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しばらく歩いたところで、悠真が足を止めた。
「妹ちゃん、ちょっとこっち」
軒先のある小さな商店の前に、ふたりで駆け込む。
雨音が近くから遠くへ変わり、わずかな静けさが訪れた。
「すぐ止むかな」
悠真が空を見上げる横顔に、咲は思わず見入ってしまう。
水滴が髪に落ちて、頬を伝う。
その仕草ひとつが大人びていて、胸の奥がざわめいた。
「……こうして雨宿りなんて、久しぶりです」
言葉にすると、悠真は小さく笑った。
「だな。子どもの頃はよくあった気がするけど」
懐かしそうな声に、咲の鼓動はますます早くなる。