こんにちはねこもみじです!
今回はそら様のコンテストに参加させて頂きます!
賞取れますようにってことで、長編です😸
注意
・青桃
・エセ関西弁
・御本人様とは関係ありません
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__おはよう。
意識だけは起きている体にそんな言葉が掛けられた。目を開くとそこには白衣を着た桃髪の男が立っていた。
「おはよう、調子はどうですか?」
落ち着いた声色で声を掛けながら隣の椅子に腰掛け優しく俺を見つめてくる。
「あの……俺はどうしてここに?」
テレビ1つと後は棚くらいしかない真っ白な病室、俺は何らかの事故があったとか?でも、体は痛くないな。
「君はね…記憶障害で入院しているんだよ」
「……記憶障害、」
突然の医者からの発言に驚きが隠せない。俺が……障害者?自分で言うのもどうかと思うが俺はごく普通の人間だと思っていた。なのに如何して。
「まず、君の名前は分かるかな?」
「……えっと、猫宮…いふ、です」
「そうだね、他に覚えていることはあるかな?」
小さい子供に語りかけてくるように横になっている俺に目線を合わせ質問をしてくる。
「えっと、年齢……は28で、大阪出身」
「……とかなら覚えてますけど」
「そう…」
「あの、なんで俺は病院に?」
「……さっきも言ったけど猫宮さんは記憶障害なんだよね、正確に言えば解離性障害っていうんだけど」
「意識や記憶とかが一時的に失われる病気って言ったら分かってくれるかな」
「まぁ、何となくは」
「じゃあお友達さんとかお見舞いにくる?」
「……お友達、おったっけ」
発した瞬間に気づく。これが症状なのだと。友達のことを覚えていないなんて……生涯どう生きていけばいいんだと頭を抱えそうになる。
「猫宮さんなら必ずいるから、大丈夫」
優しく微笑む担当医であろう男、病院には似合わない派手な桃髪。会ったことはないはずなのに何故か懐かしいような気持ちに陥った。
__抱きしめて欲しい。
「…抱きしめて欲しい」
蚊の鳴くような声でそう口から出た言葉は俺自身驚いた。桃髪の医者は目を見開きながらもまた桃色の瞳を細めた。
「いいですよ」
「ほら、どうぞ?」
「……え、いや、今のは違_」
「…」
「あー、分かった分かったからそんな俯かんで」
わざと過ぎるほどに頭を下げ俯く彼に自然と笑みが零れてくる。
「……ん、」
俺よりも華奢な体に抱きつく。久々に人の温かさを感じた気がする。ふわふわとした桃色の髪の毛が耳に当たって少し擽ったいが、何故か安心するような心地良さが俺を包んだ。
そこで気になっていたことに触れる。
「なぁ、名前なんていうん?」
「俺の事?……乾ないこ」
「ふーん、じゃあないこ先生だ」
「俺の方が年下だけどね」
ふふっ、と顔はお互い抱きしめているから見えないものの、ないこ先生__ないこの笑みが零れているのがなんとなく想像出来た。
そこからはたわいのない話をただし続けた。相槌を打ちながら話を聞いてくれ、または興味を引くような話をする彼が俺にはとても魅力的に見えた。
「……じゃ、俺は一旦資料作成とかしてくるから」
「また抱きしめて欲しくなったら呼んでね」
「誰がそんなことで呼ぶか」
んはは、と笑いひらひらと手を振りながらドアを閉められた。やはり静かな病室に1人になると心に穴が空いたような感覚になる。
……別に俺は体に以上はないわけだし、部屋の中を漁ってみるか、と大して何も無い部屋を見始めた。
と言っても棚くらいしかないから上から順に開いてみる。すると4番目を引いてみると隅にノートらしき何かがあった。
名前も何について記されているかの表記もない桃色のノート。ぱらぱらと捲ってみるとそこには誰かの思いが綴られていた。
“朝起きると桃髪の医者がいた。名前は乾ないこと言うらしい。ないこと居ると居心地が良くて、笑いかけてくると見とれてしまいそうになった。”
……見た瞬間に分かった、この人物はないこに好意を抱いているのだと。
次々にページを捲ってみる。
“ないこを抱きしめると、びっくりするくらい顔を紅くして照れていた。ほんまにかわいい。俺から見ると少し身長差があるから、笑いかけてくると耳にあたって擽ったい。”
「……ッ」
これ、俺の思ったことと同じだ。こんなに思考が同じ人物なんているのか、そもそも、如何して今は俺の使っている部屋に置かれていたのか。
頭の回転を早くしてある1つの可能性が頭に過ぎる。
「まさか……な」
頬が紅潮しているのを感じ窓を開け風に当たる。空を見ると辺りは薄暗くなっていた。
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資料を作成するために猫宮さん__まろの部屋を後にした。彼のカルテを書き込むためだ。
異例中の異例な彼はただの解離性障害ではない。普通存在しない…変わった症状がある。それは、一日の出来事を忘れてしまうということ。
つまり、今日誰かと出会っても次の日になればその人の事を忘れて初めて会ったという感覚に陥ってしまう。
「今日も記憶は戻らなかった……っと、」
さて、どうしたものか。俺と恋仲だったことですら忘れてしまった彼。今更何をしたって変わらない可能性が高いが毎度不可解に思うことがある。
