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nt「あー…、やっぱ案の定…って感じだねぇ。」

空の玉座を前にナツメはため息交じりに呟く。俺とシャオロンは二度目だが、グルッペンやトントンなんかはキョロキョロと辺りを見渡し、その雰囲気に圧倒されていた。

gr「む…、ここにゾムはいないのか?」

nt「外ってことはないだろうから、屋敷内を探せばいるはず。まぁ見つけるのは難しいと思うよ。骨が折れる。」

em「コネシマさんやシャオロンさんは普通に会ったのに?」

nt「さっき言っただろう?成功作は自身に興味をもった人間は嫌いだ。コネシマやシャオロンの場合、なんらかの理由があって迷い込んだんでしょ。だから成功作は君たちの前に姿を現した。そういうことさ。彼は君たちを見ていた」

そう言ってナツメは自身の目を指で示す。つまり

gr「ゾムとやらには全てお見通しと言うのか?」

nt「そうだね、キモいものだ。あいつは僕たちを監視している。強いくせに、自分を知られるのを恐れているんだ。」

kn「……」

sho「…『キモい』以外にも言い方あるんちゃうか」

nt「…!そうだね、少し言葉遣いが悪かったみたい。気を付けるよ。そうだな、『少し気分が悪いね』とでも言っておこう」

少し、今のはカチンときた。偶然であろうとも命の恩人だ。侮辱されるのは否めない話。どうもこいつはいけ好かないやつだと心底思う

nt「ここにいないということは…書物庫か自室か…まぁ大体その辺りだろう。安心して、僕が案内するよ。安全な道を教えてあげる。」

そう告げるとナツメはまたもや歩き出す。その時、ふと椅子に刻まれた傷が目に映った。

kn「なんやこれ…『正』…?」

em「おや、何かの数でしょうか…よく見ると物凄い数ついてますよ…」

ヒョコッと顔を覗かせてその傷を見るエーミール。ひっかいたようなその傷は、もはやなにかの模様に見える程の数が刻まれていた。

nt「?なにしてるのー?行っちゃうよ」

gr「すまない。今行くぞ」

sho「はぁ。…後でまた見に来るか…」

なかなかついてこないこちらを不思議に思ったのかナツメが声をかけてきた。俺達は一旦その数を無視し、ナツメの後を追った。


em「……………やはり、ここ何処かで………」













あれはいつのことだっただろうか。

この館に来てから数日?数週間?それとも数十年?分からない…けれどあの人は俺のぼんやりとした生活に花を飾ってくれたかのように彩りを与えてくれた。

確か名前は─────




zm「……………」

いつも通り黙々と読書を進める。物語や哲学、宗教の小難しい本に並べられた命を語る言葉たちはそろそろ見飽きてくるものがあった。人間の感性、価値観、善悪、裏表、何もかもがバカバカしくていい加減だ。『俺は』人間を目の当たりにしたことはないが、この脳ミソは確実に人という存在がどんなものか理解していた。お婆ちゃんや、お母さんは、人間を見たことがあるのだろうか。見て、触れて、喋ったことがあるのだろうか。ぼんやりと霞んで見えるこの脳ミソの本当の持ち主の記憶。そこに映るのは確かに人間だった。

この脳ミソは随分と便利だ。博士が言っていた知識の宝庫というものも、あながち間違ってはいない。そして、何より俺がここ(館)から出なくたってお婆ちゃんや、お母さんの記憶を頼りに思い浮かばせることが出来る。まぁ、たまにどこからが自分の記憶か分からなくなるが。

zm(このままじゃ、引きこもりになっちゃうやん…)

そう今更な考えが頭をよぎる。見た目こそ20くらいの青年だが、多分もう100年は引き籠もってるだろう。そう思うと時の流れは早いものだ。

そんな思いに浸っていたその時、

コンコンッ

zm「ヒュッ…(息を呑む音)」

初めて聞いた扉を叩く音に思わず目を見開く。俺はそのまま硬直してしまった

?「も、もしもし!…誰かいませんか!あの、その、迷子になってしまって…」

な、…な、な、な、な、何が起きた…?この館に誰か来たのか…?え…?そんな事あるのか?

