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「救急隊で一番偉い医院長が来たよー」
仲間内でふざけ合ってダウンしたので、闇医者ではなく救急隊を呼んだ。
で、やったきたのは顔見知りの黄色い医院長だった。
「で、何やってたの?犯罪に関係ないよね?」
「遊んでいただけっすよ」
「ふぅん。まぁ呼ばれれば黒でも白でも治療しますけども」
この医院長はギャングであっても公平に接して治療をしてくれる。
ついでに気になった事を聞いてみた。
「ちなみに犯罪で怪我した場合は?」
「その現場では無理だね。まぁ、脅されたら治療しないといけないからなぁ。通報義務もないしなぁ」
棒読みで返事された。
そういえば風の噂でこの医院長は治療だけではなくヘリの操縦がうまく、ロードキルや銃撃も避けたことがあると聞いた。
ただの医者にしておくのはもったいなくないか?
「医院長さ、うちのギャングに来ない?闇医者枠空いてるんだよね」
「行かないよ。犯罪に関わるつもりもないから。はい。終わり。お大事にね」
即答でばっさりと断られ、治療が終わるとあっさり去って行った。
彼にとって患者の素性は関係なくても、彼自身が黒にならない線引きがあるらしい。
顔見知りの医院長を人質にしてかなりの無茶をさせた。
報酬として奴の体にブラックマネーを突っ込んだ。
ギャンギャン騒いでいたけど解放したし大丈夫だろ。
「気づいた時がおもしれーな」
「いや返しに来ると思うぜ?」
医院長と古い付き合いだと言う仲間が言う。
「一千万だぞ?白にはすぐ稼げない額だぞ?」
そう言った翌日。事故でダウンして出した救助要請でやってきたのは件の医院長だった。
「これ返すわ」
治療の合間に渡したブラックマネーをダウンして動かない体に無理やり突っ込まれた。
「いらねーの?」
「いらないし貰っても困る。俺は医院長だからな」
治療が終わり、それだけ言うとヘリに乗ってさっさと帰って行った。
アジトに戻り、先ほどの出来事を仲間に話す。
「やっぱ返してきたか」
「お前の言った通りだわ」
「あいつ、決めた事曲げないし、相棒と約束しているらしいからな」
「ふーん」
こんな白も黒も曖昧な街で、そんな医者がいても、まぁいいか。
面白いやつには変わりないからまた遊んでやろうかな。
とある犯罪現場で救急隊員がその場で警察官を起こしているのを見つけた。
その治療を終え現場に復帰した警察官のせいで仲間はダウンして捕まってしまった。
これが繰り返されるようなら、こちらは救急隊を撃たざるを得ない。現にギャング内でその方針を取るか検討されている。
俺だって元救急隊員だ。かつての仲間は撃ちたくない。仲間も犯罪以外では救急隊の世話になっている。
一旦、あいつを呼び出すか。
「お前、救急隊の方針はどうなってんだ」
「方針とは?」
「犯罪現場への現場介入だよ」
ひと通りこちら側がされたこと、これから起こりえることを説明する。
俺もあいつも立場がどうあれ、ダウンした後の空を見上げる辛さを知っている。
あいつの言い分もあるだろうが、ひと通りこちらの言いたいことは聞いてくれた。
「正直、ギャング側の意見が聞けて良かったよ。全て飲むことはできないかもしれないけど、警察とすり合わせしておくよ」
「任せた」
医院長とはこういうものだと理解して欲しくて突き放してみた。
翌日、あいつから連絡が来た。
概ねこちらの言いたいことは伝わったようだ。
「俺、頑張ったんだからな!」
あいつの性格からすると本当に頑張ったのだろう。
もともと、闇堕ちするなら一緒にと言っていたはずなのに、医院長として救急隊に残ることを選んだのはあいつ自身だ。
まぁ、せいぜいがんばれ。