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01/2人の関係性
頭上をかすめるように、なにか大きな物が飛び去った気がした。
地面を見ながら歩いていた少女は、ハッとして左右や上下を見渡す。
目の前に金髪で長い髪をなびかせる、ほうきで飛んでいる少女がいた。
金髪の少女の名前は霧雨 魔理沙《キリサメ マリサ》
「はぁ…馬鹿らし。」
再び地面に目を落とし、手の爪をいじりながら考え事をし始めた。
彼女の名は、博麗 霊夢《ハクレイ レイム》
肩を出した形の巫女服は、ここからとても離れた博麗大結界の中にある博麗神社の巫女服だ。
霊夢は博麗神社の巫女であり、感や運を頼りに、なんでも解決してしまう。
考え事に夢中になっている彼女を、後ろから妖怪や妖精たちが急に走って追い抜いていった。
ハッとして顔を上げると、いつの間にか、わいわいがやがやと紅魔館から賑わっている声が聞こえてきた。
紅魔館の門の前では、門番の紅 美鈴《ホン メイリン》が寝ている。
「……………門番さん?これはどういうことかしら?」
霊夢は苛々をあらわにしながらも、御札を取り出して見せびらかす。
「ふぁ…って、霊夢さんじゃないでしゅかぁ…詳しくはぁ…魔理沙さんにぃ…すやぁ…」
門番は赤髪の髪をいじり始め、また寝てしまった。
「で、魔理沙はどこにいるの?」
霊夢は腕を組み、戦闘態勢に入った。
「うわっ!…霊夢さん、落ち着いてください!今日は紅魔館で宴をしようと思ってたんですっ!ま、魔理沙さんは上を突き進んだ先にいます!」
門番は慌てて答えた。霊夢に倒されたくないのだろう。
「…ご苦労。頑張るのよ。」
「はっ、はい!」
門番は目を見開き、元気よく挨拶をした。
(全く、私の頭すれすれをほうきで通ったかと思ったら、探させるなんて)
魔理沙は霊夢のライバルで親友だ。
魔理沙は人間の魔法使いで、火力にこだわった魔法を使える。
そして、さっき霊夢の頭すれすれをほうきで通った張本人だ。
「あ、霊夢!こっちだ!」
霊夢が退屈そうに魔理沙を探すために空を飛んでいると、上から元気のある声が聞こえてきた。
「んぁ…魔理沙?……………あんた……一体どういうつもりなの?」
「………え?急にどうしたんだ?」
魔理沙がビクッと肩を揺らし、霊夢の方をじっと見つめる 。
魔理沙はどういうつもりなのかを聞かれて、驚いていた。
「紅魔館の宴のことよ。分かんない?」
霊夢はお祓い棒と御札を魔理沙にちらつかせる。
「宴…?私は知らないが…」
魔理沙は脇に抱えていた盗んだであろう本をもっとしっかり抱える。
「あら、そうなの?なら申し訳ないことしたわね。」
霊夢は 頭をボリボリと掻き、少し不服そうに謝る。
ふと空を見上げると、綺麗に青空が広がっていて、雲一つない晴天だった。
霊夢は思わずうっとりしてしまう。
空の上では大勢の妖精たちが弾幕ごっこをして遊んでいて、笑い声や悔しがる声などが聞こえてくる。
今日も幻想郷は平和だ。
妖精たちを眺めている間に風が吹き、風が霊夢の顔をくすぐる。
「ああ—」
すると、髪飾りが風に吹かれ、地面に落ちてしまう。
「あ、霊夢、髪飾りが……私が取ってくるよ。」
魔理沙が勢いよく地面へ着地する。
ふわふわとレースが付いたエプロンや黒いスカート、髪が綺麗になびく。
そして、魔理沙は手にほうきを握りまたいだ後、霊夢のところへ飛んでくる。青空と同じ様に、綺麗にニコニコと霊夢と魔理沙は笑っている。
「…それで、紅魔館の宴について私が知っていると発言したのは誰だ?」