思わず反射で逃げたそうとする。しかし、飛び起きる勢いをつけすぎたせいか

ドサドサドサァァッ

雪崩の如く崩れだす本の山に思わず「しまったぁぁぁ!!!」なんて悲痛の叫びが口から漏れる。

?「!誰かいるんですね!!あの、町への帰り道を教えてもらってもいいでしょうか?」

少しの嬉しさからか少し大きい声量で2度目の呼びかけ。終わった。さっきまで人間を小馬鹿にしてはいたものの、俺は今まで外に出たことがなかったため、コミュニケーションというものが死ぬほど下手くそだった。しかし、ここでこの扉の先にいる人物を放っておいたらどうなる?さっきの発言には自身が迷子であることを言っていたが、そのうちそこらの熊にでも食べられやしないか。

zm「…」ゴクリ…

覚悟を決めて椅子から腰を持ち上げる。ここから立つのはいつぶりだろうか。そのせいで軽く足下がふらつくも、ゆっくりと扉に手をかける。ドクドクドクと激しい心拍を抑え、そっと扉を開いた。

ギィッ……ギギギギッ…

?「!!」

zm「……なんや…」

少しだけ開けたドアの隙間から顔を覗かせる。そこにいたのは齢5歳程度の少年だった。ミルク多めのカフェラテのような色をした髪に、銀色の瞳。手には蝶の標本が固く握り締められていた。しかし、服や顔などは全体的に薄汚れており、いかにも森の中を彷徨っていたと主張するような格好だ。

em「あっ、あの!僕エーミールって言います!昨日からずっと森の中で迷子になっちゃってて…その…お家への帰り方を教えてください!」

zm「は…?昨日からって…お前腹は!?」

em「え…あ…その……えっと…」

キュルキュルキュル…

可愛らしい腹の音と共にエーミールの顔が真っ赤になる。あぁ、こいつ、やっぱり腹減ってるのか…

zm「……………………」

em「…あ…その…大丈夫です!これくらい……」

zm「はぁ…ガキがいっちょ前に我慢すんなよ…。」

em「え、えっと…」

zm「帰るのは後だ。とりあえず、俺お手製のショートケーキなんてどうや?」

em「…!!!ショートケーキ!」

なんとか平然を装ってショートケーキを提案すれば、エーミールは顔を輝かせる。5歳らしい反応だなと思いつつその子供が入れるために扉を更に押し、エーミールを中に入れた

em「はえ、お兄さんのお家大きいんですね!」

zm「まぁな。さ、とりあえず手でも握ってやるから、ついて来いよ」

em「うん!」


















泡立てた生クリームのうえにちょこんと可愛らしいイチゴを添え、エーミールの前に置いてやれば、彼は表情を一気に緩めるも、ハッと我に返ったと思えばピシッと姿勢を正した

zm「別に…そこまで気を張らなくてもええんやで?」

em「いえ……こうしないと怒られるんです…」

zm「そうか……」

そう言いながらフォークを置いてやれば、少々ぎこちない手つきでフォークを手に取るエーミール。こんなに幼いのにマナーを学んでるのか…?

そんな事を考えていれば、エーミールはおやつを前に待てと指示を出されている子犬のような瞳でこちらを見つめてきたため、軽く微笑み返せばそれをOKと受け取ったのか、すぐさまケーキを食べ始めた。その姿がなんとも言えない愛嬌があり、クスクスと笑いが零れる。それと同時に、あれ、俺案外人と接するの好きかもしれないなんて妄想をしていれば、エーミールが不思議そうにこちらを見てきたため、「何でもない」と笑った。












