◇◇◇◇◇
リオたちは、ひとまず教会に戻っていた。
サントス:「リオ様。だいぶお疲れの様子ですが、何かありましたかな?」
出迎えてくれたサントス司教が、リオの様子を見て心配していた。
リンドウ:「ええ、ちょっとね。
悪いんだけど今日はもう休ませてくれるとありがたいんだけど。」
サントス:「はい、それはもう。準備はしてありますので。カノン、案内してくれるかい?」
思ったより、リオの疲労が激しく戻る途中に意識が朦朧としていた。
リンドウが肩を借りて、もたれるように立っているのがやっとの状態だ。
カノンに案内されて、教会内の一室を準備してくれていたみたい。
その部屋のベッドでリオは早々に深い深い眠りについた……。
◇◇◇◇◇
トーマス:「おい!リオ!今日はお前のために風呂を入れてやったから今から行くぞ!」
トーマスに言われて、リオは無言でそのあとをついていく。
トーマス:「ほれ、服脱げ!」
フランク:「早く脱げよ!」
リオはまたトーマス兄さんたちが良からぬことを考えてると思いつつも、言われた通りに自分で服を脱ぎ始める。
トーマス:「相変わらず、汚ねえ体してんな!」
フランク:「本当に傷だらけだな!」
風呂場に行くと視界が遮られるほどものすごい勢いで湯気が立っている。
これ、絶対に熱湯風呂だ。
嫌だ。入りたくない。
リオは今までも、熱湯風呂、氷風呂は嫌というほど経験済み。
だいぶ耐性はついたが、それでも後が大変なことになることがわかっている。
トーマス:「ほれ、さっさと風呂の前に行け!」
リオ:「……。」
フランク:「早く行けよ!」
リオ:「押さないで。」
トーマス:「おー!お前、振りが上手くなったな!笑!」
フランク:「ほら、ほら。」
リオ:「押さないで!」
トーマス:「押さねえよ!ほら!」
ドボーーーン!
リオ:「熱!あつ!あつい!」
トーマス:「はっはっは!」
フランク:「あっはっは!」
トーマス:「その顔だよ!飽きねえな!」
フランク:「そら!もう一回だ!」
リオ10歳。熱湯風呂の件。
◇◇◇◇◇
トーマス:「おい!リオ!今日は剣術の訓練だ!
混ぜてやるから一緒に来い!」
トーマスに言われて、リオは無言で嫌々あとをついていく。
トーマス:「ほら、そこにある木刀を持て!」
フランク:「早く構えろよ!」
リオはまたトーマス兄さんたちが良からぬことを考えてると思いつつも、言われた通りに木刀を持って構えた。
トーマス:「相変わらず、汚ねえ構えしてんな!」
フランク:「本当に隙だらけだな!」
正面に木刀を持ったトーマスが立っているが、その横にも木刀を持ったフランクが立っている。
これ、絶対に2人がかりだ。
嫌だ。やりたくない。
リオは今までも、2人から立てなくなるまでボコボコにされるのを嫌というほど経験済み。
だいぶ耐性はついたが、それでも後が大変なことになるがわかっている。
トーマス:「ほれ、攻撃してこいよ!」
リオ:「……。」
トーマス:「早く来いよ!」
リオ:「わーーー!」
トーマス:「痛え!お前、やりやがったな!倍返しだ!」
フランク:「ほら、こっちもだ」
ドゴ!バキ!ボキ!
リオ:「痛い!い!うー!」
トーマス:「はっはっは!」
フランク:「あっはっは!」
トーマス:「その顔だよ!全く飽きねえな!」
フランク:「そら!まだまだ行くぜ!」
リオ11歳。理不尽な訓練の件。
◇◇◇◇◇
トーマス:「おい!リオ!街に行ってボア肉の串焼き買ってこい!ほれ!金だ!」
チャリン!
投げ捨てられた硬貨が床に転がった。
トーマス:「それ拾って行ってこい!10本だ!」
フランク:「さっさと行ってこい!」
今日は買い物か。行きたくないな。
実はリオにとっては、これが一番つらい。
リオは屋敷を出て、一人で街まで歩いて行った。
串焼き屋に行くまでの道中、たまに街の子供達に石を投げられる。
街の人たちは表では言わないが、リオの父親の辺境伯に不満を持つ者がほとんどだった。
大人たちも石をぶつける行為を咎めたりしないし、加えて、リオなら大丈夫であることを街の人は知っている。
むしろ、それを見て満足している様子さえある。
リオにとっては、とばっちりであるが……。
この街には誰一人、自分の味方はいない。
それがわかってしまう街の買い物は、リオにとっては兄弟に虐められるより精神的に追い詰められる辛いことだった。
リオ:「おじさん、串焼き10本ください。」
おじさん:「また、お前か……。
ほれ、これ持ってさっさと行け!」
リオ:「うん。お金、ここに置いておきます。」
リオは、帰り道にトボトボといつもの場所に向かった。
そこはあの人と出会った場所。
この街で唯一、普通に接してくれた人。
あー、やっぱり今日もいないや。
もう一度、会いたいなぁ……。
リオの眼には自然と涙が溢れていた。
仕方ないよね。
こんな同じところにいると思う方がおかしいもんね……。
母さん。これから僕はどうすればいいのかな?
リオ12歳。孤独を感じるの件。
◇◇◇◇◇
リンドウ:「リオ!リオ!」
リオは深い眠りから醒めて、ここが教会の一室でベッドの上で眠っていたことを認識した。
リンドウ:「リオ!大丈夫?」
リオ:「ああ。夢だったんだ……。」
リンドウ:「リオ。すごくうなされてたけど、悪い夢でも見たの?」
リオ:「え?あ。ううん。大丈夫。」
リンドウ:「ならいいけど。」
リオ:「うん。ちょっと昔のことを思い出してたみたい。」
忘れてたけど、もう戻りたくないな。
あの頃は何も出来なかったんだな。
リンドウ:「そうなのね……。
今日はいろいろあったからね。
体調はどうなの?」
リオ:「うん。もう大丈夫みたい。」
もうあの頃のように今は孤独じゃない。
今なら僕にも出来ることもあるはずだ。
確かに僕の中にはまだ闇があるのかも知れない。でも、あの頃とは違う……。
リオ:「リンドウ、ありがとう。
カゲロウ、ゼータ、サラン、ありがとう。」
カゲロウ:「ん?急にどうしたんや?」
リンドウ:「いいんじゃない。
リオがそう思ったんなら素直に嬉しいわ。」
カゲロウ:「そうか……。せやな。うん。せやな。」
リンドウもカゲロウも深くは聞かない。
こちらに召喚される前にリオのいきさつはある程度知らされているので、リオの言いたいことがなんとなくわかる気がした……。
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