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「これが……、簡単にだが、全ての真実だ。恐らくあの人間共が話すタイミングを伺っている訳というのは……今の現段階で話したところで、そう簡単には真実を受け止められる程の精神力が整っていない事を悟った故の判断だったのかもしれない、そして何は話すつもりでいたんだろうが……」
「……………………」
「まさか、可能が連れ込まれた裏の理由の真相にそんな事が隠されてたなんて、本当の家族を構築するって言ってたけど、その家族に認定される対象って……」
「ああ、他でもない……俺達って訳さ」バンバンはそう言って、レイラに近寄った。家族に包まれる事も、愛情を注がれる事の暖かさと、幸せを知る間もなく彼女は置き去りに…あらゆる大人から見放された。そんな現状を知り、バンバン達は愛情を知らないまま、ここまで育ったレイラを今度は自分達が彼女に幸せを与えたい、そう思った。
しかし、この事情が判明した事で、ウスマン・アダム率いる研究者チーム組織が現在目論んでいる実験計画の真相というのは……この彼女の秘密が深く関係していそうだ。
仮に完全にバンバン達同様の性質に生まれ変わる事に成功したら老いる事も死ぬ事もない、端的に言うなら、不老不死同然の体となる。
そうなる事によって、永遠の時間を過ごせるし、何より永久的な幸せを受ける事が出来るようになる。
しかし、その反面‥‥ジバニウムによる激痛との共存を強いられる事になるのは、もはや言うまでもない。
「冷酷な人間もいるものだな、多種多様な特性があるのが人間の特徴でもあるが、その特性によっては悪い人間や残酷な人間までもが生じてしまうという何とも哀れな生き物だ…これだから私は人間というものを嫌悪してるんだ」シリンジョンはそう言った。
「ああ、正直びっくりだよ、彼女が此処に永久的に幽閉される事になった事の経緯がこんなにも残酷なものだったなんて」バンバンはそう言ってそっとレイラの頭を撫でた。そうしていると、ビターギグルも近寄ってきて、彼も共にレイラをギュッと抱擁した後頭を撫でた。「これで取り敢えず、話は終わった、私は帰らせてもらうよ」
「ああ、助かったよドクター。彼女の治療やそれに彼女の事に関しての機密情報まで教えてくれて色々急に頼み込んで申し訳なかった、またドクターに頼み事を依頼するかもしれないが、そこは許してくれ」
「まあ、それくらい良いさ、戻るとは言ったがすぐ側の階に行くだけだがな」
「?、ドクターの領域は地下層に在る筈だよね…?なのに何でだい‥?」
「あの組織の人間達から、その人間の子供の専門医になって欲しいと言われてな、だからか素直に応じて此方に彼女の情報を隅々まで提供したのだろう、あの思考も何もかも馬鹿げているトチ狂った人間が、私に歩み寄ってきた時は思わず、凍りついたものだ‥人間とはあまり関わりを交わせるのは御免だ、断ろうとしたがしつこく言い寄ってこられたから、まあ仕方なくだ」
と相変わらず人間に対する愚痴や意者らしからぬ口の悪さは健在ではあるが、この近くの範囲に留まってくれるようだ。
「まあ、この棟にも、治療や手術…医者を務めるには最適な場所だ、元居た場所も悪く無いが、此処も居心地は然程悪くもない、まあちょっと道具を幾つか運んでくるのはあるが、此処はあの場所と違って作業するにも相性が良い、それに態々下に降りていって駆けつけるのも面倒だ、それなら此処から完全には離れずに留まるのが得策だ」
「このエリアに止まってくれるのは此方としても有り難いが、けどドクター…あんたは確か地下に作った大きなあの【街】を統治する市長の役割のあるんじゃなかったか?放置してるなんて、市長としては駄目なんじゃない?」バンバンはそう言った。
街…、そう前回シリンジョンが初登場した際に解説を挟んだが、その時は軽い説明のみで、街の事は一切話していなかったが、シリンジョンは外科医という役割を持ちながら、地下に作られた街『シティンジョン』と言って、シリンジョンが市長を務めており統治している街がこの地下に存在するのだ。その街でのルールは……いや、これはまだ明かさないでおこう。
「ああ、あの街は市民が気ままに暮らしていて、私は面倒な問題さえ起こしてくれなければそれで良い、それにあの街に帰ったところで何もする事もない、だから今は君の専門医としても一緒に居よう」
と、シリンジョンは正直口も悪いし、態度も医者とは到底思えない程の接し方であまり良い印象はないように思えたが、実は根に関しては優しいところもあるのか…?。
「そうか、なら安心だ」
「では、私はこの棟の最奥に見えるあの部屋に行こう、何かあったら呼んでもらって構わないが…作業中の際は私の邪魔をしたり、近寄っても話しかけないでくれ、それらの注意事項を守ってくれさえしてくれれば、それで良い」と彼女が人間である為か、やたら距離を取りたがるシリンジョン。
「ああ、分かった。気をつけるよ」
そうしてレイラの悲惨な過去を知り、更にはこれから以降はレイラとビターギグル達は『家族の一員』になるという大きな関係を築いてく事になった為に、正直のところこの場にいるマスコットモンスター、一同は急な事に困惑を隠せずにいる。