記憶を失い続けるにも関わらず、毎日のように抱きしめてくることだ。
初めて抱きしめ合ったことが余程印象的だったのか、はたまた意識の奥底に残り続けているのか。
「考えても分かんねぇなぁ」
今はまだ様子見をするしかないのか__。
資料作成を進ませ時計を見るとかなり遅い時間になっていた。
「消灯時間だな、行かなきゃ」
長い廊下を歩き目的の部屋の前につく。
コンコン
「猫宮さん、中入りますね」
なるべく静かにドアを開けた__。
「……ッ、!?」
目の前にはまろが突っ立っていた。距離は数cmにも満たないほどに。
「どうしたの__」
続きを言おうとしたが形の良い薄いピンク色のそれが自身の口に重なった。
ちゅ、と優しいソフトなキス。
何が起こったのか分からなくなり時が止まってしまいそうになったが彼の一言で硬直した体が解けられた。
「ないこ、……好き」
「え、……は、なんで」
思わず声が震える。ずっと聞きたくて仕方がなかったまろからの『好き』という言葉。まろに言われたのはいつぶりだろう。
「…なんでないこの事忘れてたんやろう、……大好きやのに」
照れながらもしっかりと想いを伝えてくれるところがまろは何も変わっていないと実感させられる。
「……俺もずっと大好き、」
「んふ、かわええな」
愛おしそうに目を細め頭を撫でてくる。つー、と頬に手が伝ってきた、と思えば両手で包まれてまた、キスをされた。
「……あー、大好き」
「気持ちが止まらんわ、どないしよ」
「知らないよそんなの」
「あ、そういえばないこに見せたいものがあるんよ」
そう言って4番目の棚を引いて何かを出してくる。これは__
「ノート?」
「そう、俺のないこへの愛を語りまくってるノート」
「は?」
「まぁ、見てみぃよ」
まろに促されるままページを捲るとそこには記憶を無くしているにも関わらず発見する度に俺への思いを綴った日記のようなものだった。
「何お前、俺の事好きすぎん?」
読んだ感想はそれだった。
自分のことを書かれているとこんなにも恥ずかしくなってしまうのかと思う、こんなの書いていたなんて知らなかった。
「記憶なくてもずっとないこが好きだなんて……俺らの愛は不滅やな!」
なんて言って笑うまろ。
そして、その言葉の意味を悟ってしまった。
きっと、明日になるとまろはこの記憶さえも忘れてしまうということに。
「……ね、今日の俺らのこと、ここに書いておこうよ」
「今日の俺ら…」
まろもきっと気づいていたのだろう。
「いいよ、たっくさん書いてやろ」
真剣に考えもせず、ただまろのことが好きだよって気持ちを書き連ねた。まろも同じような内容で、やっぱり考えていることは同じなんだね、と笑いあった。
ノートの表紙には『想いノート』だなんて書き加えて。
名残惜しいが、消灯時間はとうに過ぎていてそろそろ寝ないと明日のまろにも俺にも響いてしまいそうだ。
「寝たくないなぁ、寝たら明日の俺はどうなるんやろ」
「さぁ、……あ、」
自身の耳に着けている小さなピアスを取り手に乗っけた。
「まろ、ちょっと耳貸して」
「え?うん」
さらさらとした艶のある青色の髪を耳に掛ける。
「昔ね、まろにピアス付けるために耳に穴開けたことがあったんだよ」
「だから、お守り……っていうか、俺を忘れんじゃねぇーよってことで…」
そう言ってまろの耳に小さなピアスを付けた。
「…ふーん、こんなの付けてたら嫌でも忘れなさそうやな」
耳に付いたピアスに触れ微笑を浮かべるまろを見るともう止まれなくなり、思わず抱きしめる。
「おぉ、ないこ苦しい苦しい」
「ずっと大好きだから……また思い出してね」
「…当たり前やろ」
彼の人肌を、匂いを感じ力が抜けてしまいそうになる。
ベットに横になったまろが寝るまで俺はずっと手を握りしめた。
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今日も何時通りの時間に猫宮さんの部屋に立つ。まだ寝ているのは把握済みだ。軽くドアをノックし音を立てないようにそっと開ける。
気持ちよさそうに寝ている青髪の彼にまた、いつものように声を掛ける。
「おはよう」
「……おはよう」
少しずつ意識に届いてきたようで青い瞳がゆっくりと開きこちらをじっと見つめてくる。
その瞳は、誰だろうと言わんばかりだが。
でも、まろはまた俺の事を思い出してくれると信じているから。
だから。
「おはよう、調子はどうですか?」
初めまして、最愛の人。
コメント
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泣くぞ(( 信用して愛し合ってる感すごいよ〜…、?() もうね、大好き(?) 疲れた心に染み渡ります()
くっ...神作の降臨じゃん... まーた心臓持ってかれたw やっぱもみじちゃんの書く作品落ち着くなー なんだろwこの安心感... とりあえず今回も癒された!! それと部外者が失礼いたしました〜
めーっちゃ感動した…😭 最後のはじめまして、最愛の人で私の涙はもうぼろぼろよ() なんでこんな文章作るの上手いのか🫠 え、あの、本当に私と同い年ですか…? 部外者が失礼しました( * . .)"