本題に戻り、魔理沙が帽子を外して紅魔館を見下ろしている。
2人共真剣な顔をして、ふざけたり笑い合える雰囲気じゃない。
まるで、放課後の廊下のような静けさだった。
すると、魔理沙はほうきから少しズレて、霊夢が乗れるようにした。
「霊夢、乗るか?」
魔理沙は優しく微笑み、霊夢を見上げた。
「えぇ。ありがとう。」
霊夢は魔理沙の隣りに座り、微笑んだ。
しかし、すぐに2人は真剣な顔をし、再び紅魔館を見下ろした。
「……………魔理沙が事を知ってると言ったのは、あそこの門番の美鈴よ。」
霊夢が紅魔館の門番を指差して足をブラブラと揺らす。
「あいつか…。」
魔理沙がほうきから飛び降りたかと思うと、次の瞬間、魔理沙が美鈴に平手打ちをして目を覚まさせていた。
「霊夢は宴に参加しても帰ってもいいぞ!」
魔理沙がこちらを振り返り、元気な声で言った。
「……………酒…?」
霊夢がそう言うと、いきなり霊夢は紅魔館の門を飛び越えて室内へ進んで行った。
02/紅魔館
霊夢が紅魔館の中に入ると、咲夜や妖精メイドがせっせと料理を運んだり、案内をしていた。
「わぁ…いつ見ても豪華で広いお屋敷だわ…」
紅魔館の屋敷を見上げ、ポツリと呟く。
「あら、それはどうも。博麗の巫女さん?」
目の前からヒラヒラとレミリア・スカーレットが舞い降りてくる。
レミリア・スカーレット、それは紅魔館の主であり、紅霧異変の真犯人である。
吸血鬼で、羽や紫の髪、ナイトキャップが特徴である。
「…レミリア。なんで宴なんかを?」
霊夢が優しく聞くと、レミリアは顔を少し歪ませ、ゆっくり地面に足をつく。
「あら、なぜそれを言わないといけないのかしら?貴方に聞き出す権利はないはずよ?」
レミリアはうざったそうな顔をして、メイド長が瞬時に用意した椅子にもたれかかる。
メイド長の名は十六夜咲夜《イザヨイサクヤ》。
瀟洒な従者、そして謎多き人物だ。
青いワンピースにフリルの付いたエプロン、カチューシャ、銀髪で、もみあげにみつあみ、そして肌見放さず持ち歩いている銀製のナイフ。
「お嬢様、後ろに椅子はありませんので、急に倒れかかるのは大変危険です。お控えください。」
咲夜は手のホコリを払うようにパシッパシッと手を払った。
「妖怪が宴なんて開かないでくれる?しかも、こんなに大きい館ときた。」
霊夢が理不尽に咎めると、レミリアわっと泣き出してしまった。
(………は?なんで泣いてんの…?)
霊夢は焦り、うろたえ始めた。
レミリアは自分の部屋へ飛びながら戻ってしまい、紅魔館は静まり返った。
「…はぁ。」
霊夢が無意味にもスカートのホコリを払うと、棒立ちになった。
賑わっていたのに、急に静かになった違和感を抱いたパチュリー・ノーレッジは、急いで大図書館から入口の方まで走ってやってきた。
パチュリー・ノーレッジは、紫の髪に、紫のパジャマ、紫のナイトキャップが特徴だ。
そして、魔法使いである。
「一体…何事…?」
パチュリーが息を切らしながら壁にもたれかかる。
「パチュリー様!走ってはダメです─!」
「あぁもう!次から次へと…!」
霊夢は頭を抱え、紅魔館から出て行った。
「霊夢、早かったじゃないか?」
魔理沙が門の上で本を膝に乗せ、しおりを挟む。
「酒は腹いっぱい呑めたか?」
魔理沙がニカッと笑い、本を閉じる。
「あー…まぁね。」
霊夢の反応に、魔理沙は違和感を抱き、一瞬で真顔になった。
「あー、紅魔館静かになってたし、呑めなかったんだな?…私が奢ってやるよ!」
魔理沙が門から飛び降り、霊夢と腕を組む。
「借りだからな?あとできちんと払えよ!」
