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ナギサノサナギ
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席替えから一週間。
「……」
伊波ライは、最近あることが気になっていた。
授業中。
先生の話を聞いているとき。
休み時間に友達と笑っているとき。
――誰かの視線を感じる。
(まただ。)
何気なく横を見る。
「っ!」
目が合った瞬間、緋八マナは慌てて前を向いた。
耳まで真っ赤だ。
(……今、俺のこと見てた?)
ライは首をかしげる。
最初は偶然だと思っていた。
けれど、それが一日に何度も続く。
(気のせい……じゃないよな。)
⸻
昼休み。
「ライ!購買行こうぜ!」
友達の一人・高橋がライを誘う。
「お、行く。」
席を立とうとしたその時。
「ライくん。」
「ん?」
「その数学の宿題……終わった?」
マナがおそるおそる声をかけた。
ライは机の上のプリントを見る。
「終わったけど。」
「……。」
マナは少し言いづらそうに視線を泳がせる。
「実は……俺、数学めっちゃ苦手で……。」
「そうなの?」
「この問題、全然分からへん……。」
ライはプリントを受け取り、問題を見る。
「あー、ここは公式じゃなくて、先にこれを変形すると分かりやすいよ。」
そう言いながら、ノートに式を書いていく。
「えっ。」
マナは思わず目を丸くした。
「ライくん、数学得意なん?」
「まあ、割と好き。」
「すご……。」
尊敬の眼差しでライを見る。
ライは少し照れくさそうに笑った。
「放課後時間あるなら、一緒にやる?」
「えっ、いいん!?」
思わず大きな声が出る。
教室中の視線が集まり、マナは慌てて口を押さえた。
「……ご、ごめん。」
ライは小さく笑う。
「もちろん。」
「ありがとう!」
嬉しそうに笑うマナを見て、ライも自然と笑顔になった。
⸻
放課後。
教室には夕日が差し込んでいた。
部活へ向かう生徒たちの声が少しずつ遠ざかり、教室には二人だけが残る。
「ここが分からへんねん。」
マナが指さした問題を見る。
「なるほど。」
ライはノートを引き寄せる。
「まずここをこうして……。」
丁寧に式を書きながら説明していく。
「なんでここマイナスになるん?」
「ここは符号が変わるから。」
「あ、そういうことか!」
「一回自分でやってみて?」
「うん!」
マナは真剣な表情で問題を解いていく。
「……できた!」
「正解。」
ライが笑いながら丸をつける。
「やったー!」
マナは思わずガッツポーズをした。
「ライ先生すごい!」
「先生って。」
ライは思わず吹き出す。
「だってめっちゃ分かりやすかった!」
「それならよかった。」
マナはその笑顔を見て、また胸が高鳴る。
(近くで見ると……やっぱりかっこええな。)
ライはそんな視線に気づき、ふとマナを見る。
また目が合った。
「……。」
「……。」
マナは慌ててノートへ視線を落とす。
(また見てもうた……。)
その様子がなんだか可愛く見えて、ライは少しだけ口元を緩めた。
⸻
帰り道。
「今日はありがとな。」
「いやいや!教えてくれてほんま助かった!」
「また分かんないとこあったら聞いて。」
「うん!」
少し歩いたところで帰る方向が分かれる。
「じゃあまた明日。」
「また明日!」
手を振るライの後ろ姿を、マナは自然と目で追ってしまう。
その姿が見えなくなるまで見送ると、小さくため息をついた。
「……好きやなぁ。」
誰にも聞こえないくらい小さな声だった。
⸻
一方、ライも家へ向かいながら今日のことを思い返していた。
(緋八って、最初は静かなやつかと思ってたけど。)
(話してみると素直だし、表情ころころ変わるな。)
数学を教えている間も、何度も嬉しそうに笑っていた。
そして何より――
(また今日も、何回も目が合った。)
偶然とは思えないくらい、自分を見つめる視線。
それなのに、目が合うとすぐ逸らしてしまう。
(……なんなんだろ。)
不思議と嫌な気持ちはしない。
むしろ、その視線を探してしまう自分がいた。
(なんか……気になる。)
まだ恋とは呼べない、小さな感情。
けれどその気持ちは、少しずつ確かに大きくなり始めていた。
コメント
1件
もう第2話から尊すぎるんだが!!?😭💕✨ マナくんのチラチラ視線がバレバレなのに、目が合うたびに真っ赤になるところが完全に恋する男子でしょ〜!!🥺💗 ライくんの方も「嫌じゃない」どころか気になり始めてるのエモすぎる、、あの数学教えてるシーンの距離感が青春のど真ん中すぎて鼻血出るかと思ったわ!!笑 関西弁のマナくんほんま尊い。語尾の「〜ねん」にめろめろですわ〜🫠💕 次回の二人がどう進展するのか待ちきれん!!