em「ごちそうさまでした!」

お手々を合わせて元気よくそうエーミールは言う。俺はエーミールがケーキを完食したことを確認して皿を片付けようとした。そのとき

zm「…!」

ふとエーミールの頰にある痣を見つけた。泥で汚れていたため目立たなかったが、とても痛々しい青痣がついていた

zm「それ、どうしたん?」

em「あっ、…その…」

驚いたように目を見開くエーミールは自身の青痣を隠すように傷を手で覆う。俺は、その時、得体の知れないゾワゾワした感覚に捕らわれた。すると

スゥゥ……

自身でも気づかないうちに目が赤く光っていた。そこには


em「嫌だ!お父さんやめっ…!!痛っ」

「うるさい!お前が生まれてきたからお前の母さんは死んだんだ!お前さえいなけりゃ…」

…あれは……バッドだろうか。大柄の男がバッドを振り上げ、ボロボロの少年を殴りつける。

em「痛い、痛いっ…父さ……」

zm「……」

これは…なんだろう…

次に瞬きをすると、そこはこの辺り周辺の森の映像だった。先程の男が少年を引きずって山の奥へ奥へと進んでいく。

「ここにいろ。後で来るからここから動くな」

em「父さん…?」

「返事は?」

em「はっ、はい…」

足早に先程通っていった道を降りていく男。薄暗くなってきた山に取り残された少年はキュッと固く口を閉ざしていた

スゥゥ……

フッと現実世界へと戻る、そこにはエーミールが気まずそうにしていた。その姿が一瞬で先程の殴られていた少年と重なる。

zm「……………」

今のは…もしや人の記憶を辿っていたのか…?エーミールの記憶。だとすると彼は迷子なんかじゃない…

zm「捨てられた…のか…?」

俺の一言でエーミールは目を見開いて硬直した。エーミールの顔が徐々に青く、血の気の引いていく様子がやけにこちらにも悲しさが伝わってきていた。

zm「…」

em「…なんで……それを…」

絞り出したようなか細い声に俺もほんの少し衝撃的な感覚があった。こんな能力があったなんて知らなかったのだ。

em「はは…そうですよ……帰る場所なんて…僕には…」

ポロポロと零れる涙にかける言葉も見つからない。その時、俺はふと思い当たる節があることに気が付いた。これは多分…母さんやお婆ちゃんの記憶…。黒の軍服を着た金髪の男…










??「ほう。お前がアテネの孫か……大蛇の末裔…興味深い。」

そう呟くは軍の総統。フューラ。俺のお婆ちゃん…アテネというらしい人がお世話になっていたのだろうか。それともただの知り合いだったのだろうか。分からないがどうでもいい。

zm「今はその話はええ…。この子を引き取ってもらえないか?」

??「その銀色の瞳の子をか?」

zm「あぁ。」

フューラの威厳のある見た目はこちらも怖じ気づいてしまうほど気迫がある

フューラはじっくりとエーミールの顔を見たとき、少し嬉しそうにこう言った

??「ふむ……俺の息子、グルッペンと年も近いだろう。あいつは立場から友達が出来にくいヤツだからな。仲良くしてやってくれるなら、引き取ってやろう」

em「……」

無言で俺の手を握るエーミール

zm「だって。エーミール。仲良く出来るか?」

em「……サビア・フューラ様の…息子…グルッペン・フューラ様…と?」

??「ははは、グルッペンだけでいい。友達をフューラなんてワザワザ苗字で呼ぶ必要もあるまい」

em「出来る……!お話してみたい!」

??「ほほう…、随分と可愛らしい子だが、うちの子は少々戦争好きだ。戦車とか、銃とか、色々叩き込まれるぞ?」

em「うん!好きだから…僕も…そう言うの…!」

??「気に入った!!この子を引き取ろう。ゾム……だったかな?また近々遊びに来てくれ!今度はグルッペンを紹介してやろう」

そう言って笑うサビア・フューラの薬指に光ったエメラルドの宝石がついた指輪。何所かで見たことがあるが、俺が知ってはいけないような気がして考えることを止めた。しかし、目の奥に映るよりそった二人の影は一向に頭を離れなかった











過去編まだ続きます…



やばば…もうエンドは決まってるけどこれは長くなるぞぉぉぉ…

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