「勝手に奢ったくせにそんな勝手なこと言わないで頂戴!」
二人の顔からは笑顔が溢れていた。
夕日に向かって2人はゆっくりと歩いてゆく。
「……………ぐがー…」
…門番はいつまで寝ているんだろうか。瀟洒なメイドに殺され兼ねない…
03/七色の人形使い
翌日、博麗神社と霧雨魔法店に手紙が届いた。
博麗神社では、射命丸文が封筒を手渡してきた。
「これ、霊夢さん宛です!それじゃあ!」
射命丸文が敬礼をし、飛び去って行った。
「ん…?何かしら?……封筒?」
霊夢は混乱しながらも封筒の中から手紙を出し、ペラペラと広げ始める。
「中は手紙みたいね…『今日の正午、うちでお茶会しませんか?アリス・マーガトロイドより』…あら、私なんかが行っていいのかしら?」
ちゃぶ台に手紙をバンッと叩きつける様に置き、身だしなみを整え始めた。
霧雨魔法店では、何者かが窓枠に手紙を挟んでいた。
「…んぁ?手紙か?窓枠に挟まってるじゃないか…。」
魔理沙は起きたばっかりで、目を擦りながら手紙を取る。
「アリスからかぁ…『今日の正午、うちでお茶会しませんか?アリス・マーガトロイドより』……まだ寝たいんだがな…」
手紙を机の上にある本で押さえ、顔を洗いに言った。
今の時刻は午前十時三十分。
まったく、1時間半で間に合うのか?
「やばいやばい…まだ歯磨いたばっかりだ!服を着替えないと…!」
魔理沙は客の接客等で忙しく、まったく自分にあてられなかった。
「まだ神社の掃除が終わってないわ…。あうん!来て!」
霊夢は神社の掃除が終わっていなく、あうんの名前を叫ぶ。
正午ぴったりに、アリスの家へ2人はうとうとしながらやってきた。
アリス・マーガトロイド、人形使いの魔法使いだ。
金髪でフリルのついたカチューシャ、金髪のおかっぱ、青いワンピース、ピンクのリボンが特徴的だ。
「2人共…どうしたの…?なんか…やつれてる…。」
そうだ、霊夢と魔理沙は前日に大酒を呑んだのだ。
2人は酔ってはいるが、元気はいつも通りあんぱん男を超える。
アリスは呆れながら2人をベッドで寝かせることにした。
「ほら2人共、私のベッドで寝なさい。」
上海と蓬莱が部屋を周回していると、アリス以外の生き物が部屋に入ってきたから攻撃を始めた。
「上海!その人達は私の友達よ!今すぐやめなさい!」
アリスが怒鳴ると上海達は落ち着き、すぐに周回し始めた。
「うひょー!愛しのベッドちゃん!」
魔理沙はベッドに飛びついて、すぐに寝てしまった。
「……………ふかふかすぎて寝れないわ。敷き布団に慣れすぎたのかしら。」
霊夢はあまり寝つけなかったが、数分もするとすぐ眠りについた。
「まったく、困った人達ね。」
アリスはソファに寝転がり、文々。《ブンブンマル》新聞を読み始める。
「最近は物騒ねぇ、レミリアさんが号泣してしまうなんて。」
風の噂では「レミリアはカリスマ」と言われている。
アリスは文々。新聞を片付け、魔導書を読み始める。
17時を回ると、やっと2人は目が覚めた。
「うわっ!もう17時じゃないか!アリス、お茶会はどうしたんだ…?」
魔理沙が布団から飛び起き、アリスに尋ねる。
「あら、起きたのね。お茶会は延期よ。招待した人がこんな様子じゃ、ね?」
アリスが紅茶を一口のみ、紫色のマカロンを口に運ぶ。
アリスは椅子から立ち上がり、人形を拭き始める。
「もう17時よ。早く帰りなさい。」
アリスはとてもがっかりしたように言い放った。
「ごめんって…」
霊夢と魔理沙は家に飛んで帰って行った。
「……………まったく、困った人達だわ。」