達をストーキングしているという。
ある意味、俺等もヤバイ連中になっている訳だが。
「仕方ねぇ、あのデスバレットとか言う坊ちゃんに手を貸してやるか」
「うっすー。んじゃ早速戦闘準備――」
「いやちょっと待った! 動きあり!」
仲間の一人が叫んだ瞬間、その場に待機していた全員が双眼鏡やらスコープを覗き込んだ。
ド派手なコートを羽織った問題のプレイヤーがホテルへと逃げ込み、どうやら相手が出て来るのを待つ事にしたらしい連中が周囲を固め始めている。
そんな中……裏道の方で、数回マズルフラッシュが点滅した。
他のプレイヤーも気がついたらしく、そちらに向かって銃を構えて進んでいくが……しばらくすると、また光る。
ここからでは誰が撃ったのかモノかなど分からなかったが、周囲のプレイヤーがやけに慌てている事から、“そういう事”なのだろう。
「一人ずつ確実に減らしていく暗殺スタイル……来たか? 来たかぁ!?」
「だははっ、ウチのリーダーも“シックス”のファンになっちゃってまぁ。最初の全体イベントで、真正面から戦えたのがそんなに嬉しかったのかー?」
「あったりめぇだろ! あんなもん生で見せられたら、誰だって惚れるわ!」
叫びつつ双眼鏡を更に覗き込むが……あぁくそ! ここからじゃ良く見えねぇ!
という事で、仲間に合図を送りながら屋上からラぺリング降下。
そのまま急いで現場へと向かってみると。
「見つけたぜ! シックス!」
目立っていた悪ガキを追い回していた連中を、早くも片付け終わったのか。
そこには、スーツの男が立っていた。
此方の姿を見て、彼は急いで裏道へと駆け込んで行ったが。
「逃がすな! 追え追え追え!」
現在此方はフル装備が5人。
だからこそ、連携を徹底しながら進めばこっちの方が有利……ではあるのだが。
相手は賞金首な上に、あのシックスだ。
細心の警戒をしつつ、しかし大胆に攻めないとフリーの戦闘では逃げられる可能性がある。
などと思いつつ、俺達もそちらへと追いかけてみると。
ズドンッと、後ろから発砲音が聞えて来た。
「はぁぁ!?」
慌てて振り返り、全員揃って武器を構えたが。
そこには、最後尾に居たメンバーが早くも武装を解除されながら盾にされている姿が。
早速やられた。
シックスが“逃げながら戦う”スタイルだと頭の中にあったからこそ、まずは一旦距離を置くだろうと予想したのだが。
今回は俺達の視界から外れた瞬間に隠れ、即後ろを取られてしまったという訳だ。
などとやっている内に、一人を盾にしながら此方に向かって発砲してくるシックス。
これに対し、また一人負傷。
どうする!? なんて考えている間に、盾にしていたメンバーを此方に押し込みながら次の者へ飛び掛かり、至近距離で数発発砲。
全員、まだキルされたという訳では無い。
しかし負傷している為、治療してからでないと満足に戦えないのは確かだろう。
まさかこの一瞬で、三人も無力化させられるとは思わなかった。
やっぱコイツ、滅茶苦茶強――
「ふっ!」
短い声を上げるシックスが、えらい速さで武器を持ち替え再びズドン。
今度は短いショットガンをぶっ放した様で、俺の隣に居たヤツがふっ飛ばされた。
防弾ベストを着ているとはいえ、この距離で散弾をまともに食らったのだ。
つまり、すぐに戦闘復帰出来る状態ではない。
そんな訳で、ただ一人残された俺が相手に向かって銃口を向けたのだが。
「遅い!」
その声が聞えて来た瞬間には、既に懐に飛び込まれていた。
流石に近すぎる。
こっちが持っているのはアサルトライフル、近すぎる距離では……ハンドガンの方が有利だ。
などと考えた所で足払いをかまされ、顔面を件のショットガンの銃身でぶん殴られ。
それはもう見事なまでにスッ転んだ。
更には、再びハンドガンに持ち替えたらしいシックスが、此方の額に銃口を押し付けて来てから。
「……私の勝ちだ」
いつか聞いたあのセリフを、もう一度聞く事になった。
くぅぅぅ……マジかよ。
やっぱコイツ、痺れる程に格好良いぜ。
思わず口元がニヤけてしまったが、続く銃声で俺はまたゲームオーバーに……なんて、思っていたのだが。
「リストに無い」
ポツリとそんな事を呟いてから、ハンドガンにセーフティを掛けてホルスターに戻してしまったではないか。
え、え?
