頑張ってはいるのに大規模な犯罪になると割とすぐダウンしてしまう。撃ち合いは得意なのに事故でダウンしてそこに辿り着けないことがある。
不甲斐ない自分に嫌気がさしてくる頃、昔の家族だった医院長が救助にやってくる。
いつも救助しながら「頑張ったね。次の現場でも頑張れるようにすぐ治療するからね」とメンケアまでしてくれる。
救急隊になる前のことを知っているせいか、照れ臭さがあってなかなかお礼も言えなかったけど小さい声で伝えてみた。
「いつも助けてくれてありがとう」
「当たり前だろ。家族と離れて寂しくても頑張っているの、見ているからな」
「それは医院長もでしょ?」
医院長の一番近くの救急隊にいた、昔の家族たちが闇堕ちしたことは聞いていた。こちら側にいるのは私と医院長とメカニックになった子ぐらいだ。
「まぁ、この街ではいろんなことができるからな。やりたいことがあったんだろ」
少し寂しそうな、でも割り切ったような声でそんなことを言う。
「それに公務員仲間がいるしな」
医院長はそんなことを言いながら優しく頭を撫でてくれた。
「ほら、今の仲間が待っているよ」
指を指された方を見ると、いつも一緒に行動している警官たちがいた。
「また遊ぼうね」
医院長にそう言って、私は仲間の方に駆け出した。
「救急隊で一番偉い医院長が来たよー」
救助要請で来た救急隊員は、ふざけた仮面をつけたアイツだった。
「これ何?事件?」
「いやバイクで事故った」
「だっ」
「お前、今『ダサい』って言おうとしたやろ!」
「そんなことないですぅ」
軽口を叩きながらも治療をしてくれる。
「はぁ。オレかっこ悪っ」
正直、犯罪の規模が大きくなりギャングが勢いを増してきた今、現場対応に慣れていない警官を抱えているのは、結構しんどい。
どうしたらいいか考え事をしながらバイクを運転していたら普通に事故った。
その上、救助に来たのがアイツだった。
「そんなことないよ。警察で頑張ってんでしょ?頼りにしているよ」
そう言うアイツも医院長として頑張っているのを知っている。
ついでに気になっていたことを聞いてみる。
「闇落ちせんの?」
「しないよ。医院長だからな」
即答された。色々あったらしいことは風の噂で聞いているけど、割り切ったのか?
「終わったよ。帰りの足ある?」
「事故ったから壊れているかもしれん」
乗ってきたバイクは多少故障していた程度だが、なんとなく楽をしたかったので救急隊のヘリに乗り込む。
「あかんわ。乗せて」
「了解」
「バイク壊れてたわぁ」
「お前、楽したいだけだろ」
見抜かれていた。
ある日の救急隊と警察の会議で堂々と発言しているアイツを見た。
アイツは大勢の前で代表して意見を言うようなタイプではない。付き合いも長いからすごく頑張って喋っているのが分かった。
案の定、会議後にぺしょぺしょになって他の医院長たちに労われているのを見かけた。
最近アイツは最前線で銃弾を掻い潜って救助しているから警察内で「最前線を走る衛生兵」やら「空から舞い降りた天使」とまで言われている。肩書は言い過ぎだとは思うがアイツならそれぐらいできるだろう。
でもきっと他の警察官たちはこんなにぺしょることもあるのを知らないだろう。
「頑張ったな」
そう声だけかけて、オレは次の現場へと向かった。
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