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 次の日。
翔馬によって体の隅々まで満たされたからか、ぐっすり眠れて寝起きもよかった。夜中遅くに帰宅したらしい夫のことも、すっかり忘れていた。
いつものようにお弁当を作り朝ごはんの用意をして、家族が出かけてから自分の準備をする。
 ___そうだ…ピアス、したいな
 洗面所で顔を洗って、鏡を見てふとそう思った。昨日、翔馬に会ってから考えていた、もっと綺麗になりたいという願望。自分でピアッサーで穴を開ける人もいるらしいけど、そんな勇気はない。
 
 
 「おはようございます!駒井っち!」
 駐車場から歩いていたら、朝からはつらつとした由香理に声をかけられた。
 「おはよう、あ、そうだ、篠宮さんに教えてほしいことがあるんだけど…」
 「え?なぁに?ってか、由香理でいいよ、私の方がだいぶ年下なんだし」
 「あ、えっと、由香理さん?」
 「由香理、でいいから。で、なに?」
 「あの…」
 なんとなく他の人に聞かれたくなくて、小声で訊いてみる。
 「ピアスって、どうやったらいいの?」
 「ほぇ?あー、駒井っち、ピアスしてないね。うーんとね、オススメは皮膚科とかでピアス開けてくれる病院でやるのがいいと思うよ。万が一、化膿したりしたら大変だから。あ、ちょっと待って、私がやった病院ならおしえてあげる」
 ゴソゴソと財布を出して、中から診察券を見せてくれた。
 「私のかかりつけ医、内科だけどピアスも開けてくれるよ、電話して聞いてみて。保険が効かないからちょっとお金かかるけどね」
 「ありがとう、写真撮ってもいい?番号のとこ」
 「うん…ていうか、どうしたの?最近オシャレになってきたし、なんていうかイキイキしてきた?いいことあった?」
 「え、あ、いいことがないからオシャレでもしてみようかな?って」
 「いいと思うよ、ピアスをするとさ、人生変わるって言うでしょ?穴を開けることで行き止まりを打開するみたいなことかもね。今の駒井っち、いいよ、頑張って!」
 それだけ言うと、さっさと行ってしまった。
 ___人生が変わるかぁ…
 そこまでは思わないけど、何もなかった今までよりは毎日が楽しくなってきた。
 《おはよう。寝坊しなかった?今日はお肌がツヤツヤになったんじゃない?》
 〈おはようございます。とてもよく眠れました。お肌も調子いいかも?〉
 《きっとこれから、もっと綺麗になるよ、ミハルは》
 〈だとうれしいです〉
 ___もっと綺麗になりたい
 翔馬に飽きられないように、いい女になりたいと思った。