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若井 side …
「…家、上がってきなよ///」
帰ろうとした時、腕を掴まれ元貴に言われた言葉だった。驚き、え?と頼りない返事をしてしまう。
「い、いいから…///」
元貴に言われるがままに俺は元貴の家に上がった。部屋は薄暗く、少し懐かしく感じた。元貴の家は、都内のマンションだ。最近来ていなかったためか今の光景に胸が高鳴る。
「ごめん、俺先シャワー浴びてくるから適当に座って待ってて。テレビとか全然見ていいから!」
「あ、うん…」
元貴は着ていた上着を洗濯カゴに入れ、棚からバスタオルと着替えを持ち脱衣所の方へ向かっていった。俺は、ソファの足元に寄りかかり一息ついた。元貴の家はどこか静かで落ち着く。俺はテーブルに置いてあったテレビのリモコンを取り、テレビの電源をつける。テレビをつけると昼のワイドショーが映る。ワイドショーを見ていると、不意に視界の端に映る窓に目が行く。
元貴の家には大きな窓がある。俺は窓の方に体を向け、元貴の家から見る街の景色を見ていた。空は灰色で止む気配のない雨が街を覆う。さっきまでワイドショーの音で掻き消されていた雨の音が妙に頭に響く。
窓から変わることの無い景色を見ていると、ふと元貴のことを考えた。元貴は普段、何を思っているのだろうか。仕事に対しても、涼ちゃんに対しても、俺に対しても。そんなことを考えていると、さっきまで頭の中で響いていた雨の音は消え、頭の中が元貴のことで埋め尽くされた。
俺は元貴のことが好きだ。それもずっと前から。伝えてしまったらもう触れられなくなってしまいそうで、ずっとこの思いは心の奥に閉じ込めていた。もし元貴がこの思いを知ったら俺のこと、どんな風に思うんだろう。気持ち悪いって思うかな。悲しむかな。やはり雨の日は気分が浮かない。考えは悪い方向ばかりに偏っていく。はぁとため息をつき、窓によりかかると部屋の中に足音が響いた。
「先にごめんね。今飲み物用意するから。」
そこにはふわっとしたパジャマを着た元貴がいた。元貴は台所に向かい、飲み物を注いでいるようだ。俺は、元貴の方を見れずにただ外の景色を眺めることしか出来なかった。
「…そんなに外綺麗?笑」
「ぅわっ!!!」
ぼーっと外を眺めていたら、元貴が突然俺の耳元で囁いてきた。俺が驚くと元貴は、へへっと悪そうな笑顔をうかべる。
「ん」
元貴は俺の方に湯気のたったココアを差し出してくる。俺は礼を言い1口飲むと、凍った心が浄化されるように胸が暖かくなる。俺はすぐに1杯飲み干し、テーブルにコップを置く。
「はや」
元貴は両手でココアを持ちながらふふっと笑って見せた。少し暖かいような居心地のいいような空気になる。だが、つけていたワイドショーが有名人の結婚の話題へと切り替わった。すると元貴はすぐに目を逸らし、気まづそうな表情をした。その時、今朝のスタジオでの出来事を思い出した。そうだ。俺はまだ元貴の本音を聞いていない。俺は意を決して元貴に問いかける。
「元貴、今朝の話なんだけど…本当のこと、言って欲しい。」
次回でumbrellaは完結させてもらいます…!ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます🥹
突然ですが、新シリーズの題名のみ公開させてもらいます🫣✨ 新シリーズの題名は
「泳がす貴方と泳ぐ僕」です!
ぜひ楽しみにしていてください!!