テラーノベル
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「ヒーローなあなたとよわい私」
ガシャン!
私が癇癪で暴れて、大きく音を出して割れた食器を、どこか他人ごとのように見つめる。
だが直ぐにその他人事のような夢現な思考も取り払われる。
どうしよう!またやってしまった!なんで私はこうも……、ああ!
どうにか、わぁっと声を出して発狂したい気持ちを抑えた。そして、あなたがこっちを見ていることに気づいた。
目を見開いて、音にびっくりした様子だった。が、それも直ぐに目を細め、いつものどこか薄ら寒い笑みに変わる。
あなたは、勝手に癇癪を起こして、皿を割った私を叱ろうともしなかった。笑顔の無表情のままで、ほうきをどこかから取り出して、黙って、私のせいで割れてしまった食器を片付けていた。
私も片付けるよ、手伝うよ。そう、手を伸ばして言おうとして…、やめた。
私がやろうとしたところで足でまといになるだけ、それに、「かいじゅう」に成り果ててしまった私の手では、とてもほうきすら持てないだろう。私は、あなたの方へ伸ばしかけた手を戻し、開けかけた口を、ギュッと固く結んだ。
でも、それでも
私のヒーローであるあなたに、私がいるせいで苦労をかけたくなかった。でも、それを言う勇気が出なくって。しばらくの間、お皿を片付けてるあなたの姿を見つめていた。
片付け終えたあなたが、
今日はもう、お風呂に入って寝なさい。
そう、いつも通りの優しい声で言った。
お風呂は、嫌いだ。色んなことを考えちゃうから。めんどくさいから。
でも、また癇癪を起こすのも申し訳なくって、あなたと顔を合わせてるのが気まづくて、
お皿を壊したくせに、謝りも、ありがとうも言わないで、急ぎ早にお風呂に向かった。
お風呂は嫌いだけど、お風呂のお湯を入れるのは好きだ。
だって、唯一私があなたの役にたてることだから。
ボタンくらいしか押せない、無能な子の私には、それくらいしか出来ないから。
ぼーっとしてれば、暑くなってきた。頭も既に洗ったし、体も洗った。後は、
湯船に浸かり、10秒数える。
いーち、にーぃ、さぁーん、しーぃ、ごーぉ、ろぉーく、なぁーな、はぁーち、きゅーぅ、じゅう。
心の中で数え終えてから、湯船を出て、脱衣所へ行く。
何となく、濡れて水がしたたり、長い髪が背中やお腹にへばりつく感覚に苛立ちと気持ち悪さを覚えながら、髪をタオルで拭く。
これくらいなら、あなたの手を借りずともできる!頑張って水分をとろうと、薄いタオルで拭き取る。案の定、タオルはすぐにびしょびしょになってしまい、2枚目をとる。
拭き取れてきたなぁと何となく思ったら、脱衣所を出て、電話をしていたあなたを呼びに行く。
そして、ドライヤーで髪を乾かしてもらう。私の手では、これまたドライヤーなんてもの持てなくて、複雑な、よく分からない機械など扱えないのでした。
そして、髪が乾けば寝床へ行く。
1人毛布を被る。キングベッド、隣は空いている。
何となく広く感じるベッドで、横になり、目を瞑る。
しばらく経って、
ガチャ、という玄関のドアが開く音が聞こえた。
耳はいいから、とても聞こえてしまうから。その音が聞こえてしまった。
ああ、どこへ行くのだろう。
どうせ、今日も焦げ臭い香りをつけて帰ってくる。
どこへ行くんだ、私以外の女の人に会いに行かないで、なんて、私が言う立場ではない。あなたを縛りつけてる、私が言うことじゃない。
布団を被り直して、目をぎゅっと瞑った。
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35
くさもち
175
s
40