テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「えと、お邪魔しまーす」
「はーい邪魔されますー」
「ねぇー笑」
いつものように元貴は軽い冗談を抜かしてくる。
良かった、行き詰まってるなんて言うから元気が無いんじゃないかと思っていたけれど杞憂だったみたい。それにしても元貴がアレンジで行き詰まるなんて珍しいなぁ。
「元貴が行き詰まるなんて珍しいね?」
「あーうん、まあね」
「?」
「何か飲む?麦茶…あ、ココアあるかも、涼ちゃんココアでしょ?」
「ココア!飲みたい!」
「ん、その辺に適当に座ってて」
「ありがと」
完全に僕の好み把握されてる、、さすが元貴。元貴ってほんと人のことよく見てるしよく覚えてるから尊敬するなぁ。僕なんて忘れっぽいから何かを覚えるのにも2人より時間かかっちゃうし。
「お待たせ〜、熱いから気をつけて」
「わーありがとう!」
喉が焼けそうなほど甘いココアが疲れた体に沁みる…美味しい。
演奏は楽しいけど座りっぱなしなことも多いからちょっと疲れるんだよね。
こんな些細なところで自分の年齢を実感してしまう。
それと、元貴きっと僕のために甘めにしてくれたんだな。元貴が僕のことを想っていれてくれたってことが何よりも嬉しい
「涼ちゃーん顔がフニャフニャだよ笑」
「…んー?ふふっ、元貴がいれてくれたからより美味しいのかなーって、幸せだなーって」
「は?なにそれ」
急に真顔になる元貴。
やばい僕何か怒らせちゃうようなこと言っちゃったかな!?親しき仲にも礼儀ありというし…
「も、もとき、あの、ごめ「ごめん何でもない」」
「え?えと…その」
「あー本題に入るけど、次のライブ2曲目のcメロのキーボードなんだけど…」
「う、うん」
な、なんだったんだろ…
とりあえず怒ってなさそうで良かった
「…を……上げて、その後……と……どう?」
あ、あれ?あったかい飲み物を飲んだのと疲れのせいかな、眠くなってきた…
「……はそのまま………も……………で…」
あ、意識が………
「…ん………ちゃ……ん」
……あれ?なんかやけにまぶしいな…
「…涼ちゃん!」
…見慣れた顔。元貴の家のベッド。……あれ?
「えっ!!!!」
………………やばい。完全にやらかした。
「えっ!はこっちのセリフ!!アレンジの相談に乗って欲しくて家に呼んだのにココアだけ飲んで寝るとかあり得ないでしょ!」
「うわ、、ごめん、ほんとごめん……」
本当だよ、相談事で家に来たのにココア飲んですぐ寝るなんて…我ながらあり得ない。しかも僕がベッドで寝ちゃってるし。あれ、いつのまにかパジャマに着替えてる。
「もー、罰として涼ちゃん朝ごはん作ってね!」
「はい…めちゃくちゃ作らさせていただきます、本当ごめん… 」
「いや、2人分でいいからね?あー、あと簡単なのでいいから」
こんな僕にも元貴はなんだかんだ優しい。逆にその優しさがちょっとだけ痛いかも。
そんなこんなで僕はスクランブルエッグとトースト、インスタントのコーンポタージュを作った。
本当はオムレツにする予定だったけど途中でぐちゃぐちゃになって苦肉の策でスクランブルエッグに路線変更したのは内緒。元貴が僕の作ったスクランブルエッグを見て笑いを堪えてたからバレちゃってるんだろうけどね。
「うわー、食卓が黄色だらけ」
「わ、本当だ気づかなかった」
「なんで作った張本人が気づかないのよ、涼ちゃんらしいというかなんというかバ…」
「ねえ!良くないですよー元貴さんそういうのは!」
「はいはいー」
朝の忙しさもある程度過ぎ去った頃……
僕は何か忘れていたことに気づいた。
………わ、若井に連絡してない!!!!
…こんなに居場所を連絡しなかったことは初めてだから冷や汗が止まらない。
スマホスマホ…あれ、電源切れてる!
無意識のうちに切ったのかな
急いで電源を入れると…鬼のような着信履歴と通知が届いていた。
あたふたとしているとすぐに電話がかかってくる。
「…」
「も、もしもし!若井ごめん!!連絡しようと思ってたんだけど、忘れてて、その、ココアが、いや違くて、えっとその、寝落ちしちゃって、電源切れてて!」
「今どこ。誰といるの?」
「えー、えっと、元貴の家に、元貴といる」
「2人きり?連絡なしで?…朝まで?」
「う、うん」
「……すぐ迎えに行くから。そこで待ってて。」
「え、でも…」
「いいから」
「わ、わかった、ごめ…って、あれ」
電話切られちゃった…、若井、怒ってたな…。でも当然だよね、お付き合いをしたら30分に1回は誰とどこにいるかをパートナーに報告するのが世間一般だって若井に教えてもらったしなあ…。完全に僕がわるいよね…。
「……」
「…?元貴…?」
「………何でもない。」
分かりやすく凹む僕を見つめる元貴の視線に違和感を感じた、気がした。