と、此処でバンバリーナから、「これからは皆んなファミリーなんでしょ?ならいっそ、その仮の名前も変えて新しい名前にしちゃわない?愛情が込められて名付けられた名前の方がもっと私達だって愛情を持って貴女に接する事が出来るわ」と流石は教師の別名を持つモンスターだ、生徒…いや、子供の思考についての理解力が高い。
まあ、彼女の授業というのは実はかなり、狂気じみた授業なのだが……。
「新しい…名前…?」
「それに良いかもね、今ついてる『レイラ』って名前は、家族を形作る為の役割を担ってるに過ぎない彼女自身が気に入ってる名前とは限らないし、それよりは愛情を持って授かった名前の方が喜ぶだろう」
「でも、どうやって名付けよウ、人間の子供に名付けをするなんてこれまでにない前代未聞の事だし、せっかくなら幸せな意味を込めて付けたいよね」
「え……ほんとにこの名前から…付け直してくれるの…?」
と、レイラはそう言って涙目になってぎゅっとビターギグルらに駆け寄り、その中でもすぐさまにビターギグルに抱きついた。
「ええ、心も込められてない…愛が込められてない名前なんて嫌でしょウ、だから私達が改めて幸せになって欲しいという願いを込めた貴女に相応しいと思えるような名前を考えてつけ直すんです、それにこれからは私やウスマンさん達と、貴女は立派な家族なんですから、貴女は私ファミリー皆んなの子供に成るんですヨ」
「ギグル……うう…」
レイラは涙を溢し、泣きじゃくった。突きつけられた現実と、真相真実は…何とも安易には信じ難く受け入れ難いものだった、シリンジョンから本当の真相を語られる前に、忠告として【子供にとっては残酷で、受け入れ難い真相】である事を聞かされた上で、聞いたが…その真実は、まさに悲しきもので、いや、予想や想像を上回るそれが事実だと、信じれない程に悲惨な過去があったという事を知らされた悲しみ……。
最初は、追い求めてた事なのに、今となっては目を背けこれが虚実であって欲しいと、そっと後悔の気持ちに苛まれた。
シリンジョンから明かされ、告げられた言葉の数々とV H Sテープで見たあの映像の光景がふと頭の中で思い返され、「うう…ぐすっ、うわああああああん、うわあああああん… 」と頭を抱え、大粒の涙を溢し、泣き崩れるレイラ。
「レイラさん……落ち着くまで好きなだけ泣いて良いヨ、こんな状況でジョークを言うなんて似合わないし…だから今はまだ言わないヨ……」ビターギグルは優しくレイラに寄り添ってそっと包み込んだ。
「幸せ……それに子供らしく可愛らしい愛嬌のある名前が好ましいわ」
「それにしても、此処に来て人間の子供の名前の改名をする事になるとは、ドクターも言っていたが、彼女に関わってきた人間の大人は、ろくでもない人間じゃないな、小さき人間をまるで、玩具や要らなくなった道具のように容易く切り捨て、見捨てるとは何とも醜い、私も以前人間から切り捨てられ、奈落の底に落とされ、絶望の淵に立っていた頃を経験した、お前のその心の痛みやショックには全面的に同情する」トードスターはポツリと、レイラを見つめた。
「じゃあ、新たに命名する為の準備をするとしようか、その間は自由に遊んで待っててくれ、じっと待ってたってやる事がなくて暇だろうし」
「うん……ありがとう……」
「じゃあ、名付けの時になるまで遊んでましょうカ」
「うん…!!」
そうして、新たな正式な命名まで彼女はビターギグルと遊んでいる事になり、レイラはお気に入りの存在である彼に無邪気に戯れる。
「よし、じゃあ命名する為に名前を先ずは考えないとね、彼女に名付ける事となる名前は、人間にとってこれから先の永遠なる生涯を共に歩む大切な概念だ、なるべく心と愛情を沢山込めた名前は何よりも好ましいね」
「それを改めて考えてみると、命名というのは案外難しいものだな、それに意味合いとしては幸せ、つまりは幸福や愛情を込めた、それでもって幼い子供の彼女に相応しくなるような愛らしい子供の名前…、人間の大人はどうやって自分の子供の名を決めてるんだ…?」トードスターはそう言いながらも、バンバンらと相談しつつ、彼女に向けて、 大切な名付けをする為に試行錯誤して名前を考える。
と、その作業に取り掛かっている最中に、こんな事をぼやいてた。
「そういえば、すっかり忘れていたが、彼女と我々バンバンファミリーは皆んな一つの『家族』になるんだろう?それなら、彼女にとっての両親に値する存在は其々誰になる」トードスターはふと、そう言った。
「そんな事、そういえば考えた事なかったな、まあ別にそんな事は重要じゃない、誰でも彼女な親になりたいと思う奴にやらせれば良いだけの話だ」
「誰でも親を名乗る資格があるのかと言われたら、そう言う訳にもいかない…けどこれから先は永久に皆んな家族なんだし、いっその事彼女は俺達皆のたった一人の子供……まあ、親に相応しいとすれば、彼女が傍に居て心から信頼できて安心出来る、そんな存在が最適だけど、その条件に当てはまるのは、宮廷道化師が、何よりも最適なんじゃないかな」