やっぱ運営側が、マナーの悪いプレイヤー対処用で雇った凄腕って噂は本当で。
イベントでもない限り、ソイツ等以外は殺さない方針って事なのか?
だとしたら……いやマジで格好良いな!?
しかも手加減してこの強さかよ!? 賞金首ヤバッ!?
とか何とかやっている内に、俺の銃からはマガジンを抜き取られ。
腰に差してあったハンドガンも奪われて、その辺にポイッと捨てられてしまった。
武装解除された俺の上から、相手はすぐに退いて。
そのまま、裏路地の奥へとすぐさま姿を消してしまう。
ヤベェものを見た、本当にそういう感想しか残らない。
賞金首にやられたら付与されるっていう、あのデバフ。
運営側だって、確かにそんな物を雑に振り撒く訳にいかないってのは分かるが……だとしても、ヤバ過ぎだろ。
やられた仲間達を見てみれば、やはり誰も殺されてはいない。
皆が皆負傷した為、各々で回復アイテムを使用しているが……。
「ヤッバ! シックスを初めて生で見たけど、ヤッバ!?」
「だ、だろ!? すげぇだろ!? あんなの見せられたら、勝ちてぇって思うだろ!?」
「つ、強ぇ……五人も居て、瞬殺だもんなぁ……」
「だぁれもキルされてねぇけどな、逆にすげぇわ。ウチのリーダーでも追い回すの、ちょっと理解出来たわ」
「あんな綺麗にCQC使う奴、別ゲーのムービーとかでしか見られねぇよ……強ぉぉ」
皆揃って地道に回復しながらも、その場でギャーギャーと騒いでしまうのであった。
前のイベントで1キル取られてから、シックスが本気を出して来たってのはマジだったんだなぁ……。
時計塔広場で戦った時より、もっと強かった気がする。
はぁぁ~、すげぇ。
運営は本当に、何処の世界からあんな“本物”を引っ張って来たんだか。
そう考えると、何かもう興奮しっぱなしである。
俺……イベントとフリーの状態、両方でアイツと遭遇しちゃってるし。
なんかもうこれだけで自慢話になりそうだわ。
などと考えつつも、その辺に捨てられてしまった武装を回収してから自分達の拠点へと戻るのであった。
今日デスバレボーイに付きまとっていた奴らも、これでしばらくは大人しくなるだろうし。
賞金首まで動いたとなれば、今後はストーカー達もグッと減るのが予想される。
これはまた、別の手段で賞金首を探さないとなぁ……。
あぁチクショウ! どうにかしてフレンド登録とか出来ねぇかなぁ!?
もう一回戦いてぇぇぇ!
喚いてみても、やはりどこの掲示板を探しても賞金首とフレ登録したって奴は見つからないし……どうにかなりませんかねぇ!? 運営様ぁぁぁ!
コメント
1件
おお、第53話読了!今回は賞金首シックスの強さを、別チームの視点から味わう展開で新鮮でしたね。「リストに無い」って理由でキルしないスタイル、それでいて五人を瞬時に無力化する距離感と武器捌き…痺れます。デスバレット君を助けるつもりが逆にやられて、しかも「格好良い!」って興奮してるリーダーの思考回路、ゲーマーあるあるで微笑ましかったです。くろぬかさんの、戦闘描写のキレの良さとゲーム世界の空気感、今回も存分に楽しませてもらいました!